一度ビジネスチャットの気軽さとスピード感に慣れてしまうと、もうメールには戻れません。しかし、身勝手に使うと、むしろ生産性が落ちることもあります。
今回は300社の導入実績をふまえながら、チームの生産性を落としてしまう「ビジネスチャットの5つのNG」を説明します。
1. チャンネルの目的から逸脱した内容を話す
ビジネスチャットにはチャンネル(グループ)機能が備わっています。所属する組織、横断的なプロジェクト、同期入社、管理職など、属性やミッションが共通しているメンバーでグループを作り、情報や意見の交換を行ないます。
特定のテーマについて話し合うのが、チャンネルの存在意義です。しかし、テーマとは全く関係ない話が増えていき、本来の目的を忘れてしまうケースがあります。特定のセミナーに関する意見交換だったのに、製品に関する改善項目の取りまとめを始めてしまう……。そのようにテーマから離れて会話をするのであれば、新たなチャンネルを設けて議論すべきです。
なお、あまりにもチャンネルが多いとメッセージを見ること自体に時間がかかって、疲れてしまいます。チャンネル作成のルールをチーム内で作っておきましょう。
2. メンバーと長い文章をやりとりする
ビジネスチャットの導入企業28社にヒアリングすると「コミュニケーションがスピーディーになった」という声がほとんど。複雑な課題を複数のメンバーでスピーディーに解決しないといけない現在では、リアルタイムで会話できるチャットが特に重宝されています。
しかしながら、メールの使い方を踏襲して、効率を落とすケースもあります。その典型的が「お疲れ様です」といった挨拶です。社内のコミュニケーションの場合、過剰な気遣いは必要ありません。
ビジネスチャットでは「お疲れ様です」は不要というルールを作っておきましょう。無駄な文章をカットでき、スピード感をもってコミュニケーションができます。
3. @の後に敬称を付ける
チーム内でカジュアルな会話を楽しむ文化を作りましょう。思っていることを気兼ねなく話せる心理状態、つまり「心理的安全性」を確保できたら、出勤していてもテレワークをしていても、チームワークは絶対にうまくいきます。
そのため、ビジネスチャット上の敬語は一切不要。過剰な気遣いをすると生産性は必ず落ちます。
ビジネスチャットの導入当初は多くの企業で相手を気遣う「さん付け問題」が発生します。「@越川慎司さん」と、わざわざ宛先の後に“さん”を付けるのですが、全く必要ありません。「さん付け」をしなかったからといって、相手を見下しているわけではありません。気軽に会話することを目指して、社内のコミュニケーションを活性化させるべきです。
4.〝プレゼンス〟を隠してしまう
自分のプレゼンス(在席状態)を表示してしまうと「問い合わせがたくさん来てイヤだな」とか「プライバシーが保たれないのでは」と不安を感じる人もいます。
しかし、プレゼンスを確認してからコミュニケーションを取るのは、受け手側にもメリットがあります。帰宅後や休暇中などのオフライン時に、緊急度の低い連絡が少なくなるからです。帰社してリフレッシュしているのに急ぎでもない確認の電話がかかってきたり、オフライン時に「今、いい?」と言われたりすることはなく、オンオフの切り替えができます。
5. 時間外の応答を要求してしまう
テレワークになるとオンとオフの切り替えが難しく、時間外労働が増えるケースがあります。長時間労働を生まないためにも、オフライン(退席中)の相手からの反応を待ったり、夜間などの業務時間外に返答を強制したりするのは絶対にNGです。休みの相手に電話をかけ続けることと変わりません。
できるだけ早く仕事をこなしたい気持ちがあるのかもしれませんが、かといって時間外に応答を要求することはやめて、時間内の返答を待つようにしてください。
メールを卒業して、効率が高いビジネスチャットに移行するのであれば、ここに紹介した5つのNGを念頭に置いて、正しい使い方を身につけましょう。
ITコンサルティングのビズヒッツ社が行なった調査によれば、ビジネスチャットの利用者のうち「悩みがある」と回答したのは49.8%。最も多かったのは「会話のテンポが合わない」で、伝わりにくさや即レスに関してもストレスを感じているようだ。
越川慎司/スタッフ全員がテレワークで週休3日を実践するクロスリバーの代表。約700名のほぼ全員がリモートワークをしているキャスターの事業責任者も兼務。自著15冊で、DIMEデジタル新書『最速で結果を出す資料の作り方』(小社)が発売中。