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相次ぐ宇宙ベンチャーのSPAC上場で盛り上がるアメリカ、日本のベンチャーはどう動く?

2021.04.16

今アメリカを中心にベンチャー企業のSPAC上場が相次いでいる、そんなニュースを耳にした読者も多いと思う。これは宇宙ベンチャーでも同じだ。すでにSPAC上場を果たしているVirgin Galacticが有名ではないだろうか。急に2021年3月になってアメリカの宇宙ベンチャーがSPAC上場を相次いで進めている、そんな印象だ。

でも、実は、このようなSPAC上場の話題を初めて耳にする読者の方も多いかもしれない。SPAC上場とは、少し荒く説明をすると起業したスタートアップの多くは、エグジットとしてIPOという新規上場を目指して事業を進めているが、この上場には、株主数、時価総額、利益額、売上高など定められた厳しい基準をクリアしなければならない、その審査に時間がかかる、その達成のプロセスには資金調達をしなければならないなどの障壁があったが、それを短時間で達成する可能性がある、そんなスキームのことだ。アメリカでは、宇宙ベンチャー以外でも大麻、電気自動車、ブックメーカなどのスタートアップのSPAC上場が活発だ。

今回は、そもそもSPACとは何なのか、どんな宇宙ベンチャーがSPAC上場しているのか、SPAC上場する宇宙ベンチャーが増えている理由は何なのか、などなど、SPAC上場について、みていきたいと思う。

すでにSPAC上場を達成しているVirgin Galactic
(出典:Virgin Galactic

SPAC上場ってそもそも何?

SPAC上場とは、新規上場IPOするための手法の一つ。アメリカでは以前から存在していたスキームだったが、ルールが緩かったことなどから不正が多い、そんな課題があったようだ。現在は、様々なしっかりとしたルールが設けられ活発な動きとなっているようだ。

このSPAC上場には、SPAC、買収企業、投資家の大きく3つのプレイヤーが存在する。まず、SPAC。SPACとは、特別目的買収会社のことだ。Special Purpose Acquisition Companyの略。このSPACは、普通の企業とは異なっていて、買収を目的に設立した会社で、このSPAC自体は、事業を行わない。その他のプレイヤーである買収企業はSPACに買収される企業、投資家は、SPACへ投資するヒトのことである。

では、SPAC上場のスキームはどんなものだろうか。まず設立者が自分で資本を投入してSPACを設立する。そしてSPACは投資家から資金を集めてSPACは上場する。上場したSPACは、買収する企業を見つけて買収する。SPACと買収企業が合併することで買収された企業が存続企業となって上場会社となる、そんなスキームだ。SPACを設立する投資家は、著名な元起業家や投資家人が多く信用力があるため、SPACへお金が集まりやすいのだ。

SPACのメリットとはなんだろうか。

まず買収企業にとってのメリットを見てみよう。それは、普通のIPOに比べて、資金調達がしやすい、新規上場IPOを比較的早く達成することができる、そんなメリットがあるのだ。SPACへ投資する投資家のメリットは、未公開株式へ少額で投資できる、買収できなくても投資金額が金利付きで返還されるなどのメリットがあるのだ。しかし、水素燃料電池トラックのニコラというSPAC上場を達成した企業は、技術に関する虚偽の広告をしたという詐欺容疑で株価が大暴落。このような未公開株式への投資リスクというデメリットの点もあるのだ。

実は昔からある?!SPAC上場を進める世界の宇宙ベンチャー!

すでに、SPAC上場のスキームを使って上場を達成している宇宙ベンチャーが存在する。その一つは、Virgin Galacticだ。おそらくニュースで大きく報じられたので、ご存知の方も多いはずだ。Virgin Galacticは、ソーシャルキャピタルヘドソフィアというSPACに買収され、2019年10月28日にニューヨーク証券取引所に上場している。しかし、実は、もっと昔からこのスキームで上場している企業が宇宙市場には存在する。それは、2008年から通信衛星企業イリジウム、2012年Row 44、2016年 Avio SpAだ。

最近のSPAC事例は、どうだろう。

2021年3月1日、アメリカの小型ロケットベンチャーRocket Labは、SPACであるVector Acquisition Corporationに買収され2021年第二四半期までに上場するようだ。これによりRocket Labは7億4500万ドルを調達することができ、企業価値は約41億ドルとなると見込まれている。 

同日に、小型衛星リモートセンシング企業であるSpireは、SPACであるNavSight Holdings Inc.に買収され、2021年の夏頃までに上場する予定だ。Spireは4億7500万ドルを調達し、企業価値は約16億ドルとなるようだ。

SPAC上場の準備を進めるRocket LabのElectronロケット
(出典:Rocket Lab)

また、2021年3月25日、AdcoleやMade In Spaceなどを傘下とするRedwireは、SPACであるGenesis Park Acquisition Corporationに買収され、2021年第二四半期までに上場するとされている。Redwireは1億7000万ドルを手にし、企業価値は約6億1500万ドルになると算出されている。

他にも、ライドシェアビジネスを手がけるMomentus、楽天モバイルと提携しているAST & Science LLC、小型ロケットベンチャーのAstra、小型衛星リモートセンシングベンチャーであるBlackSkyも同様のスキームによりSPACより買収され上場の準備を進めている。

アメリカには、有望な宇宙ベンチャーが多く存在する。これらの宇宙ベンチャーに対して、設立当初から多くの資金が流れ、ビジネスを手がけてきたが、エグジットを模索してきたがなかなか次のフェーズへと移行する機会に恵まれなかった。そんな中、伝統的なIPOによる上場による高いハードルを回避できる策であること、投資家のSPAC投資の関心の高まり、そして著名な経営者や大手投資銀行などのSPACへ積極的な関わりが徐々にSPACに対するイメージが改善されてきて、SPAC上場というエグジット策がこのタイミングでマッチしたそんな印象だろう。

今後どうなる?日本の宇宙市場でのSPAC上場

このようにアメリカでは、宇宙ベンチャーのSPAC上場の事例が見られ始めており、活発だ。活発すぎて、アメリカの投資銀行のビジネスパーソンは過労状態という報道まで出ている。さらにはヨーロッパまでこの影響は飛び火しているようだ。上場し株式公開することで一般投資家からも資金を調達でき、宇宙ビジネス企業を自由に選択してもらう機会が創出され、成長環境に晒される、これが宇宙ビジネスのマーケットにとってよい機会なのかもしれない。

一方で、否定的な見方をする専門家もいる。宇宙ベンチャーのSPAC上場においては、他の市場のSPAC上場企業に比べて、企業価値、資金調達額は大きいが収益が低い、もしくは、まだ実質的な収益が出ていない、そんな課題があるようだ。今後、収益性の面で課題もしくは大きな”失敗”が続くなどすれば、宇宙市場は投資に不向きだという判断を投資家からされかねない、そんな危機感があるようだ。実際に宇宙ビジネスは、宇宙品質のためのコスト高、複雑なシステムの製造、ライン化されていない工場で製造、過酷な試験による不具合の抽出などスケジュール遅延リスクも高い市場であり、他の市場と同じ土俵で比較することは難しいのだが。

では、日本では、SPAC上場のスキームの現状はどうだろうか。実は、日本では、SPAC上場というのは、まだ認められていないのだ。

一足先に、日本と関係があるということで、ソフトバンクグループは、アメリカにてSVFインベストメントというSPACを設立してテクノロジースタートアップを中心に買収し、SPAC上場を進める計画だという。

このようなアメリカの動きを見て、日本でもスタートアップ育成に世界から出遅れているという危機感から、先日2021年3月17日の成長戦略会議で加藤官房長官は、SPACの解禁に向けて検討を開始していくと述べたと言われている。他にも、アメリカのSPAC上場スキームそのものではなく、日本に適したスキームである日本版SPACの必要性も専門家から意見が出ているようだ。もし、SPAC上場が解禁され、日本でもIPOする宇宙ベンチャーは登場するだろうか。今後の動向に注目である。

日本でのSPAC上場はどうなっていくのか?!

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。

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