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初診解禁で変わるか?日本でオンライン診療が進まない理由

2021.03.21

新型コロナウイルス感染拡大により、初診のオンライン診療が解禁になった。しかし、オンライン診療は日本ではまだまだ進んでいないのが現状だ。その背景について、婦人科特化型オンライン診察アプリなどを開発提供する株式会社ネクイノの代表に、オンライン診療が日本で進まない背景や、今後、進むと予想される領域を聞いた。

オンライン診療の現状課題とは?

2020年4月13日に特別措置として、初診オンライン診療が解禁された。

初診以外のオンライン診療は、すでに段階的に解禁されてきていたが、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、感染予防のための特別措置として、新型コロナの流行が終わるまでの間、これまで認められなかった初診の患者に対しても、電話やビデオ通話を使った診療が認められた。

これを契機に、オンライン診療が進んでいくのではないかという見方もある。

しかし、日本のオンライン診療には課題があるという。医療機関の経営改革や新規事業開発を専門領域とする株式会社ネクイノ代表取締役の石井健一氏に話を聞いた。

【取材協力】

株式会社ネクイノ代表取締役 石井健一氏
薬剤師・経営管理学修士(MBA)
1978年生まれ。2001年帝京大学薬学部卒業後、アストラゼネカ株式会社入社。2005年からノバルティスファーマ株式会社にて、医療情報担当者として臓器移植のプロジェクトなどに従事。2013年関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科卒業。2013年医療系コンサルティングファーム株式会社メディノベーションラボの代表取締役を経て、2016年株式会社ネクイノ(旧ネクストイノベーション株式会社)を創設。医療機関の経営改革や新規事業開発が専門領域。

「現状の課題は、いち早くオンライン率を上げるということではなく、必要な人に気づいてもらうことです。例えば、『コロナ禍で治療がストップしている人』『事態が悪化していることに気づけていない人』です。憩いの場であった病院に気軽に通っていた人たちが、コロナの影響により通院を遠慮しています。そのおかげで、治療や診察を受けられていない人が多く存在しています。治療がストップすることによる影響は非常に大きいと考えており、いかにこの分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むかというところが、現状、急務ではないかと考えています。オンライン診療の普及というところに目がいきがちですが、必要なところに必要な医療DXを進めていくという目的意識が大切だと考えています」

日本でオンライン診療が進まない背景

MMD研究所が、2020年10月15日~11月2日実施した「オンライン診療に関する調査」によると、オンライン診療認知度は84.1%だったが、うちオンライン診療利用経験は18.0%に留まる。

オンライン診療が日本で進まない背景について、石井氏は次のように話す。

「オンライン診察は対面診察を補完するものなので、基本的な医療インフラが整っている日本においてオンラインでなければならないシチュエーションが限られ、通常の対面診察で多くの課題は解決できてしまう、ということがまず挙げられます。

また、主に保険診療を前提に考えるのですが、保険診療において医療機関側にオンライン診察を行うインセンティブが少ないのも課題です。多くの医療機関がオンライン化については興味を持っている状況ですが、上記も踏まえ『わざわざオンライン化しないでも』という空気が醸成されている現実もあります。医療全体の視点で見た場合、診療報酬などで医療機関にインセンティブが出る形を作らないと、オンライン診察は普及しにくいと思います。

もう一つ、日本の医療サービスは病気になった人を中心に設計されていますので、対象となる人々の年齢が高めになってしまいます。そうするとスマホを含めたデバイスへの操作性などの課題もあり、『結局リアル(対面受診)でいいや』となってしまうといった背景があります」

日本ではどのような領域からオンライン診療が進むか

日本では、どんな領域だとオンライン診療が進む可能性があるだろうか?

「現役世代の悩みや課題解決にはフィットする可能性が高いです。例えば病気にならない・病気を防ぐといった予防的な医療だったり、QOL(生活の質)を高めるための医療などです。『ニキビや肌荒れ』といった美容的な領域などもユーザーの年齢層を考えると可能性が広がります。

今年はさらにコロナ禍という特殊な状況下でもあるため、『花粉症』によるオンライン診療は2021年、飛躍的に増加すると予想できます。今や国民病である花粉症ですが、薬だけもらうということが現状はできません。そのために通院しなければならないということは、少々面倒臭さを感じることでしょう。そうした『受診できない理由がある』という分野でオンライン診療が普及していくと考えられます。

そして我々が運営する、ピルのオンライン処方サービスも『受診できない理由がある』『緊急用ピルが必要なのに土日は病院が開いていない』という声から始まっています。日本のどこにいてもピルが郵送で届きます。先日、アフターピルが処方箋なしで購入できるように準備が進んでいることが話題になりましたが、オンライン診療が進めばより安全にピルを処方することが可能になります。まず近々ではこのような分野での新しい診療体験が広がっていくのではないでしょうか」

今後は、映像技術を用いたオンライン診療の可能性もあるという。

「アメリカでは皮膚科、眼科はオンライン診療が非常に発展している分野です。映像技術が進化している現代であれば、触診を必要とせず、映像での診察が容易になっていくことでしょう。今後は血圧や脈拍をデータに取り続け、生活習慣病の早期発見という分野でも発展をしていくのではないかと考えています」

オンライン処方サービスを展開して分かった新たな課題

これまで、ピルのオンライン処方サービスを展開してきたネクイノだが、オンライン診察に関わってから見出された新たな課題があるという。

「診察の質、そのものも大切ですが、それ以上にお互いが『本人であること』『過去の診療データと連携すること』の重要性を強く感じています。物理的な距離が離れている医療機関へ受診するケースも少なくないので、『互いの本人確認をどう行うか』『診療記録をどう持ち運ぶか』というのが見えてきた課題です」

2021年3月から、事前登録により、マイナンバーカードが健康保険証として使えるようになる。その一方で、まだまだ対応していない医療機関が多い。そのような中、ネクイノはオンライン上でマイナンバーカードと健康保険証をリンクさせるサービス「メディコネクト」をリリースした。これにより、アプリがあればどこでも健康保険証、または本人確認システムとして利用できるようになる。将来的には、オンライン診療で役立つ可能性もある。

今後、メディコネクトのような「デジタル保険証」や「デジタル診察券」は普及していくだろうか?

「コロナの感染拡大によって、受療行動(受診の形)も大きく様変わりしました。選択できる医療機関が増えることは国民にとっても福音です。その際に、変わることのない一つのIDを持ち運ぶことができれば、どこでも・誰でも継続的な受療を行うことができます。こう言った世界観も、医療におけるニューノーマルなのかもしれません」

コロナ禍により、オンライン診療の初診が解禁された今、また新たな局面が生まれている。人々の関心も高まる中、今後の発展が気になるところだ。

取材・文/石原亜香利

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