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調理をしているシーンを見ると食欲が増すのはなぜ?

2021.03.21

 芝生に寝ころびたくなるほどの気持ちのいい快晴の午後だった。ここはまさに“都会のオアシス”だ——。

仕事に合間に“都会のオアシス”を訪れる

 寒さも和らいだ快晴の午後、“都会のオアシス”に足を運んでみた。「南池袋公園」である。日中に公園を訪れたのも久しぶりだ。たまにこうして都会のオアシスにやってきてみれば、やはり気分はすぐれてくる。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 先ほど仕事の用件1つ終えたのだが、今日はこの後もちょっとした用事がある。しかしそのアポの時間は少し先で、1時間ほど空白の時間ができてしまった。

 とりあえず乗り換え駅になる池袋までやってきたのだが、どこかのカフェに入って時間を潰そうかと考えていた矢先、公園に行ってみるアイデアが浮かんできたのだ。

 普段であれば芝生のエリアに立ち入ることができる公園なのだが、このご時世で残念ながら今は芝地には入れなくなっている。それでもこうして晴天に恵まれた午後にやって来てみれば、芝の緑が目の保養になり、気分も晴れがましくなってくる。

 芝地を囲む外周の道をゆっくり歩く。滑り台などの子ども用の遊具が設置されているエリアはウッドチップが敷き詰められていて地面がふかふかだ。

 公園内にはロッヂ風のお洒落な飲食店もあり、店に入ってコーヒーと軽食でゆっくりしてみたい気持ちもあったのだが、天気が良いこともあるのかテラス席はほぼ満席だ。見たところ店内もお客が多そうだ。芝地が閉鎖されている影響もあるのかもしれない。ここで休むのは諦めよう。

 それでも天気の良い日にこの公園を訪れることができたのはよしとしたい。ひとまずは駅のほうへ戻ることにする。どこかで遅い昼食にしてみてもよい。

 この界隈も飲食店が多いエリアだ。居酒屋もあればファミレスもあり、焼肉屋もあればうどん屋もある。男性ファンが多い某ラーメン店にはかなりの長さの行列ができている。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ラーメン店の並びには「広島の味」と書かれたボードを軒先に掲げている店もある。広島の鉄板焼きやお好み焼きを売りにした店のようである。店の扉は開け放たれているのものの、まだ準備中で開店は夕刻からのようだ。店の前を通り過ぎてさらに駅のほうへと足を進める。

 お好み焼きといえば、やはりかつて訪れた広島の旅の記憶がよみがってくる。

 一番印象に残っているのはフェリーに乗って訪れた宮島と厳島神社だが、呉の「大和ミュージアム」も実に見応えのある展示施設だった。館内に展示されている10分の1大きさの戦艦大和の模型も見事であった。

※画像はイメージです(筆者撮影)

今から食べる料理の調理風景を見ると食欲が増す

 店をやり過ごしながらさらに駅へ向けて歩く。

 広島旅行ではお好み焼きを何度か食べた。着いた初日に流川町にある有名なお好み焼き店に少し並んでから入り、ソバ入りのお好み焼きをさっそく賞味した。別の日には八丁堀にあるビルの3フロアで運営されているお好み焼き店の集合施設を訪れ、店の人が焼いてくれたお好み焼きをビールを飲みつつ楽しんだ記憶がよみがえってくる。

 お好み焼きはもちろん料理も美味しいのだが、嬉しいのはそのホスピタリティにもある。注文したメニューを目の前で手際よく焼いてくれて、差し出されたお好み焼きを熱々のままに頂くという一連の体験がお好み焼きの醍醐味ともいえるのだろう。

 思わずお好み焼きが食べたくなってきたが、調理と食事にそれなりに時間がかかることを考えると今から店を探して入店する選択はありそうもない。お好み焼きはまた今度にしよう。

 コロナ禍の中で人と人の距離が離れ、飲食店でも客席を仕切るパーテーションの設置がもはや標準化していることや、宅配サービスの革新的な進歩によって1人前の料理でもあまり気兼ねすることなく注文できるようになっていることなどもあり、ものを食べるという体験がややもすれば孤独な行為になっている傾向も見られはじめている。

 しかしそんな時代であるからこそ、目の前で作ってくれた料理を食べる体験はますます貴重になってきているともいえる。コロナ禍の中でまさに“味気ない”食事が続きがちな中、目の前で自分のために料理を作ってくれれば食欲も増せば、より美味しくも頂けるのだろう。

 そして実際、最近の研究では他者が自分のために作る調理の様子を見ることで、よりたくさんの量を食べたくなることが報告されている。たくさん食べたくなるのはもちろん、より美味しく感じられているからだ。


 研究者チームは自分で積極的に調理したり、他の人が調理するのを見たりすることの影響と、そのプロセス見ることを妨害された時の影響を調査しました。研究者たちは、これが消費される食物の量にどのように影響し、食べ続けたいという欲求にどのように影響するかを理解しようとしました。

 これを調査するために80人の女性参加者が募集され、4つのグループの1つに割り当てられました。積極的に調理する、調理風景のビデオを見る、10分間の塗り絵、何もしない(コントロールグループ)。その後、すべてのグループが料理を食べるように要求されました。

 研究者は、各参加者が料理をどれだけ食べたかを測定し、食べ続けたいという彼らの願望が評価されました。料理を積極的に調理したか、他の誰かが調理するのを見た人は、塗り絵のグループの人よりも多くを消費し、食べたいというより強い欲求を報告しました。

※「University of Surrey」より引用


 英・サリー大学の研究チームが2021年3月に「Appetite」で発表した研究では、自分で積極的に料理を作ったり、あるいは他者の調理風景を見ることで、食欲が増しその料理をより多く食べたくなることが実験を通じて確認されている。

 実験に参加した80人の女性たちは4つのグループにランダムに分けられた。その4つは以下の通りだ。

A:料理(チーズラップ)を自分で作る。
B:料理(チーズラップ)を作っているビデオを見る。
C:塗り絵を行う。
D:何もしない(コントロールグループ)。

 その後、参加者は実際にチーズラップを食べたのだが、その食べっぷりを分析すると、AとBのグループが明らかに多くの量を食べていたのである。つまり自分で料理したり、他者が料理をしているのを見ることで食欲が増していたのだ。

握ってくれる回転寿司で食欲が刺激される

 ともあれどこかの店に入ろう。駅前に通じる狭い路地に足を踏み入れると、カラフルな店構えの回転寿司店に視線が誘われた。回転寿司であれば調理時間を気にすることはない。入ってみよう。

 都市部の街中の回転寿司店ということもあり店内はオーバル状のカウンター席だけである。4、5人の先客がいたが店内は明らかにお昼のお客をいったんさばき終えたばかりという雰囲気を醸していて、店員さんたちはむしろ片付けのほうに忙しそうだった。

 店の中ほどのカウンターに着き、ひとまず湯呑みをとって粉末の緑茶を入れてからお湯を注いでひと口飲む。さて何からいこうか……。

 店内の壁には所狭しと寿司ネタの短冊が貼られていて、カウンターの目の前にもメニュー表が貼りつけられてある。レーンを回っている寿司は少なく、流れる皿の上に立てられたネタの名前を記したポップがこれ見よがしに目の前を通過する。

 寿司ネタをリクエストするお客の声が店内に響く。カウンターの中にいる職人さんが威勢よく返事をして注文の寿司を握りはじめた。そうこうしているうちにまた別のお客からもオーダーの声がかかる。

 回転寿司ではあるが注文を受けて握るほうがメインの店ということになりそうだ。忙しい昼時を過ぎればなおのことそうなるのかもしれない。ならばと自分も中の職人さんにいろいろと注文する。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 自分が注文した寿司が握られているのを見るのは単純に興が乗る。そして握りたてを食べる体験もなかなか愉快だ。途切れることなくお客からの注文の声があがっている。こちらも負けじと(!?)思いつくままに注文した。

 前出のサリー大学の研究にもあるように調理風景、今の状況では職人さんが握っているところを見てから食べる寿司は確かに流れている寿司よりもおいしく感じられてきそうだ。そしてさらに食べたくなる。もう少し注文しよう。

 先日にはほぼ完全に“非接触”の回転寿司店に入ってそのシステムには感服させられた。徹底的に無駄を廃したオペレーションは清々しいとさえ言えるものであった。また某人気ラーメン店ではコロナ禍の以前から仕切られたスペースでラーメンを提供していたことから、このご時世でさらに注目を集めている。

 そういう店ではもちろん調理風景を垣間見ることは一切できないのだが、そのことで“味気なく”感じられることがあったとしても不思議ではない。少なくとも1つ、食欲をかき立てられる要素を欠くことになるからだ。

 回転寿司でありながら注文に応じて握ってくれるのをいいことに、いささか食べ過ぎたかもしれない。自分が食べる寿司が握られているのを見て実際に食欲が刺激されたのである。

“非接触”で食べる料理は極論すればデリバリーやテイクアウトとあまり変わらない食体験になってしまうかもしれない。もちろん外にいて時間がなかったり、食べることに集中したい時にはそれもいいのだろう。しかし一方で店内で調理風景を見ることで“今、ここで食べている”という臨場感が高まり、味と満足感に影響を及ぼしてきてもまったく不思議ではないだろう。

 自分で料理を作ったり、調理される様子を見たりすることで食べ過ぎるリスクは確かに高まるのだが、研究チームによればそこにはメリットになり得る側面もあるという。それは“食わず嫌い”の克服だ。

 いままで敬遠していた健康的なメニューであっても、自分で調理する機会を得たり、調理するプロセスを見る機会があったりすることで、食欲を刺激されて好ましく感じられるようになる可能性も生まれるのである。特に好き嫌いの激しい子どもに対しては、偏食をなくすための有効な方策になるかもしれないということだ。

 ……ともあれ想定以上に食べてしまった。すべて美味しくいただくことができて満足である。たまにはこういうことがあってもよいだろう。今夜の晩酌はあまり食べないことを心に決めてお会計を済ませることにしたい。

文/仲田しんじ

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