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東京工業大学の学生と研究者は逆境で何を考えた?コロナ後の世界を変える新たなアイデアが集まった「DLab Dialog Day Spring 2021」【前編】

2021.03.27

※画像:Dlab公式サイトより

東京工業大学が2018年9月に設立した「未来社会DESIGN機構(以下、DLab)」は、社会の一員として30〜50年先の未来社会をデザインすることをコンセプトに掲げ、さまざまな取り組みを行っている。

2021年3月6日には、オンラインイベント「DLab Dialog Day Spring 2021」を開催。コロナ禍における一年の活動内容の紹介に加え、同大学に在籍する学生の発表、研究者やパートナー企業とのトークセッションが行われた。前後編に分け同イベントの様子(今回は前編)を紹介したい。

Dlabの取り組み

DLabは学生や企業、公的機関を含めた多様な人々と「ありたい未来」を共に考える組織。研究への支援や企業とのパートナーシップに加え、授業への展開も行っている。ありたい未来の社会を描いた「東工大未来年表」、2030年からの「未来シナリオ」を作成した上で、未来と研究を結びつけ、それらを社会に実装していくことが目的だ。

昨年春にはワークショップの開催を予定していたが、コロナ禍により断念。今年は「DLab Dialog Day Spring 2021」として、オンラインでイベントを開催した。

東工大の学生たちが描く未来

イベント当日、はじめに行われたのが「未来社会デザイン入門」のオンライン授業に参加した学生たちによるプレゼンテーション。「2050年、こんな未来に暮らしたい」という未来新聞の特集を作る内容だ。

受講していた学生の投票によって選ばれたベスト3のチームが、それぞれ想像力に富んだ興味深い発表を行った。学生たちは〝自分たちがありたい未来〟をどのように見据えているのだろうか。

【8班】Memoryとメモリー

心臓のペースメーカーをはじめ、体内にセキュリティ用のマイクロチップを埋め込むなど、世界的に電子デバイスを取り入れる例は徐々に増えてきている。「Memoryとメモリー」と題した発表は、2050年には体内デバイスが一般化し、神経系との繋がりにより記憶のデジタル化が実現しているのではないかという内容。

【要約】
・2050年には無線で記憶をアップロードしたり、ダウンロードしたりすることが可能になる。
・ただし〝学び〟は重視され、教育現場では使用されない。デバイスは成人後に埋め込む。
・デジタル化がさらに進み、それに伴いおうち時間も増加。
・五感を共有できる未来版YouTube「MemoryTube」が話題に。
・医療分野では医者と痛みを共有できるようになり「言葉で痛み伝えるもどかしさ」が解消される。
・病気の原因解明も容易になり、さらに適切な治療が行えるようになる。
・脳からデバイスに指令を送ることで、筋ジストロフィーや後遺症による麻痺などがある人でも体が自由に動かせるようになる。
・記憶喪失の人の記憶を復元したり、うつ病の原因となった記憶を消去したりすることも可能に。

【15班】香りが伝わる社会

「香りが伝わる社会」の発表は、2050年にARデバイスの普及率が85%を超える社会を前提に、眼鏡型(もしくはコンタクト型)のデバイスからの電気刺激により〝匂い〟を共有できるようになるのではないかという内容。香りには感情を動かす力、つまり生活を豊かにする可能性がある点に着目した点が興味深い。

【要約】
・2050年、電気刺激を用いて匂いや味を伝える技術が普及。ARの没入感もさらに向上する。
・「画像・音声+香り」をシェアできる新たなSNSが誕生。データ化された香りがARデバイスを通して楽しめるようになる。自分が作った香りや、その場の香りを他人とシェアすることも可能に。
・写真や言葉だけでなく嗅覚に訴える「香り付き広告」が普及。日々〝飯テロ〟の恐怖にさらされることに。

【10班】網膜投影技術

「網膜投影技術」の発表は、人の視覚に焦点を当てた内容。カメラの映像を網膜に直接投影する技術を用いて、さまざまな社会課題を解決するというものだ。発表者によると、2050年にはAR、VRなどディスプレイに投影するタイプのデバイスは「過去のもの」になっているかもしれないという。

【要約】
・ディスプレイ型デバイスは解像度に限界があるが、網膜投影の解像度は無限大。
・2050年には8Kを超える画質を実現。
・医療分野では、この技術が失明した人の視力回復に役立てられる。全世界1,600万人の失明者を救える可能性も。
・刺激的な画像を投影させることで神経を刺激し、運動をしなくても脳機能を活性化できるようになる。
・網膜投影により室内の柄や外の風景を自在に変えられるように。日本家屋、西洋風、昔住んでいたい部屋など、自分好みにパーソナライズできるスマートハウスが誕生。
・味覚を変化させる食器により「豆腐をプリンに変える」など、〝食べたように感じさせる〟技術が発達。好きなものが好きなだけ食べられる時代に。
・それにより肥満や糖尿病といった生活習慣病の改善、世界中の健康寿命の向上に繋がる。

研究者リレーインタビュー動画「STAY HOME, STAY GEEK〜 お宅でいよう 〜」

左)東京工業大学リーダーシップ教育院,リベラルアーツ研究教育院 中野民夫教授
右)東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長 リベラルアーツ研究教育院 伊藤亜紗准教授

DLabは、2020年5月28日から8月28日までの4か月間、公式YouTubeチャンネルで「STAY HOME, STAY GEEK〜お宅でいよう〜」と題する47本の研究者インタビュー動画を公開。東工大の研究者がコロナ禍で何を考えたのかを知れる、貴重なインタビューだ。GEEKは〝技術オタク〟のようなニュアンスで用いられる言葉だが、今回敢えて、東工大の研究者たちに敬意を評し「GEEK」という言葉を使ったという。

伊藤亜紗准教授は「この企画は、私たちにとっても研究を考え直すいい機会になりました。コロナによって発見した研究テーマもありましたし、紹介性、リレー形式のインタビューにしたことで、大学という組織を超えたボトムアップ的な人間関係で、連携しながら大きなテーマに向かっていくんだ、という姿勢が見えたのがとても良かったです」と語った。

【参考】#48 総括版前編「47人のGEEK(ギーク)たち-インタビュー総集編-」Tokyo Tech DLab "STAY HOME, STAY GEEK" 研究者インタビュー

オンラインイベントでは、リレーインタビューに登場した2組4人の教授陣が、「STAY HOME, STAY GEEK〜お宅でいよう〜」に参加した感想や、コロナ禍での研究について振り返った。

村田涼教授×大橋匠教授

東京工業大学 環境・社会理工学院 村田涼教授

【村田教授のコメント】
「東工大には1,000人ほどの先生がいますが、その中の47名のさまざまな視点からの話を聞けたのが面白かったです。十人十色ならぬ〝千人千色〟。その振れ幅、多様性がとても面白いと感じました。『どんなに技術が進歩しても、私たちの身体感覚が重要』など、多様性の中にも共通項も感じ取れたのも発見でした」

#9 村田涼「五感を通してしなやかに周りと付き合える建物を」× 中野民夫 Tokyo Tech DLab "STAY HOME, STAY GEEK" 研究者インタビュー

東京工業大学環境・社会理工学院 大橋匠教授

【大橋教授のコメント】
「この企画を通して、研究がとても優雅な時間だなと再認識しました。広大な知識の海を泳ぎながら、誰もまだ見つけていない島に名前をつけていくような感覚。その海に漂っているのがとても心地よかったです」

#19 大橋匠「畜産、生活、危機の時こそオルタナティブを」× 伊藤亜紗 Tokyo Tech DLab "STAY HOME, STAY GEEK" 研究者インタビュー

桑田薫副学長×多久和理実講師

左)東京工業大学 副学長(研究企画担当)科学技術創成研究院 桑田薫特任教授
右)東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 多久和理実講師

【多久和講師のコメント】
「『ポストコロナの社会、ありたい未来を語って欲しい』とリクエストをいただいた時、私の研究している歴史とは相性が悪そうだけど、引き受けて大丈夫だろうかと悩んだのですが、結果的に自分なりに科学史を通して考えられることを言語化してみる貴重な機会になりました」

【桑田薫副学長のコメント】
「多久和先生のお話の中で、特に歴史観、歴史の見方の部分で触発される部分がありました。未来は、歴史の積み上げでもあります。過去にも『多様な事実』があり、違う局面、違う価値で切り取ると、また違った見え方がある。そのことを教えていただきました」

#36 多久和理実「困難な時代だからこそ改めて歴史を考える」× 桑田薫 Tokyo Tech DLab "STAY HOME, STAY GEEK" 研究者インタビュー

逆境から生まれる発想

学生たちによる発表や研究者のセッションを視聴して印象的だったのは、コロナ禍という逆境の中にありながらも、そこから新たな発想を生み出そうとする学生と研究者たちの〝強さと熱意〟だった。コロナ禍においてはしばしば、「日本は遅れている」という言葉も飛び交っていたが、明るい未来を築き上げていこうとしている彼らの話を聞き、日本の底力を垣間見ることができた。

47本のリレーインタビュー、スペシャルインタビュー、振り返り対談の動画は、YouTubeの東京工業大学公式チャンネルから視聴できる。これからの日本の在り方を考える上で、きっと多くの人に参考になるはずだ。

後編へ続く!

東京工業大学公式YouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/c/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E5%A4%A7%E5%AD%A6/featured

取材・文/久我裕紀

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