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【開発秘話】累計約70万個売れている3COINS「ワイヤレスステレオイヤホン」

2021.04.21

■連載/ヒット商品開発秘話

 全国で213店舗展開する雑貨店の3COINSといえば、つい手に取りたくなるデザイン性の高いオリジナル商品を扱うのでおなじみ。生活雑貨をはじめインテリア雑貨、服飾雑貨、モバイルアイテム、キッズアイテムと自社商品を幅広くラインアップ。330円(税込)を中心に、より高価格帯のものも扱っているが、とくに最近売れているものの1つが、1650円(税込)と高価格の『ワイヤレスステレオイヤホン』である。

 2020年3月に発売された『ワイヤレスステレオイヤホン』は、Bluetooth接続して使用する完全独立型。5時間連続で再生でき、耳穴に浅くかぶせ着脱が容易なインナーイヤー型と、耳の奥まで差し込むカナル型の2タイプを揃えた。どちらも本体のほか充電ケース、充電コード(充電ケース充電用)がセットになっており、これまでに累計で約70万個売れている。

インナーイヤー型。カラーバリエーションはホワイトとブラックの2つ

カナル型。カラーバリエーションはインナーイヤー型と同じ

音にさほどこだわりのない人が十分だと感じるレベルに仕上げるのは難しい

『ワイヤレスステレオイヤホン』は完成までに1年ほど時間を要した。誕生の根底には、3COINSを展開するパルで開発を担当した升川拓氏(3COINS本部商品部)のBluetoothへの興味があった。

 Bluetooth関連のアイテムを出したかったことから、まず『Bluetoothイヤホン』(税込1100円)を開発し、2019年1月に発売する。ただ、『Bluetoothイヤホン』は首に掛けるタイプ。「これだとインパクトが弱いので、完全独立型のワイヤレスイヤホンができたら……と思っていました」と升川氏は振り返る。

Bluetoothイヤホン

「いいものを安く提供する」ことを使命にしている3COINSで販売するものなので、開発では価格と品質のバランスを取ることが求められた。協力会社と話し合いを重ね、ある程度の機能を担保しつつコストを削減するための方策を詰めていった。

 機能については、まず最低限の音質を実現することにした。「音質を追い求めるなら有線にした方がいいです。低価格のワイヤレスイヤホンですので、音にさほどこだわりのない人が十分だと感じるレベルに持っていくことにしました」と升野氏。だが、そのレベルに仕上げることは、思いのほか大変なことだった。

パル
3COINS本部商品部 升川拓氏

 音質はドライバー(=スピーカー)のサイズ、コネクターの仕上げ、インピーダンス(交流回路の抵抗)といった要素に左右される面があるが、周波数や音の広がり、解像度などを調整することでつくり込むこともできる。周波数のように数値で表しやすい面もあるので理論に則ってつくり込むことができるわけだが、理論通りにつくっても目指した音質になるとは限らないのが難しいところ。したがって、目指した音質が実現できているかどうかを確認したり好まれる音質なのかどうかを確かめたりするのには、人間の耳で視聴して行なう官能評価が欠かせない。

 評価は3か月間にわたり実施。試作ができるたびに、サンプルとして選んだJ-POPの曲を多くの協力者に聴いてもらい評価してもらった。「『Bluetoothイヤホン』を開発したときよりも圧倒的に、評価に時間がかかりました」と升野氏。音質もさることながら、電波の安定性などといったワイヤレスならではの課題もクリアしなければならなかった。

 音質は評価結果を踏まえて調整を繰り返し、多くの人に好まれる一番いい塩梅のものができた。高音がクリアーに聞こえるようにするにはドライバーにコストがかかることから、低音がやや強調される形になったという。

コスト削減を進めた一方でコストをかけたところ

 コスト削減については、搭載するICチップの価格が下がるタイミングで大量に購入するといった細かい工夫を積み重ねた。

 ただ、コスト削減を徹底する一方で、コストをかけた部分もある。それはデザイン。一部だが新規で起こしたところもあり、新たに金型をつくっている。

 カナル型とインナーイヤー型の2種類を用意することにしたのは、幅広い年齢層のユーザーを獲得するため。とくにインナーイヤー型は若い世代に愛用者が多いことから、若年層のユーザー獲得を意識して投入することにしたものだった。カナル型とインナーイヤー型はデザインが違うだけで内部仕様に違いはない。

店頭に特設コーナーを設置しSNSでクチコミが拡散

 ワイヤレスイヤホンで税込1650円は破格の安さだが、税込330円の商品が全体の8割を占める3COINSではで高価格の部類に入る。目立つ価格帯ということもあり、店頭での見せ方を工夫することにした。

 そこで実施したのが、特設コーナーの設置。イヤホンを中心とした高価格帯のスマホ周辺アイテムを「3COINS DEVICE」とし、まとめて並べるようにした。その様子はSNSでも話題になり、商品に関するクチコミも拡散。入荷してもすぐ完売するといったことも起きるようになった。

 来店客の中には、『ワイヤレスステレオイヤホン』の購入を目的に来る人もいるほど。9割が女性客の3COINSで、男性客が来店して購入するケースもかなり目立つようになった。売れ行きについてはカナル型とインナーイヤー型で目立った差は見られず、どちらも同じぐらい売れているそうだ。

 また3COINSでは、ブランド公式SNSとは別に、全国50名のショップスタッフが公式Instagramを開設し、独自の視点から商品情報やコーディネート例を発信しているが、これも商品を知らしめるのに貢献した。

 ショップスタッフがブランド公式とは別に独自の視点から情報を発信するのは、アパレルではおなじみの手法。3COINSを運営するパルはもともと、アパレルブランドを展開してきたので、ショップスタッフ独自の情報発信は当たり前のことだった。パルには、ショップスタッフ個人のSNSを使ったブランドプロモーションを評価し手当に反映する制度もあるほどである。

ショップスタッフの公式Instagramで公開されているインナーイヤー型『ワイヤレスステレオイヤホン』のコーディネート例

ショップスタッフの公式Instagramで公開されているカナル型『ワイヤレスステレオイヤホン』のコーディネート例

 カナル型に関しては、姉妹関係にある雑貨店のASOKOでも販売。3COINSにはないカラーバリエーションも展開している。

 また、新型コロナウイルスの影響もあってか、スマホで音楽を聴くだけでなく、テレワーク用途でも購入される傾向が見られるという。新型コロナウイルスをきっかけに、テレワーク用途としてイヤホンだけではなく、スマホやタブレット用のスタンド、ホルダーが急激に売れるようになった。

取材からわかった『ワイヤレスステレオイヤホン』のヒット要因3

1.安い

 ワイヤレスの完全独立型イヤホンで税込1650円。最近は近い価格で売られているものも出てきたが、発売から1年以上経過しても安さが際立つ。

2.入門用に最適

 ワイヤレスイヤホンを使ってみたいけど「高い」といった理由で手が出ない人もいる。そういう人たちからしたら、安価なので手が出やすい。入門用として最適だった。

3.価格以上の価値を提供

 税込1650円とワイヤレスイヤホンとしては安価であっても、使い物にならなければ意味がない。3COINSが使命としている「いいものを安く提供する」を実現するべく、開発では可能な限り性能を追求。価格以上の性能を実現し支持を得ることができた。

 3COINSの取扱商品の中で『ワイヤレスステレオイヤホン』は、年間売上がベスト5に入るほど。税込330円というイメージが強い3COINSで税込1650円という高価格帯商品が売れたことは消費者が受け入れたということ。3COINSでも高価格帯商品が売れることがわかったことで、運営会社のパルは自社商品の商品力に自信を持つことになった。この自信は今後の商品開発にいい影響を及ぼすであろう。

ブランドサイト
https://www.3coins.jp/

文/大沢裕司

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