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13歳の日本人少年がイギリスの人気作家の心を動かして映画化された作品「僕が跳びはねる理由」の見どころ

2021.04.07

■連載/Londonトレンド通信

 日本の少年による著作を基に制作され、サンダンス映画祭での観客賞、英国インディペンデント映画賞の最優秀ドキュメンタリー賞など多数の映画賞を受賞した『僕が跳びはねる理由』が公開中だ。

 基になっているのは、2005年、東田直樹が13歳で自身の内面を表したエッセイ『自閉症の僕が跳びはねる理由』(2007年発行)。2013年には、英人気作家デイヴィッド・ミッチェルと妻ケイコ・ヨシダによる英訳本『The Reason I Jump』になり、現在では世界的ベストセラーだ。ミッチェル、ヨシダ夫妻には自閉症の息子がいて、息子の行動への疑問の答えを東田の本に見出し、世界中の自閉症の子を持つ親に届けたいと訳したものだった。

 その本を、やはり自閉症の息子がいるプロデューサーのジェレミー・ディア、スティーヴィー・リー夫妻が映画化した。監督を務めたジェリー・ロスウェルには、自閉症のメンバーがいるバンドについてのドキュメンタリー作品などもある。

 言ってみれば、自閉症者とその近くにいる人々によって制作された映画だが、内輪で共感しあうものではない。高評価の理由はむしろ逆、自閉症ではない人に、自閉症であることがどういうことか、わからせる、体感させることだ。

 一般には背景として見過ごされがちな所に焦点があたり、鮮明に大きく迫ってくる様が、音と映像で表現される。朗読に合わせて流れる映像中の子供は、今は大人になっている東田本人ではなく、日英ハーフの自閉症の少年ジム・フジワラだが、やはり東田なくしてはできなかった映画だ。朗読される文章が、とてもわかりやすく的確なのだ。だからこそ、映像化できたのだろう。例えば記憶の違いを、自閉症でない人にとっては過去から現在へと線のようであるらしいのに、自分には古いものも新しいものも脈絡なくランダムな点のようだと表す。

 東田の本からは、時に不可解とも思える自閉症者の行動の理由は得られるが、新たな疑問も浮かぶ。自閉症はコミュニケーションが上手くできないのが主症状では?そういう人が、言葉をこれほど自在に操る?

 イギリスだけでなく、各国を撮影して回ったこの映画は、そんな疑問にも答えてくれる。アメリカに、文字盤を使って会話する自閉症の2人、ベンとエマがいる。2人は、文字を指して言葉を紡ぎ、当意即妙な受け答えをする。

 声を発してのコミュニケーションが難しい=言葉を操れない、ではないのだ。文字盤を使った会話でも、エマは少し辛辣な感じ、発声でのコミュニケーション同様、それぞれのキャラクターがにじむのも面白い。

 アフリカやインドも巡るこの映画からは、各人のキャラクターの違いだけでなく、お国柄や文化の違い、自閉症者を囲むそれぞれの国の状況が透けて見えるようでもある。

 イギリスから登場するのは、プロデューサー夫妻の息子ジョスだ。ジョスが何かに気を取られている時、彼には違った世界が見えていることが、もう観客には想像できる。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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