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ホームから人が転落!車内に煙が!緊急時に対応するためのJR九州の研修施設「安全創造館」を体験

2021.04.05

社会の一員として生活していく上では、守らなくてはならないたくさんの「ルール」が存在する。そのルールを破ってしまうと、どうなってしまうのか。人命を預かり、社会を繋いでいる「鉄道」の世界ではルール違反は大事故につながりかねない。また、鉄道を利用している時、もしあなたが万が一の事態に遭遇したら!? 今回はそんな鉄道の「安全」にまつわるお話をしていこう。

「ルールを守る」は全ての基本!

10種類を超える観光列車「D&S列車」や、最近では新幹線の車内に多数のライトを搭載し、みんなの願いごとを叶える「流れ星」にした「流れ星新幹線」など、ほかの鉄道会社とは一線を画す企画力が魅力のJR九州。数々のユニークな試みも当然、安全運行が確保されてこそ意味があるし、観光列車も心から楽しめる。

「安全」は鉄道にとって、最も優先される重要事項である。JR九州では2021年3月に北九州市門司区にある社員研修センターへ新たに「安全創造館」を新設。これまでにも同様の施設はあったが、面積にして約3倍広くなり、よりリアルに異常時対応が研修できる施設に生まれ変わった。

ミュージアムのような作りのJR九州「安全創造館」

こちらの施設では過去にJR九州で発生した事故をはじめ、鉄道史に残る大事故などを当時の新聞記事や写真、イラストを活用してJR九州の全社員および鉄道業務に関わるグループ会社社員の研修が行われている。なお、ここは社員向けの研修施設で一般には開放されていない。

エントランスに書かれた車両のイラストは実物大になっており、鉄道車両がいかに大きいものかを視覚的に体感できる。また、運転士の視界も描かれており、運転席から自分がいかに見えていないかを学習できる。こうした「死角」を意識するということは鉄道車両に限らず、僕らの日常生活でも車の運転などに役立ちそうだ。

エントランス部分の実物大イラスト。「建築限界」と呼ばれる建築物などが守るべき車両までの「余白」や運転士の視界が描かれている

館内に入ると大きく書かれた「2.22」の文字が目を引く。これはJR九州が発足して以来、最大規模事故である「鹿児島本線列車追突事故」の発生日だ。2002年2月22日に発生したこの事故はJR九州社内では「2.22事故」と呼び、特に大切に向き合うべき事故となっている。

この事故の原因は運転士のちょっとした思い込みと誤解から生まれた「ルール違反」だった。鉄道を走らせる上では信号や速度、標識など全てに細かくルールが定められているが、その中には過去の悲惨な事故から生まれたものも少なくない。

私たちの普段の生活のルールにも「守らないといけない理由がある」からルールはある。「ちょっとくらいなら……」という油断が大惨事に繋がってしまうこともあるわけだから、新年度を迎えた今、もう一度気を引き締めたいところだ。

JR九州でも最大の事故となった「2.22事故」

当時の該当列車に乗務していた乗務員のインタビューも教材となっている

決して忘れてはならない向き合うべき被害者の声も掲示されている

踏切に車が! ホームから人が落ちた! そんな時あなたが取るべき行動は!?

歴史に残るような大事故に遭遇することは、そう滅多にはないが、身近でも次のような場面なら遭遇する可能性は十分ある。そんな時あなたならどうする?

新設されたホームや踏切、列車内での異常時対応が訓練できる施設

1.ホームから人が転落した! そんな時、あなたならどうする?

最近ではホームドアの設置も進み、より安全に利用できる駅も増えたがまだ未設置駅も少なくない。「歩きスマホ」が原因でホームから足を踏み外し、転落してしまうケースも多い。自分の目の前でホームから人が転落してしまったら誰でも焦ってしまうが、そうした時、どういった対応がベストなのだろう。

「危ない!」と叫び、颯爽とホームから線路上に飛び降り、落ちた人をホーム上に助け上げ、何事もなく去る……想像しただけでもかっこいい光景だが、こうした動作はこの上なく危険で絶対に避けるべき行為だ。

まずすべきことは「列車を停めること」。

ホームの柱には一定間隔でSOSと書かれた「非常停止ボタン」が備えられている。これを押すと、ホームで異常事態が発生したことを音と光で運転士や駅員へ一斉に伝わるようになっている。

もし、転落者を助けようとしてあなたまで列車に接触してしまったら……そうならないためにも人命救助が目的だとしても絶対に線路上に降りてはいけない。その行為はヒーローなどではなく、実は単なる危険行為なのだ。非常停止ボタンを押した後も線路に降りてはいけない。

こうした時は「非常停止ボタン」を押そう

2.踏切内に自動車が取り残された! そんな時、あなたならどうする?

自身がドライバーでも、後続車だとしてもこんな光景を目にしたらパニックになってしまうだろう。このシチュエーションでもまず大事なのは、1.と同じく「列車を停めること」だ。

ほとんどの踏切には「非常ボタン」が設置されており、これを押すと踏切に異常が発生したことを運転士へ知らせてくれる。すみやかに通報できれば、列車と車の接触を回避できるので万が一には躊躇なく行動したい。

踏切での緊急時は警報機横の「非常ボタン」を押そう

1./2.ともに一番大切なのは「列車を停めること」だ。非常ボタンなどを使用して列車を停めるというのは、列車遅延などを招き「間違ったら多くの人に迷惑がかかってしまうかも」と誰もが怖くなる行為。ただ、必要な時は積極的に列車を停める動作を行いたい。適切な利用なら、仮になにも起こらなかったとしても罰せられることは決してない。もちろん、いたずらに列車を停めるのは厳禁だ!

「安全創造館」ではこうした非常事態をリアルに再現できる施設を新設。驚いたのが「人間の重さ」で、この施設には線路上に横たわる人形がある。これを実際に救助すると仮定して持ち上げてみたところ……も、持ち上がらない! 意識を失っている人は重く感じるとはいうけれど、ここまでとはと痛感。しかも「実はこの人形35kgなんです」と聞いて2度びっくり。大人を持ち上げることなど並大抵ではないことを実感した。

とてもではないが意識のない転落者をホーム上へ押し上げるのは難しい。こうした「体験」を積むのもこの施設での大切な研修だ

乗車中に車内に煙が! どうしたらいい!?

万が一、列車に乗っている最中に火災が発生、煙が車内に充満してきたらどうしたらいいだろうか。

まずは口をハンカチなどで覆い、姿勢を低くすることが大切。また、列車火災時は停電を併発することもある。そうした時は車端部などに備えられている非常灯を使用しよう。

こうした事態には一刻も早く車外へ避難したくなるが、乗務員さんなどの指示なく勝手に避難するのはかなり危険だ。

自分の乗っている列車は停車していても、他列車が事態に気付き停車しているとは限らない。よく運転見合わせ時など、「車外に出ないでください」とアナウンスされるのもそれが理由で、また、仮に一人でも線路内に勝手に降りてしまうと完全に安全が確認できるまで運転再開することはできず、より運転見合わせ時間が長引いてしまう。乗務員さんはあらゆる事態に備えて、日々訓練を行っているので信頼して指示を待とう。

擬似的な煙を発生させることのできる施設で避難体験

停電が発生するとこのくらいまで暗くなる

車内にも消火器や非常灯、非常ボタンなどが備えられている

訓練用のトンネルも完備。実際にレールやバラスト(砂利)も敷かれている

ちなみに乗務員さんのほかに、異常時は胸にJRマークをつけた人を見かけるかもしれない。これはJR九州の社員さんが常に携行している「JR九州緊急章」で、緊急時にJR関係者であることをひと目でわかりやすいようにアピールするものだ。

JR九州では万が一の事態ではあらゆる社員さんが事態対応に協力をすることになっている。

このマークをつけている人はJR九州の社員さんだ

VRゴーグルで労災を体験

ほかにも「安全創造館」ではVRを使用した学習機器がある。2種類あり、それぞれ「車両基地内触車事故」と「高所作業」を学習できる。

車両基地内は列車の移動も多く、構内を歩く際には要所要所で左右の安全確認が必要だったりと、事故防止のためのルールがたくさんある。高所作業も落下防止のための「安全帯」の着用などのルールが存在する。もし、「ちょっとくらい大丈夫」とルール違反をしていたら……という事態をVRでリアルに体験できるのだ。正直いって本当に恐怖を感じるほどリアルで、思わず顔が青ざめるような展開も……。

VRを用いた学習装置。リアルさに思わず怯えた

安全は創られるもの

現在、こちらの施設では全社員の安全教育が実践されており、都度テーマを決め2年から2年半ほどかけて全関係者に研修が行われていく。

安全創造館館長の遠藤理恵さんは「安全とはそこに元々あるのではなく、私たち自らが創り出していくものです。そのために一つ一つのルールを全社員がきちんと守り、積み重ねていくことが欠かせません。それを学習するのがこの『安全創造館』です」と語る。

博物館のような綺麗で見やすい館内は「理解度を深め、また集中して学習できるようにする工夫」とのことだ。

ルールを守ったり、研修を活かして事故を未然に防いだケースも紹介されている

JR九州安全創造館館長 遠藤理恵さん

異常時には躊躇なく列車を停めること。そうすることで利用者の僕らでも自身を危険に晒すことなく誰かを助けることができる。そして定められたルールを守ることの尊さを改めて感じた。

取材・文/村上悠太

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