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ブロックチェーンの技術でDXを加速させることはできるのか?

2021.05.14

新連載/TOKYO 2040 SideB

最近よく聞く「NFT」って何?

 ここ2ヶ月ほどビジネス系のテレビ番組で取り上げられるなどで巷を賑わせているのが『NFT』です。アーティストの絵や、世界最初のツイートといったデジタルデータに何億円の値がついたというニュースは、世界中の人を驚かせました。『NFT』は、Non-Fungible Token(非代替性トークン)と呼ばれるブロックチェーンのデータです。

 ブロックチェーンというと仮想通貨(暗号資産)を思い浮かべることが多いと思いますが「分散型台帳」と翻訳されるように、新しいデータの形態です。世界中のコンピュータがインターネットで繋がり、演算とその履歴の検証をしあうことで改ざんに強いデータとなっています。

 また、中央で管理されるサーバーが存在しないことが特徴で、これをもってブロックチェーン技術が非中央集権的(デセントラライズド)であると説明されます。

 デジタルデータ活用の進歩は「コピー」とともにあったといっても過言ではありません。現実世界ではドキュメントひとつをとっても、複製を作るには人が書き写したり、専用の機械を開発して使用する必要がありました。

 現代の人々はスマホやパソコンなどの高度なコンピュータをまったく意識せずに使えてしまいますが、デジタルデータは一瞬でコピーを作ることができ、都度アップデートされるドキュメントをバージョンごとにコピーを残して履歴としたり、ネットワークを通じて遠隔地にコピーを一瞬で送れます。これは人類の歴史をみても画期的な発明といえます。

 ところが、カジュアルなコピーによってまったく同一のものが生成されてしまう点で、現実世界と違った問題が発生するようになりました。デジタルデータの絵、音楽、ソフトウェアなどに付随する権利が容易に踏みにじられてしまうケースが出てきたのです。もちろん、法によって守られたり、DRM(デジタル著作権管理)のシステムは存在しますが、データそのもののコピーはできてしまいます。

 冒頭に紹介した『NFT』は、コピーし放題のデジタル世界で、唯一無二の「原本」を示すことができます。「記された内容はどれだけ閲覧やコピーをされてもよいが、原本は唯一のものとして改ざんされてもわかるようにしたい」ときに、効果を発揮します。

 これは、たった一枚の名画について、美術館に収蔵され厳重に管理されつつも、カジュアルなコピーとして図録や美術書あるいは絵ハガキが存在するのと同じだと考えられます。どれだけコピーされても原本の価値は変わりません。

 こういった特徴をベースに、ブロックチェーンあるいはNFTをDX(デジタルトランス・フォーメーション)に活用できるのではないかとする考えがあります。

 例えば登記や契約、公正証書などです。これらは原本を気ままに書き換えるわけにはいきませんが、コピーして閲覧したり配布したりは可能です。コピーしたものに赤ペンで書き入れをしたところで、原本が毀損されることはありません。

ブロックチェーンでDX! でも、どうやって?

 ブロックチェーンの登場によって、デジタルデータの見方が変わりました。コピーできることが利点であり場合によっては欠点でもあったところ、ブロックチェーンによって原本やその権利が毀損されないのであれば、カジュアルなコピーができてしまうことを気にしなくて良い使い方もあるのではないか、となります。

 これは、デジタルコンテンツにおける数々の「基本無料」ビジネスモデルの発達にも似ています。無料のコピーで多くのユーザーに体験をしてもらい、その先にマネタイズがあるという考え方です。スマホゲームしかり、Web小説しかりです。ゲームは無料で遊べてもアイテム等の購入にお金がかかり、Webサイトで無料で読めても電子書籍で購入するにはお金がかかります。

 ブロックチェーンのデータを扱うプログラムを「スマートコントラクト」と呼びますが、誰からも動作を検証できるオープンな状況で、データの転々流通とそこに発生するフィーの分配を仮想通貨で行うなどが考えられます。

 さきほどのデジタルコンテンツであれば「電子書籍のデータを他者に転売し、売買が成立した瞬間に、売り主だけでなく作家や出版社に仮想通貨が分配される」という、現実世界での古書流通でさえも難しかったことが可能になります。

 ここまでくると人と書籍の距離感が変わり、「行動変容」が伴いますから、DXと言えます。ブロックチェーンは、特性をどういう切り口で用いるかで、単なる従来のデータの置き換えに留まらない世界が待っていると言えるでしょう。

夢の技術!ではなく…

 もちろん、解決すべき課題もたくさんあります。ブロックチェーンのデータを巨大なファイルとして扱うことには無理があるので、ブロックチェーンには原義のとおり台帳の役割だけさせて、実体となるデジタルデータは別のところに保管するという運用が考えられます。これでは保管しているストレージが壊れたり、サーバーが撤去されてしまったら意味がありません。IPFS(InterPlanetary File System)などで運用される分散型ストレージに置いておくなどの工夫が必要になります。

 また、演算毎にコストがかかります。例えば『NFT』で用いられているERC721という規格は、仮想通貨「イーサリアム」の演算ネットワークを使用しますが、データを書き換える度に「Gas代(ガスだい)」という手数料が発生します。そして、演算は世界中でコンピュータが稼働していることになりますので、その電気使用は巡り巡って環境問題に繋がります。従来の中央集権型のWebサーバーとデータベースを運用したほうがかえって安上がりだという結果になりかねません。

 そこで発想を転換し、現在のビットコインに代表されるように、全世界をネットワークで繋いだ演算(マイニング)に躍起になるのではなく、小規模でクローズドなネットワークでブロックチェーンを用いる未来があって良いと考えています。

 本誌の小説『TOKYO2040』では「新世代ブロックチェーン」と書きましたが、近未来ではSDGsの観点で各自治体が再生エネルギーなどを活用し、総合行政ネットワーク(Local Government Wide Area Network)内でブロックチェーンのノードや分散ストレージを運用することで、より堅牢でサスティナブルかつBCP(事業持続計画)にも適したデータ運用をしているという想定です。

 地域や同業者の集まりのように、その内側で差があったり競争は発生しても、共通部分は統一されていたり共有されていたりしたほうが良いものはたくさんあります。世界中のコンピュータを演算に参加させるのではなく、ローカルネットワークを築いてしまい、オーソライズされた参加者のみがノードを立てて演算力を提供。中央集権的な考えがあったほうが上手くいくことがあるのは否定せずに、システムのみがデセントラライズドであればよい、というものです。

 新技術は、考えれば考えるほど「便利そうな技術だがどうやって役立てて良いかわからない」となってしまうケースが多いと思います。これは、ブロックチェーンも同じで、活用方法として最もわかりやすくてインパクトのある「仮想通貨(暗号資産)」が最初に登場してしまったゆえの悩みです。今後、特性をとらえた応用が数々誕生して、DXを加速させていくことが期待されます。

文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。

このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。ぜひ、最新号もチェックしてみてくだい。

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