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知ってる?毎年ノーベル賞候補に挙がるキーテクノロジー、有人宇宙活動のための多孔性配位高分子「PCP」

2021.03.29

アポロ計画から約50年、アメリカを主導とするアルテミス計画や中国が主導するILRS計画など、人類が再び月を目指すというニュースを多く耳にするようになったと思う。他にもVirgin Galacticなどのサブオービタル宇宙旅行、Gateway FoundationAxiom Space などの宇宙ホテルなどのニュースも盛んだ。日本でも前澤友作氏が、月旅行の同伴者8名を募集した話題も先日のこと。これらは全て、宇宙へ“人”を送り込む計画である。この実現には、どんなテクノロジーや製品が将来必要とされるだろうか。今回は、そんな将来の有人宇宙活動のキーテクノロジーを有するAtomisという日本のすごいベンチャー企業を紹介したいと思う。宇宙ベンチャーというカテゴリに属さないベンチャーでなくても、宇宙ビジネスの分野で活躍が期待できるすごいテクノロジーを持ったベンチャーの存在を紹介したい、そんな気持ちで筆者は執筆している。

京都大学発ベンチャーのAtomis!ノーベル賞候補に毎年挙がる新素材「多孔性配位高分子」とは?

まず、Atomisを紹介しよう。Atomisは、多孔性配位高分子PCPに特化した京都大学発のスタートアップベンチャーだ。代表取締役CEOは浅利大介氏で、京都大学で金属錯体化学を専攻した後、アベンティスファーマ、サノフィ・アベンティス、日東電工を経て現職に。現在までに5.3億円の資金調達に成功している。

写真は左から浅利大介氏(Atomis CEO)、北川進氏(Atomis 科学顧問)、片岡大氏(Atomis COO)、樋口雅一氏(Atomis創業者) (出典:株式会社Atomis)

また、Atomisには、北川進氏も科学顧問として参画している。実は、この多孔性配位高分子PCPは、京都大学高等研究院 物質細胞統合システム拠点、拠点長・特別教授でもある北川進氏が提唱した新素材だ。北川進氏は、多孔性配位高分子PCP研究の先駆者であり、世界的な科学者で、これまでに年間9000報を超える文献が投稿されるような一大テーマとなっており、北川進氏は、毎年ノーベル賞候補に挙がっているのだ。多孔性配位高分子PCPでマテリアル、ライフサイエンス、エネルギーなどの分野で事業展開をしている。

では、多孔性配位高分子PCPとは何だろうか。初めて聞いた方も多いと思う。多孔性配位高分子とはPCP(Porous Coordination Polymer)といい、別名、有機金属構造体MOF(Metal Organic Framework)とも呼ばれる。

この多孔性配位高分子PCPは次のような特徴を持つ。

①金属イオンや有機分子を合成することで、ナノレベル、オングストロームレベルの秩序だった穴が空いた材料を自由設計することができる
②金属イオンと有機分子の結合が柔らかいため、まるでスポンジを絞った時のように孔を開いたり閉じたりすることができる

つまり、自由な形の単位格子を作ることができ、その穴に選択的に原子や分子などを挿入ことができるので、様々な機能を持った材料を作ることができるのである。夢のような素材だ。

では、この多孔性配位高分子PCPの特徴を活かすことで、例えば、どのようなことが可能になるのだろうか。特徴を活かすことで、さまざまなガスを吸着したり貯蔵したり、無数の孔の中でこれまで不可能だった高分子を作ったり、新しい触媒反応を起こしたりすることが可能となるのだ。 例えば、二酸化炭素分離や湿度制御、燃料電池のセパレーター、高効率の光触媒、食品への香り付や除去、食品などの腐敗防止などの用途があるという。

高圧ガス容器の産業の課題を解決するAtomisの小型・軽量ガス容器「CubiTan」

Atomisは、「CubiTan」という製品を発表している。このCubiTanのすごいところは、一辺が約30cmの立方体の大きさのガス容器で、高さ150cm、重量60kgの高圧ガスボンベと同量のガスの貯蔵を目指している点にある。実は、このCubiTanの重量は約10kgと軽量だ。将来の物流がドローンや配送ロボットなどの自動化の際のメリットもある。さらに、GPSなどの位置情報、圧力センサ、温度センサ、SIM、ワイヤレス充電といったIoTを搭載することで、リモートで所在・在庫管理、ガスの残量、漏洩の管理などが可能になるという。高圧ガスボンベの産業ガス業界では、物流・運搬における労働者の高齢化が進んでおり、また高圧ガスボンベ自体の価格が安いため、産業自体にイノベーションが起きず、シュリンクしている産業自体の課題を解決するすごい製品だ。

ゴールデンウィーク明けより市場にて実証実験を行うCubiTan β版 (出典:株式会社Atomis)

このように、多孔性配位高分子PCPは、エネルギー、環境ソリューション、食品、医薬品、電子部品、電機、建材、化学、半導体、宇宙開発などのさまざまな産業界での検討が進められているのだ。

Atomisは、ノーベル賞級のテクノロジーを活用し、産業が有する課題を解決する事業を展開しているのだ。

多孔性配位高分子PCPが活用される未来の有人宇宙活動シーンとは?

多孔性配位高分子PCPは、宇宙ビジネスの分野でどのように利用される可能性があるだろうか。

まず、思いつくのは、”空気”だろう。宇宙空間には、空気がない。真空状態だ。そのため、人が宇宙にて生命活動を行うためには、空気が必要不可欠だ。

ちなみに、国際宇宙ステーションISSへの空気の供給は、例えば、米国の商業補給船や日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)によって小型の酸素タンクと窒素タンクを運搬して、国際宇宙ステーションに設置している。必要に応じてバルブを開けることで国際宇宙ステーションISS内に放出しているのだ。

ちょっと、小型、軽量化、IoTを備えた「CubiTan」を思い出してほしい。これは、将来の宇宙ホテルビジネス、スペースコロニー、月面都市にも適用できる話だ。また、宇宙飛行士が国際宇宙ステーションISSの船外で活動する宇宙船外活動EVAの酸素ボンベに採用された際にもメリットが、小型、軽量化できるため、大きいだろう。

他にも、二酸化炭素CO2の除去に使われるだろう。NASAでは、アメリカのスタートアップNuMat Technologiesと多孔性配位高分子PCPでの二酸化炭素回収システムの研究を実施しているが、人の呼吸によって放出されるCO2は、濃度が低ければ良いが、高くなると血中酸素濃度が低くなり、倦怠感、頭痛、耳鳴りなどの症状が出てくる。最終的には生命の危機ともなりうる。そのため、閉鎖された宇宙ホテルなどでは、CO2の除去も重要なのだ。これにも多孔性配位高分子PCPの特徴である様々なガスを吸着、貯蔵できる機能によって解決できるだろう。また火星にはCO2が大量に存在することが知られている。これらのCO2を炭素源に多孔性配位高分子PCPが持つ変換できる機能(触媒機能)を活用すればプラスチックや燃料といった有機物を生産することも可能であり、宇宙で貴重な有機物製造が可能になるかもしれない。他にも宇宙ホテル内の匂いなど空気清浄、湿度コントロールにも活用できるだろう。また宇宙食の保存や宇宙食への香り付け、味付けにも利用できそうだ。

また、多孔性配位高分子PCPで、現在の宇宙用半導体部品よりも宇宙放射線に強い部品が作れるのではないか、現在の宇宙用太陽電池よりもさらに宇宙放射線に強い高効率な太陽電池も作ることができるのではないか、そんなことも筆者は考えている。日本としても宇宙空間に巨大な太陽電池パネルを広げて発電し、太陽光エネルギーを電気に変換した後にマイクロ波で地球へと送電する宇宙太陽光発電システムSSPSや月面都市の発電としての巨大な太陽光発電システムなどだ。

他には、月面都市でのシーンでは、貴重な水を貯蔵するという点にも役立てられるのではないだろうか。月の南極地域には、水が埋蔵されていることが期待されているが、水資源を掘削する他にも、月の砂であるレゴリスから水や酸素を抽出する研究もある。そして、CO2を多孔性配位高分子PCPで吸着、貯蔵して、水を加えて触媒機能を活用してメタノールという燃料も作ることができる。また、水素と酸素をコントロールできれば、電気分解で水も作ることができるし、燃料電池にも役立てることができる。月などの宇宙でのエネルギーインフラに必要不可欠な素材となりうるのではないだろうか。

CEOの浅利大介氏は、将来の宇宙開発で多孔性配位高分子PCPの利用について次のように語る。「ガスを制御することが宇宙ステーションでの長期滞在や、惑星改造の第一歩と捉えています。その際にガスを自在に操れる多孔性配位高分子の技術は必要不可欠な物になると考えています」

宇宙ビジネスで考えられる未来の利活用シーンを挙げてみたが、将来、多孔性配位高分子PCPが宇宙用としての信頼性・品質を保有することで、将来に必要不可欠な素材になり得るだろう。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は各メディアの情報発信に力を入れている。

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