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従来の保育園の枠を超えて社会や時代にアプローチする「茶々だいかんやま保育園」の挑戦

2021.04.10

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

子どもたちが20歳になったとき「通ってよかった!」思ってもらえる保育園を目指して

区営住宅や高齢者福祉施設、障害者福祉施設が併設された「渋谷区恵比寿西二丁目複合施設」内に、茶々保育園グループの「茶々だいかんやま保育園」が4月1日開園した。

茶々保育園グループは1979年、埼玉県入間市の“茶畑の真ん中”に第1号園を設立。関東近県に15園を展開し「茶々だいかんやま保育園」は16園目となる。建物は渋谷区で建設した複合施設で、1~2階部分に茶々保育園グループが民間保育園として運営する。

「園のコンセプトは『持続可能な未来の主役を育む』。子どもたちが20年後に社会を形作ることをイメージしながら、日々の保育を考えていく。持続可能を謳うということは、人との関わり、伝えていくといったコミュニティそのものに価値を置くということ。

渋谷区は子育て支援だけでなく、ダイバーシティ、SDGsについて先進的な取り組みを行っている自治体。保育園は子どもたちを中心とした新たなコミュニティを街の中に作るということであり、持続可能な場所としてはうってつけではないかと思う」(茶々保育園グループ理事長 迫田健太郎氏)

内装デザインは、これまでにない保育園の環境を実現するため、good design company代表のクリエイティブディレクター・水野学氏がディレクションを担当。環境が子どもたちや保育士の美意識にも影響を与えることを踏まえ、これまでの保育園にはない斬新なアイディアが随所に散りばめられている。新園舎では安全性を確保しながら、土壁など天然素材など、コンセプトに合わせた自然物の融合を表現している。

熊本県「くまモン」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、NTTドコモ「iD」などを手掛けたことで知られる水野氏は、ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、インテリアデザイン、広告宣伝、長期的なブランド戦略までトータルに携わっている。開園に先立って行われた内覧会では、迫田理事長と水野氏が「茶々だいかんやま保育園」にかける想いを語った。

迫田理事長「都市型の保育園として学ぶ環境を考えたとき、自然をできるだけ感じられる場所にしたいと思った。風や光や水や土を、手触りで感じられる環境をできるだけ作っていく。このコンセプトを形として表すためにはデザインの力が重要。デザインや中身の在り方も含めて、第一線で活躍されている方々に協力をいただいた。

水野さんのプロジェクトを拝見すると、大切なことを伝えていくためにデザインという手法を使っているプロだと感じた。伝えるということに関しては幼児保育も全く同じで根底でつながっている。伝えるプロフェッショナルに入っていただき、伝えることにとことんこだわりたいと水野さんにオファーした。コンセプトができる前からたくさんの助言をいただき、園内を土壌にしてしまえばいいというアイディアも水野さんの発案だった」

水野氏「僕自身この地域で子育てをしてきたが、親として心残りだったのが、自然がある環境で育てた方が良かったのではないかということ。どちらが良いのかはわからないが、この想いから、都会型の茶々保育園は自然型にして、自然型の茶々保育園は都心型にするのはどうか?とプランを話した。都会の代官山は土壌をコンセプトにした、園内が地層のようなイメージで、子どもたちに自然の疑似体験をしてもらう内装に仕上げた」

迫田理事長「子どもたちの成長を木に例えることがあるが、樹木の成長には土壌が大切で、私たち幼児教育者は土そのものなのかもしれないと以前から考えていた。水野さんのアイディアは私たちの考え方にもぴったりとはまったので園の内装に取り入れた。私たちの言語化できない想いに、方向性を示していただけたことは非常に大きな価値となった」

水野氏「完成した保育園を見て、息子を通わせたいというのはもちろん、自分もここに入りたいと思った(笑)。レイアウトがゆったりしていて、建物自体テラスが大きく取ってあるので本当に気持ちの良い場所。自然を感じることは保育の上で大切な要素のひとつだなと感じた。

迫田さんは『え、そこまで!?面倒くさい!』と思うほど(笑)、熱く保育のことを考えている人。その考え方に寄り添う内装にしないといけないと試行錯誤してきた。子どもたちが20歳になったとき『オレ、茶々だいかんやま保育園だったけど、めっちゃよかったよ!』と言ってもらえるのが理想かなと。

教育の分野にデザインが入っていくことは大切だと思う。今は文明から文化に時代がシフトしている。デザイン、アートといった感性の部分が子どもに与える影響は少なからずあり、保育園の経営者もデザイナーも、子どもを通園させる親御さんもそのことを考える時代になったのではないかと。僕自身もそれに合致する仕事をしていきたい」

“Education is Empathy”を具現化した新園舎

新園舎では、主にふたつの大きな保育・教育方針を掲げて実践していく。ひとつ目が自然に対する感性を広げること。土・風・緑・光・水にあふれた園舎で遊び、学びながら、環境や多様性への意識を高めるとともに、自らの考えや表現力、他者との会話から最適解を導く力を育む。

ふたつ目は社会形成に参加すること。「子どもも一人の市民」という考えから、地域に向けて開かれた交流スペースとして「ちゃちゃカフェ」を併設。子どもたちの活動を記録したグループオリジナルの教育的ドキュメンテーションを展示して、地域の人たちと子どもたちの活動や成長を共有する。

「子どもが喜ぶからと言って原色を多めにしたり、プラスチックのおもちゃを並べることにあまり意味を感じない価値観が私たちにはある。また、保育園を閉ざされた場所にするのではなく、セキュリティや安全性を担保しながら地域に開かれた施設として、積極的に関わりを持っていきたい。そのためには、保育園の営み、子どもたちの成長を地域や社会の皆さんに発信していくことも必要で、ドキュメンテーションを私たちがメディアを持って展開していく。カフェスペースはドキュメンテーションセンターと位置付け、保護者や地域の方、職員が語らう場にしたいと考えている」(迫田理事長)

0歳~5歳まで6クラスあり、それぞれに「シード(Seed)」「リーフ(Leaf)」「レイン(Rain)といった自然にちなんだ名前が付けられている。茶々保育園グループでは、同年代だけでなく幅の広い関係を構築するために、異年齢で生活する縦割り保育を全園で実施。

0歳児から「コーナー保育」と呼ばれる棚をたくさん設置して、子どもたちがおもちゃを主体的に選んで遊べるようにしている。

茶々保育園グループのミッションステートメントのひとつが「Education is Empathy」。

エンパシーとは、考え方や立場が異なっても相手の身になり、より良く理解しようとする力のこと。このエンパシーを日々の保育、教育の柱に据えており、さまざまな取り組みが行われている。そのひとつが「Myフィーリング」。子どもたちが登園してきたときに、その日の気持ちを聞いて、今の気持ちに近い表情の顔にピンチを留めていく。大人と同様に子どもにもその日によって気持ちの波はあり、「どんな気持ちで園に来てもいいよ」ということを伝える。

「Myドール」は入園すると一人ずつに渡される、茶々オリジナルの手作り人形。服装や髪形など1体ずつ異なり、ぎゅっと抱きしめたり、自分を投影したりして、寂しさや楽しさを共有する、子どもたちの心のよりどころとなる。

「Education is Empathyという考え方から、新園舎では、園全体がエンパシーを最終目的として造った。部屋は自然をイメージする名前がついているが、無機質なものにも思いを寄せるという意味で、『部屋が何かを言っているかも』『部屋にも気持ちがあるかも』と子どもたちに感じでもらうため、部屋のサインが吹き出しになっている」(水野氏)

保育・教育方針のひとつである、子どもも一人の市民として社会に参加させるという考え方から、積極的に街や人々と向き合い、社会のために子どもたちができることを見つけていく。

「街のアトリエ」は、自分が地域社会の一員として役割があることに気づいてほしいと、さまざまな素材を使って自分たちで街を表現。中央の建物は保育園に見立てている。パーツは木工チームと呼ばれる職員が手作りしている物も多い。

茶々保育園グループは「ランチがおいしい」と評判。他園ではビストロウエアに身を包んだ調理スタッフの様子を子どもたちが見られるレイアウトになっているが、新園舎は渋谷区の複合施設内にあるため、調理室は見えない場所に。それでも少しでものぞくことができればと、階段の踊り場の一部をガラス張りにしている。

【AJの読み】ここで育った子どもたちの20年後が楽しみ

保育業界に新風を吹き込んできた茶々保育園グループの16番目の保育園が恵比寿・代官山エリアに開園した。都会にある都市型保育園だが、テラスがふんだんにある建物は開放的で、気持ちの良い風が通り抜ける。

おしゃれなエリアにふさわしいモダンなデザインの保育園なのだが、茶々だいかんやま保育園の真の魅力は見た目ではなく、自然をモチーフにしたデザインの園舎で、豊かな創造性を遊びや学びで育みながら、環境や多様性への意識を高める保育を実践しているということだろう。

茶々保育園で育ち、エンパシーの心が芽生えた子どもたちが、環境問題、貧困や格差、分断と、世界中でますます深刻化するさまざまな問題を解決する方法を見出せるようになるのか。子どもたちの20年後が楽しみだ。

文/阿部純子

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