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未来シナリオの実現に向けた東京工業大学の研究とパートナー企業との共創「DLab Dialog Day Spring 2021」【後編】

2021.03.28

※画像:Dlab公式サイトより

東京工業大学が2018年9月に設立した「未来社会DESIGN機構(以下、DLab)」。社会の一員として、30〜50年先の未来社会をデザインすることをコンセプトに掲げさまざまな取り組みを行っている。

2021年3月6日には、オンラインイベント「DLab Dialog Day Spring 2021」を開催。コロナ禍における一年の活動内容の紹介に加え、同大学に在籍する学生の発表、研究者やパートナー企業とのトークセッションも行われた。前後編に分け同イベントの様子(後編)を紹介したい。

前編はこちら

DLabチャレンジ

※画像 東京工業大学公式サイトより

DLabでは、「DLabチャレンジ」として研究支援を積極的に行っている。「ありたい未来のシナリオ(タイトルと概要)」「変化のポイント」「技術的・社会的な課題」「大学に期待される役割」の4つの要素から構成される24の「未来シナリオ」の実現に向けた研究を募集。本年度は18件の募集のうち4件が採択された。それらの研究内容の要点を紹介したい。

東京工業大学 工学院 渡辺義浩准教授「機械視覚像の実世界へのリアルタイム重畳投影の創出:人間の知覚限界の超越と未来社会創造への貢献」

私たちが目で見ている光(可視光)は、波長域のごく一部。そのため、通常は近赤外や中赤外、テラヘルツ波といった波長を見ることができない。渡辺義浩准教授は、「機械視覚像の実世界へのリアルタイム重畳投影の創出:人間の知覚限界の超越と未来社会創造への貢献」と題する研究で、そうした目に見えないものなどを知覚する「知覚限界の超越」を目指している。

【研究のポイント】
・目に見えない波長を読み取るカメラで知覚の拡張し、「新しい視覚」を手に入れる。
・見ただけで化合物を特定できる「物質同定」が可能に。
・動植物がどう感じているのかを目で見て共感できる。
・コロナウイルスのような目に見えないリスクも可視化。
・動いているものや顔にプロジェクションマッピングのような映像投影ができる。
・質感の操作により「素材が変わったかのように」見せることも可能。
・医療分野では血管の透視も可能に。

【渡辺准教授のコメント】
「カメラの方はインフラの検査に有効視されており、本来、構造物は破壊しないと内部がわからなかったのですが、それが透視できるようになります。さらに生物、例えば牛の健康や興奮状態もわかる可能性があるでしょう。今は彼らと言葉でコミュニケーションができませんが、体の表面から見て取れるようになれば、第一産業にも役立てるのではないかと考えています」

東京工業大学 工学院 遠藤玄准教授「エッセンシャルワーカーの在宅勤務を可能にするロボット遠隔制御システムの探求」

ロボット工学を専門とする遠藤玄准教授は、「エッセンシャルワーカーの在宅勤務を可能にするロボット遠隔制御システムの探求」と題する研究を行っている。遠藤教授が開発した、従来よりも長いアームを持つロボットは、遠隔による操作が可能。福島第一原発での廃炉作業にも活用できるという。また、細かい動作が可能なロボットは、どうしても人の手に頼らざるを得ない食品産業(お弁当の盛り付けなど)における課題解決にも期待されている。

【研究のポイント】
・コロナ禍においてテレワークが求められているが、対応できない(手作業が必要な)職種がまだまだ存在する。
・特に食品業界では、衛生管理の観点、労働環境の観点から「一部屋隔てて作業ができる」だけでも価値がある。
・それらの業種において「ロボットを遠隔で操作することが仕事」になれば、エッセンシャルワーカーの在宅勤務も可能に。
・ロボットは東京にあるとしても、地方や外国からでも働ける。

【遠藤玄准教授のコメント】
「現在、遠隔制御ができるような高性能なロボット・技術には高いコストがかかっています。それらは車で例えれば、F1を目指すような研究です。私はそうではなく、既存のもの(ソフトウェアなど)でもある程度使える、実用的なシステムを作りたいなと思っています」

東京工業大学工学院 ケイティー・シーボーン准教授「Exoskeleton for the Mind(Elemi):Augmenting Metacognition with AI/心の外骨格(エレミ):AIによるメタ認知の増強」

ケイティー・シーボーン准教授は、心の外骨格「Elemi(エレミ)」の開発によりメタ認知を増強させる研究を行っている。「メタ認知」とは、自分の認知活動を客観的にとらえる、つまり、自らの認知(考える・感じる・記憶する・判断するなど)を認知すること。A Iベースの知的支援システムにより、メタ認知の増強を図り、情報社会における日々の課題を解決することが目的だ。

【研究のポイント】
・Elemiにより日々、infodemic(インフォデミック:誤った情報、不正確な情報が社会に影響を与えること)に備えることができる
・人々が「より良い判断」ができるようにサポートしてくれる
・認知のバイアスや感情的な反応、メタ認知スキルをトレーニングできる

東京工業大学物質理工学院 山田桂太准教授「アイソトポミクス健康診断法の開発」

山田桂太准教授は、医療機関を受診せずとも自宅で体の状態が測定できる「アイソトポミクス健康診断法の開発」を行っている。呼気や尿などの代謝物に含まれる物質を機械で測定することで、睡眠中やトイレで健康状態を測定できるという内容だ。

【研究のポイント】
・呼気や尿に含まれる物質を自動的かつ日常的に計測することで、自宅にいながら自動的に健康維持が図れる。
・測定された体の状態は医療機関に送られ、適切な食事が提案される。
・糖尿病、がんの早期発見につながる。
・「アイソトポミクス」という新しい代謝解析手法の創出を目指す。

Dlabパートナーズ

Dlabは、企業と接点を持つ場を作ることにも力を入れている。その取り組みが「Dlabパートナーズ」。所属や立場を超えて、自由にアイデアを出し合えるオープンな場を提供し、これからの未来をともに考えている。今年度は7社のパートナー企業が参画し、本格始動した。

【パートナー企業】※入会順
ソニー株式会社/旭化成株式会社/日本電気株式会社/日本ユニシス株式会社/マツダ株式会社/株式会社インスパイア/キュリアスキャピタル株式会社

イベント当日には3社4名が、参画した動機やこの一年の活動で得られらものについて語った。

旭化成株式会社 研究開発部門 田口さん

【田口さんのコメント】
「DLabのみなさんと意見交換をさせていただけるのが、とても貴重な体験です。社内だと技術系開発者が中心の議論になってしまい、意見や視点が偏ってしまうことがあるため、『東工大の先生方からも多様なご意見を伺いたい』という思いで参画させていただきました。異なる分野の企業の方とも意見交換でき、私たちだけでは気づけない視点も得られています」

旭化成株式会社 研究開発部門 辻さん

【辻さんのコメント】
「DLabパートナーズに参画した理由の一つに、議論の多様性を持ち込みたかったというのがあります。マインドセットを変える、違う目線があることに気付く良いきっかけになったと思っています」

日本電気株式会社 福田さん

【福田さんのコメント】
「未来の構想を練るという点で、リベラルアーツの先駆け的存在である東京工業大学から、知見を得ることが重要だと考えました。また、技術や研究を社会に落とし込む実験をするとき、パートナーを集めることができないかと思いもあり、参画させていただいております。今後も一緒に活動を行っていきたいです」

マツダ株式会社 楠さん

【楠さんのコメント】

「今、自動車業界は100年に一度の変革期と言われています。それに加えコロナウイルスの存在で、先が見えない状態です。将来の人がどういう体験を欲しているのか、未来に対する課題認識があります。お客様の人生に寄り添うために、どういう社会になっていくのかを考えたいと思い、DLabに参画させていただきました」

DLabは「研究」だけにとどまらず「社会に実装するまで」を目指す場

※画像:Dlab公式サイトより

前後編にわたり、オンラインイベントをレポートしてきた。DLabの活動は、これからの未来を生きる学生たちの発表(授業への展開)、研究者たちの情報発信(研究者リレーインタビュー動画「STAY HOME, STAY GEEK〜 お宅でいよう 〜」)、研究支援、企業とのパートーナーシップと、大学でしかなし得ない「接点的役割」を果たしていることが良くわかる。

「大学は研究だけ。企業は利益のためだけ」という枠にとらわれず、ありたい未来をさまざまな人と共有しながら、それに向かって協働していくDLabの活動に今後も注目したい。

取材・文/久我裕紀

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