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長引く「マイルドな後悔」が生活の満足度を引き下げていた!

2021.04.11

 何だか後悔することの多い一日だった。どれもたいしたことではないのだが、気づけば脳裏によみがえってきて気分を落ち込ませる。少し歩いて頭を冷やすことにしよう。

中野通りを歩きながら買い逃した服を惜しむ

 中野区某所での用件を終え、夜桜を眺めながら中野通りを歩く。今日はもう部屋に戻るだけだが、急ぎの用はないので歩きながら少し夜桜見物を決め込んでみてもよい。このご時世で桜まつりなどのイベントは中止になっているが、個人的には桜並木を散策するだけでじゅうぶん過ぎる。おそらく今シーズンはこれで見納めだ。

 しばらく縁遠かった中野だが、最近は訪れる機会が続いている。駅前の街並みは前とほとんど変わっていないように思えるが、JR中野駅は現在、駅ビル化へ向けての工事が行われている。中野のランドマークともいえる中野サンプラザの建て替え工事ももうすぐはじまるようだ。とすれば駅の西口側は近い将来かなり変わっていくのだろう。

※画像はイメージです(Unsplashより)

 歩みを止めずに中野通りを北上する。……それにしても買い逃したことが悔やまれる。服の話だ――。

 特にコロナ禍が影響したというわけではなく、数年前から服はほぼネット通販で買うようになっている。単純に便利で買い物の時間が節約できるのが最大の理由だ。肌着や靴下など決まったアイテムを買うにはネット通販は特に便利である。

 しかし慣れてくるといろんな“策略”が、ついつい思い浮かんできてしまう。セールや値下げの活用を見込んでしまうのだ。

 上下揃いにもできるジャケットとパンツがあり気に入ったのだが、定価で買うのはなんだか面白くないような気がした。少し待てば期間限定セールや値下げで安くなるだろうと踏んでいたのだ。

 パンツのほうが先にセールにかかり、首尾よく定価より安く買うことができた。そしてジャケットのほうがセールになるのを今か今かと待ち続けていたのだが……。仕事で慌ただしく、チェックを少し怠っていたところセール価格になり、欲しかったサイズはものの半日ほどで売り切れてしまっていたのだ。つい数時間ほど前の話である。

 早稲田通りとの交差点にやってくる。周囲の桜の“密度”が高まりよりいっそう美しい。直進はせずに交差点を右折する。この界隈もなかなか賑やかだ。“ちょっと一杯”にはちょうどいい時間であり、絶好の場所でもあるのだがこのご時世ではあるし、また決して急ぎではないものの部屋に戻ってから進めておきたい作業がある。今日のところは断念しよう。

 それにしてもたかだか買い逃した服の話ではあるが、それなりの期間温めていた計画だったので地味にダメージが効いてくる。ショックの衝撃度は低いのだが、折に触れて蒸し返されてきてじわじわとメンタルにくる感じだ。大げさだがしばらくは立ち直れないいかもしれない。

長引く“マイルドな後悔”が生活の満足度を引き下げる

 早稲田通りをしばらく歩くと「薬師あいロード商店街」の入り口にさしかかる。新井薬師に通じる参道で、さらに先を行けば西武新宿線の新井薬師駅に辿り着く。駅まで歩いてみたい。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 少しばかり不愉快にさせてくれることが今日は午前中から起きている。我ながら情けない話だが、部屋を出る前に食べようと電子レンジで温めた冷凍食品のドリアを、レンジから取り出す時に手元が狂って床に落としてしまったのだ。片づけをしているうちに部屋を出なければならない時間になり、結局何も食べずに出かけるはめになった。

 ……商店街のやや狭い通りはまさに昭和の商店街だ。飲食店と共に文房具店や洋品店などのレトロな店構えの店舗が並ぶ。天然温泉で有名な銭湯もある。次に来ることがあればここでひと風呂浴びていくのもなかなか魅力的な案だ。温泉に浸かればネガティブな気分も一掃できそうである。

 今日という一日がどうも出足から不調であったは、昨晩の深酒が一番の元凶なのだろう。決して強い酒を飲んでいたわけではないのだが、遅くまでけっこう長い時間にわたって発泡酒を飲み続けてしまったのだ。アルコール度数が低い酒でも長時間飲んでいれば当然ながらけっこうなアルコール摂取量になる。強い酒を少量飲んで寝てしまえばよかったものを、発泡酒を飲みながらユーチューブなどを眺めているうちにダラダラと深酒をしてしまったのだ。

 お酒でも気分の落ち込みでも、よりネガティブな影響はその強さではなく時間の長さからくるものであることが最近の研究でも報告されている。服を買い逃すといったような“マイルドな後悔”であったとしても、その後悔が何度も思い返されて続くようなことがあればその日一日中、場合によってはそれ以上の期間にわたって気分の落ち込みが続くというのである。


 質問票、毎日の電話報告、およびfMRIによる脳のスナップショットからのデータを結び付けて、研究者は左扁桃体がより少ない秒数で負の刺激を保持した人々は、日常生活においてよりポジティブでより少ないネガティブな感情を報告する可能性が高いと判断しました。それは時間の経過とともにより永続的な幸福に波及しました。

 逆に、左扁桃体が時間の経過とともにネガティブなイメージに対してより持続的に反応した人々は、日常生活においてよりネガティブな感情とより少ないポジティブな感情を報告しました。

「扁桃体の持続性が高い個人の場合、ネガティブな評価に続く無関係な瞬間を挟み込むことによって、ネガティブな瞬間が増幅または延長される可能性があります」と著者は述べています。

※「University of Miami」より引用


 米・マイアミ大学をはじめとする合同研究チームが2021年3月に「The Journal of Neuroscience」で発表した研究は、実験を通じて脳の扁桃体の活動パターンが生活の満足度に及ぼす影響を探るものになっている。

 研究チームはアメリカでの中高年のストレスと健康に関する縦断調査「MIDUS(The Midlife in the United States)」の参加者52人に対して、心理的幸福についてのアンケートに回答してもらうと共に、1週間にわたって毎晩電話をしてその日に体験したストレスの多い出来事とポジティブおよびネガティブな感情についての詳細を報告してもらった。そして実験室では脳活動を測定する機器(fMRI)を装着した状態で笑顔などのポジティブな画像と恐れや怒りの顔などのネガティブな画像を、そのどちらでもない中立的な画像を挟んで見てもらいその時の脳活動が詳しくモニターされた。

 ネガティブな画像を見ると脳の左の偏桃体の動きが活発になることがわかったのだが、詳しく分析してみるとこれには個人差があったのだ。

 悲しい画像を見て左偏桃体がほんのわずかな瞬間だけしか反応を見せない者は、日常生活におおむね幸福感を感じていることが示唆されることになった。嫌なことはさっさと忘れることができるので、ネガティブなことをくよくよ思い悩んだりせずにおおむね生活の満足度が高い状態をキープできているのである。

 その一方、ネガティブな画像を見た時に左偏桃体の反応が長引く者は、中立的な画像を見ても左偏桃体が反応しがちであり、生活の中でもネガティブな感情を抱いていることが多い傾向があることもまた明らかになったのだ。1日に何度も蒸し返されてくる後悔や慚愧の念などは、たとえ他愛ないものであったとしても長く続くことでメンタルに多大な悪影響を及ぼし生活の満足度を引き下げているのである。

長い商店街を歩き駅前でかつ丼を食す

 薬師あいロード商店街ももう終わりそうだ。そしてこの先は駅へと通じる新井薬師商店街になる。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 午前中から散々な一日ではあったが、仕事は順調に進み客観的にはそんなに悪い1日ではない。しかし狙っていたジャケットが買えなかったことは重ね重ねも後悔が残る。この改悛の念を思い浮かべる度に、生活の満足度は下がり、不幸へと促されていくのはこの研究からも明らかなようである。いい加減、拭い去らねばなるまい。

 過ぎたことはきれいさっぱり忘れたいものだが、幸いにもこうして長い距離を歩いてきたことで頭の中がだいぶ整理された感もあった。歩くことで心身が“整う”ともいえる。

 商店街を歩いた先の交差点で路線バスを見かける。交差点を越えてさらに駅に近づくと車道とは明確に分かれた段差のある歩道になる。この商店街には歩道の上に屋根がありなかなか昭和っぽい。

 駅に近づくほどに人通りも店の数も増えてくる。こぢんまりとした駅前ではあるがけっこうな数の飲食店が店を構えている。駅から電車に乗って帰る前にどこかで何か食べてもよかった。出がけにドリアを食べ損ねて以来、今日は今までにコンビニのサンドイッチを食べただけである。

 とはいってもどこに入ったらよいのか皆目見当がつかない。中華料理店や居酒屋などが見えてくるが今はどうもそういう気分ではない。弁当屋や持ち帰り寿司の店、テイクアウトのから揚げ店などもあるが、そうした所で買って電車に乗って帰るというのも考え難い。

 迷いながら歩いているうちに駅に着いてしまった。そのまま西武新宿線に乗って高田馬場で降りてから考えてみる手もあったが、今は飲食店が早く閉店してしまうのであまり悠長なことも言ってもいられない。

 駅の改札前にもいくつのかの店があり、その中には某立ち食いそばチェーン店もある。久しぶりに入ってみよう。

 立ち食いそば店としては中途半端な時間なのだろうが、店内には3、4人の先客がいた。いずれも30歳代くらいの男性客ばかりだ。

 券売機で「かつ丼」のボタンを押す。あえてそばではなく、またそばとのセットでもなくかつ丼の単品にすることにした。セットにするすとおそらく満腹になってしまうだろう。

 カウンターで食券を渡し、給水機でコップに水を注いで席に着く。プラスチックのカップで水を飲むのは立ち食いそば屋ならではの体験だ。かつ丼が出来た旨が食券番号で伝えられ、自分でカウンターに取りに向かう。ほぼ想像していた通りのかつ丼だ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 普通のかつ丼だがこれ以上何も望むものはない。最初はこれでも量が多いのではないかと思ったが残さず美味しくいただいた。かつてはよくこのチェーンで食べていたが、思い返せば4、5年ぶりくらいである。個人的に立ち食いそばを食べるという習慣そのものがなくなってきてしまっている。

 さて、食べ終えた食器をカウンターに返却して帰るとしようか。中野からの“小さな旅”でだいぶリフレッシュすることができた。服については今月いっぱいはもう何も考えないことにしよう。

文/仲田しんじ

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