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圧倒的資金力でチームを日本化!霜田正浩監督、松井大輔らビッグネームを集めるベトナムのサイゴンFC

2021.03.18

昨年12月に元日本代表の39歳・松井大輔がベトナム移籍に踏み切ったことで話題になったサイゴンFC。その後、浦和レッズや鹿島アントラーズでプレーした高崎寛之らJリーグ経験者が加わり、1月17日に2021年シーズンが開幕した。しかし、新型コロナウイルス再拡大によって、2月にリーグが中断。3月19日の再開に向け、再強化が進んでいる。
 その間にチームは昨季までレノファ山口で指揮を執っていた霜田正浩監督率いる新体制へ移行。さらなる「日本化」へと踏み出した。

3人の日本代表指揮官を支えた語学力を駆使し、相互理解を進める

「サイゴンFCから話があったのは、山口を退任した直後。最初は『アドバイザーになってほしい』ということで、12月末に出発し、1月10日過ぎから練習を見始めました。

 その時点ではベトナム人の前任監督がいましたが、旧正月の前にコロナによるリーグが中断。クラブの新しい事業の関係や十分な準備期間が取れるということもあり監督交代が決まり、私が新たに指揮を採ることになりました」

 就任の経緯を説明する霜田監督だが、現場スタッフは一部のトレーナーやメディカルを除き、全てベトナム人。彼らとコミュニケーションをしっかり取らなければ、いいチームを作れない。それを肝に銘じながら、異国での日々を過ごしているという。

「ベトナム人コーチたちとはつねに話をしながらプレーモデルを共有しています。私自身は山口時代に志向していたボールを持って主導権を握るスタイルを念頭に置いていますが、大輔や高崎筆頭に年齢の高い選手も多く、暑さもある。前からプレスに行き続けるインテンシティの高いサッカーを90分間続けるのは困難ですから、攻守両面のバランスを取りながら、臨機応変な戦い方のできるチームを作っていこうと考えています」

 こう語る霜田監督は、自身の武器である語学力を駆使して周囲と積極的に意思疎通を図っている。その姿勢はかつて日本サッカー協会技術委員長としてアルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチという3人の日本代表指揮官を支えた時代と変わっていない。松井も「ベトナム人選手は日本人選手をリスペクトしてくれている」と言うように、相互理解は日に日に深まり、チームの一体感も高まっている模様だ。

日本流のクラブ作りにこだわる会長の存在

 現時点で3戦終わって2021年Vリーグ4位につけるサイゴンFCだが、試合再開後は大きな躍進を遂げる可能性もある。その彼らはなぜここまで日本流のクラブ作りにこだわるのか。全てのカギを握るのが、オーナーのチャン・ホア・ビン会長である。

 1975年生まれのビン会長はオーストラリア、日本の会社で学び、ユニ・チャームに入社。花王に転職してマーケティングに長く携わった。日本在住歴は20年以上にのぼり、日本語が堪能で、Jリーグや日本代表の成長を間近で見て、サッカーの持つ力を強く感じていたという。その後、アメリカやアジアでのビジネスを成功させ、ベトナムに帰国。コンサルティングや不動産事業などを軸とした「OWI」という会社を設立。そこでビジネスパートナーたちとともに巨大な資金力を蓄え、2020年1月からサイゴンFCの共同オーナーになったのだ。

 敏腕会長の側近としてクラブ運営を支えるのが今年から副社長に就任した藤原兼蔵氏。リバプール大学出身で、横浜FCを経てFC東京入りし、長くグローバル推進部で働いていたエキスパートだ。

「ビン会長と初めてお会いしたのは昨年1月。サイゴンFCを買収してすぐに来日された時です。Jリーグを通して『クラブを視察したい』という話があり、FC東京側の窓口として私が対応しましたが、すぐ提携話が持ち上がりました。

 私として東南アジアの他クラブとの提携話がとん挫した経験があったので、金銭面を含む具体的な条件を出したところ、即座にゴーサインが出て、エアチケットが届き、2月に現地視察に行くことになりました。何を投げかけてもとにかくレスポンスが早く、話はトントン拍子に進み、4月30日に正式契約に至りました。ベトナムの入国可能日からアカデミーのコーチ1人を派遣し、私も現地入りする条件も盛り込んでいたんですが、12月1日に実行に移すことができました」

 ビン会長はなぜ迅速な意思決定ができるのか。それは巨大マネーと卓越したビジネス手腕を備えているからだ。 藤原氏は話を続ける。

「ビン会長やビジネスパートナーたちのメインビジネスは不動産業なんですが、のビジネスパートナーたちの中には香港4番目とも言われている資産家も名を連ねているそうで、とにかくお金が潤沢にある。サイゴンFCに関しては『商売』を度外視して、『まずは社会貢献』という意識が強い。現状では年間運営規模10億円強と見積もっていますが、5年分の運営費はすでに確保しているといいます。

 1つの象徴と言えるのが、ホーチミンのタンロン・スポーツセンター買収です。天然芝5面のグランド、室内練習場、筋トレルーム、プール、食堂、ホテルなどを含んだ施設を60億円で購入して全面改修。クラブの練習拠点として今月から使い始めたところです。『必要なことがあればお金は出す」と言ってくれるので、私たち運営スタッフも非常にやりやすい。凄まじい勢いを感じます」

 ビン会長は今季、①施設、②人材、③パートナーシップ、④システムとプロセス、⑤リーグ戦の結果…の5つの目標を掲げている。

 ①については、前述の通り、練習拠点を確保したが、それに続いてアカデミーの環境も整え、将来的にVリーグやベトナム代表で活躍できる人材を育成することを考えている。その土台を築くために、Jリーグで長く働いてきた藤原氏や霜田監督のアドバイスを聞き入れ、具現化に向かっているという。

 ②についても、彼ら2人や松井、高崎ら実績ある日本人選手を獲得。クラブ全体の意識改革を図っている。特に元日本代表の松井の存在価値は大きく、現地日本企業へのインパクトも少なからずある。

「『松井がいるクラブ』となると認知度が全く違う。メディアにも積極的に取り上げてもらえますし、信頼度も高まる。現地在住の日本人商社マンが『広告枠を買って企業PRするよりも効果がある』と言っていましたが、まさにそう。今後、日本企業とのビジネスも拡大していくでしょう。1月の開幕戦ではJALやENEOS(エネオス)といった大企業が看板広告を出してくれましたし、本業の方でも日本とのビジネス展開、不動産投資などが期待できる。ビン会長も大きな手ごたえを感じているようです」(藤原氏)

 ③のパートナーシップに関しても、昨年のFC東京に続き、今年2月にはJ2・FC琉球と提携。さらにはJ3のクラブとの提携も具現化する運びだ。それぞれのクラブにベトナム代表クラスの選手を送って強化し、人的交流を推進し、Jリーグのノウハウを吸収することを目指している。こちらについてもすでにメドが立っているというから、本当に動きが早い。藤原氏が言うように「即断即決」がビン会長のモットーなのだ。

 ④のシステムとプロセスについては、クラブ運営面の整備がメイン。運営会社に広報・営業・グッズ担当などを配置し、アカデミースタッフも置いてモダンな体制を整えていくことが優先課題だ。現時点では15人ほどのスタッフがいるが、彼らが仕事を覚え、組織的かつ効率的に物事を動かせるようになれば、サイゴンFCはよりJクラブに近づいていく。そうなれば理想的と言っていい。

「リーグ戦の順位は優先順位の一番最後と考えてもいいでしょう。3月19日の再開後、4月17日までに前半戦13試合のうち10試合を消化するんですが、前半戦で6位以内に入れれば、上位プレーオフに進出できる。そうなれば、ビン会長も一定の評価をしてくれると考えています。いくら発展途上のクラブとはいえ、プロである以上、結果が求められるのは確か。そのあたりは霜田監督も厳しく捉えていると思います」

 現場を預かる指揮官も結果にコミットしようという意欲はもちろん強い。

「私自身も1年契約ですから、成功をもたらさなければ先がない。貪欲に勝利にこだわるつもりです。そのためにも、ベトナム人選手の意識改革から徹底してやっています。

 2月の就任時点では練習開始直前にグランドにやってきて、全くアップもせずに動く選手が結構いました。そこで『大輔が何をやってるかよく見てほしい』と伝え、練習30分前からストレッチなどを行う重要性を植え付けました。彼らの学ぶ姿勢や勤勉性が素晴らしいこともあり1か月が経過した今は体幹強化やケガ予防のメニューをこなすことが習慣化しましたし、映像を見て戦術を細かく叩き込む作業にも取り組むようになりました。

 技術的にはまだまだで、ボールが収まらなかったり、パスがつながらなかったりもしますけど、技術の高い大輔が攻守の起点になるようなスタイルに転換して、戦えるように準備しています。泥臭く勝ち点を積み重ねられるように、方向を模索していきます」

取材・文/元川悦子

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