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こんな描き方あり!?評価が分かれるニコラ・テスラの伝記映画「テスラ エジソンが恐れた天才」

2021.03.20

■連載/Londonトレンド通信

 3月26日公開『テスラ エジソンが恐れた天才』はニコラ・テスラの伝記映画。テスラと言えば、今ではイーロン・マスク率いる電気自動車メーカーだが、その社名の基になった発明家だ。発明王として名高いトーマス・エジソンと、ほぼ同時期に活動している。

 ちなみに、マスクは、テスラの発明を使ったから社名にしたものの、エジソンの方が好きだそう。さもありなん。起業家としても野心満々だったエジソンに比べ、自分の取り分すら頓着しないあたり変人じみているテスラだ。

 テスラが変人かどうかは解釈によるが、この映画はわかりやすく変わっている。そこをどう受け止めるかで、評価が分かれる。

 例えばこのシーン。

 エジソン(左、カイル・マクラクラン)とテスラ(右、イーサン・ホーク)のアイスクリームをなすりつけあう喧嘩。面白すぎる。ところが、この後にしれっと「これは実際には起こりませんでした」。

 ナレーションは、映画の登場人物でもあるアン(イヴ・ヒューソン)による。大富豪J・P・モルガン(ドニー・ケシュウォーズ)の娘だ。テスラに好意を抱く。

 ナレーターのアンも妙だ。登場人物がナレーターを兼ねるのは珍しくないが、よくある、成長あるいは年老いた姿で当時を振り返る、ではない。1800年代後半当時のクラシカルなドレスをまとったお嬢さんのまま、ラップトップを開き、「グーグルしてみてください」とエジソンの半分しか件数がないテスラの検索結果を示したりする。

 そもそも、脚本も書いたマイケル・アルメレイダ監督が、そういう映画作りをする人なのだ。幅広いジャンルの映画で様々試してきた。

 前作『Marjorie Prime』(2017)は、死者と生者が集うシュールなSF映画だった。亡くなった人をホログラムで出現させる、近未来を描いている。サンダンス・ロンドン映画祭で登壇したアルメレイダ監督は、技術的には既に可能と話した。実際、有り得ないSFではなく、死、記憶、記憶を抱いていく生について考えさせる映画だった。日本未公開だが、基になったジョーダン・ハリソン作の同名舞台劇は『プライムたちの夜』として上演されている。

 原作自体が亡き人のホログラムと生きている人がリビングで談笑する、まさに虚実が並ぶストーリーの前作は好評だったが、実在した人物を虚実取り混ぜて表現した今回は賛否両論となっている。

 過去作ついでにもう1本、アルメレイダ監督は、『ハムレット』(2000)でもホークとマクラクランを起用した。言わずと知れたシェイクスピア四大悲劇の1つだが、舞台を現代に移している。ホークが主人公ハムレット、敵役ともいうべき叔父にして義父となるクローディアスにマクラクランと、今回と重なる配役だ。悪役の義父と苦悩する息子だった2人が、一時期は雇い主だったエジソンとその下で虐げられるテスラになったわけだ。

 持ち味が対照的なマクラクランとホークは、お互いを引き立て合う。

 マクラクランは落ち着いた正統派の印象で、『ツイン・ピークス』シリーズ(1990-1991、2017)や『ブルーベルベット』(1986)などデヴィッド・リンチ監督作での主演は、狂気をはらんだ世界をより際立たせた。

 今回は、電気業界第一人者となったエジソンの矜持を、憎々しいまでに演じている。

 一方のホークは、『ビフォア』シリーズ(1995、2004、2013)での主人公や、『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)の父親役など、リチャード・リンクレイター監督作で本領を発揮してきた。良く言えば青年のままの、悪く言えば大人になりきれていない、不安定さ、頼りなさを感じさせる役柄がよくはまる。

 アメリカに渡ったセルビア人のテスラは、エジソンの下で働き始めるも、すぐにたもとを分かつことになる。

 その原因となった、エジソンが推し進める直流か、あるいはテスラが主張する交流か、電流戦争と呼ばれる競り合いでは、結果的に普及したのは交流で、テスラの勝利に終わった。

 だが、そこで敗れたエジソンが消え去ったわけではない。発明を続けたエジソンは、それを基に次々と起業している。私生活では、最初の妻が亡くなった後、再婚し、合わせて6人の子をもうけている。

 映画で描かれるのは、テスラが大がかりな実験に挑んだ頃まで。


 
 ところで、この映画は、実際には起こらなかったシーンを挟み込んではいるが、史実を無視した荒唐無稽なものではない。夜間の室内シーンはかなり薄暗く、当時を忠実に再現しているし、このテスラの実験シーンなど、今も残る写真にかなり近づけている。アンではないが、興味のある方は「グーグルしてみてください」。

 さて、このシーンから約40年を経た晩年のテスラについては、さらりと語られるのみだ。生涯、独身を貫いたテスラは、近隣のハトを友とし、ホテル暮らし、86歳だった最期は所持金が無かった。

(C) Nikola Productions, Inc. 2020

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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