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大手企業における初任給改革の裏側で進んでいること

2021.04.12

■連載/あるあるビジネス処方箋

ここ数年、大卒、大学院卒の初任給の改革が進んでいる。今回も、前回同様、人事の専門家にその背景をお聞きする。金融機関の採用に精通している金融ヘッドハンターの田頭信博氏に取材を試みた。

田頭氏は三光汽船に18年間勤務、うち3年間はシンガポール首席駐在員。その後、1989年からは金融専門のヘッドハンターとして活躍。これまでに国内の大手銀行や証券会社、格付会社、生保、海外の金融機関の社員を中心に850人以上の転職、就職支援に関わってきた。現在、国際金融専門のサーチ会社・エシアリンクコンサルティング代表取締役を務める。

初任給改革に力を入れている1つが、大和証券と言える。2021年3月には、新入社員の初任給を月額40万円以上(30時間分の固定残業代を含む)にする人事制度を始めることを発表した。自社の資金で株や債券を運用する自己売買部門のトレーダーや、IT分野に携わる人材を想定して設ける「高度専門職」が対象。2022年4月入社から適用する(2021年3月16日、朝日新聞)。

Q 大和証券の試みをどのように捉えますか?

「オール総合職で、全員を一律に同一賃金で採用するのは戦後間もない頃に出来上がった慣習であり、それを今も継続するのは時代の流れにマッチしていません。大手証券の試みは、危機感の表れなのだと思います。その意味で、私はこういう企業には拍手を送りたい。

大和証券は業界初の試みではなく、10年ほど前に大手証券の2社が新卒採用でトレーダー職やM&Aなどの専門職を募集する際に月給40万円程に設定していたかと思います。この取り組みは現在も試行錯誤の中、継続しているはずです。退職者が多数いたり、総合職の社員から嫉妬されることもあったと聞いています。

 私としてはこの試みが失敗したとも、成功したとも思っていません。この採用の課題は、採用するか否かを最終的に決める企業のトップや担当役員、人事の責任者に眼力があるかどうかです。つまり、四十数万円の賃金を支払うに値する学生か否かを見極めることができるのか。

 それでも、大和新卒時に専門職を40~50万円で雇うことは悪いことではないし、その数をもっと増やすべきでしょう。例えば、アメリカの投資銀行の数社は新卒時の基本給が約800万円。これに賞与と残業が加わりますから、23~24歳で年収1200万~1300万円になります。日本の大手金融機関が海外の有力企業と人材の獲得競争をするならば、賃金を上げていくのが当然なのです」

Q まず、総合職として採用し、その後、キャリアを積んだうえで専門職になることはできないのでしょうか?

「大和証券に限らず、人事制度の運用次第では、総合職から専門職への転換や、総合職の中でも評価に応じて高い賃金を払うことができます。例えば、今の大手証券会社のトレーダーの担当役員クラスのほとんどが、新卒時は総合職で入社したはずです。キャリアを積み、一定の評価を受け、トレーダーとなり、部署の責任者になっているのです。総合職から専門職へのシフトは十分に可能であることを立証しています。

 ある証券会社の人事責任者は、『現在の自社の人事制度では、高度専門職の社員に総合職レベルの賃金しか支給できない』と語ります。しかし、別のある大手証券会社では、一流私立大学を卒業した32歳のA氏が年収750万円。A氏の人事評価はあまり高くはありません。一方、同期生のB氏はランクがやや下がる私立大学出身ですが年収は1800万円。人事評価は高い。人事制度の運用次第で、このくらいにメリハリをつけることが可能です。ちなみにその会社は、海外の投資銀行と渡り合える数少ない証券会社です」

Q 新卒時の高度専門職が外資系金融機関の“草刈り場”になることはないのでしょうか?

「日本の証券会社が新卒の高度専門職を30人程雇ったとします。このうち、30代になった頃にアメリカの一流投資銀行がヘッドハンティングするのは多くて3人でしょう。海外の一流投資銀行と日本の証券会社の社員は、残念ながらそのくらいの差がついているのです」

 初任給の改革は多くの企業にとって急務であるはずなのだが、なかなか進んでいない。その意味で、大和証券の挑戦は称えられるべきだとは私は思う。読者諸氏の職場では、初任給の改革は行われているだろうか。

過去の記事もご覧ください。

企業が大卒の初任給を引き上げる本当の理由|@DIME アットダイム

文/吉田典史


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