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オファー3か月後の渡豪、チーム合流後3日目のデビュー、元日本代表太田宏介が挑むコロナ禍のオーストラリアリーグ

2021.03.13

 新型コロナウイルスのワクチン接種が日本国内でも始まったが、首都圏では緊急事態宣言が2週間延長され、東京五輪の海外観戦客受け入れ断念が有力となるなど、海外との行き来はまだまだハードルが高い。

 サッカー界も大きな影響を受けている。今季から加わったJリーグの新監督・新外国人選手はいまだ入国が叶わず、シーズンがどんどん進んでしまっている。一方で日本から海外へ移籍した選手も厳格な隔離生活に苦しむことになる。昨年12月にベトナムに移籍した松井大輔(サイゴンFC)も「2週間、窓の開かないホテルの部屋で生活した。食事のベルが鳴るのだけが楽しみだった」と話していて、新天地へ赴くだけで至難の業なのだ。

入国許可が下りない状況も香川の頑張りが励みに

 2月26日にオーストラリア・Aリーグのパース・グローリーで公式戦デビューを飾った太田宏介も、ここまで想像を絶する困難を強いられた1人だ。
「当初は12月22日に日本を発って、パース入りする予定だったんですが、『入国許可が下りない』と直前に言われ、奈良の妻(タレントの福間文香さん)の実家に身を寄せました。すでに荷物は送った後でしたし、名古屋の家も引き払った後で行くところがなく、家族3人でお世話になるしかなかったんです」

 そのままクリスマス休暇、年末年始になってしまい、政府関係もストップ。出国見通しが経たないまま1月半ばになった。
「僕自身はその間も近所の公園でボールを蹴ったり、市民体育館で筋トレしたりとできることはやっていたんですが、さすがに危機感を覚えてきた。『やっぱり契約解除してJリーグで移籍先を探した方がいいのかな』という迷いも生まれ、代理人と真剣に相談したこともありましたね」
 そこで、頭をよぎったのが、U-20日本代表や日本代表でともに戦った同世代の香川真司(PAOK)のこと。香川も10月にサラゴサとの契約が切れた後、4カ月ものフリー状態を余儀なくされた。スペインで単身、練習を続けるというのは、心身両面できついはず。その姿が自らと重なり、「真司も頑張ってるんだから俺も前向きにならないといけないな」と気持ちを奮い立たせたという。

「1月15日の深夜便に乗ってくれ」とクラブから朗報が届いたのは、ちょうどその頃。太田は家族とともに一目散に関西空港から飛行機に飛び乗り、現地入りした。しかし、すぐに自由に動けるわけではない。前述の松井同様、2週間の厳格な隔離生活に突入することになった。

「息子が1歳半だったのが幸運でした。それより大きくなると言葉も喋れるようになり、『外へ出たい』と言い出す時期でしたけど、まだそこまで成長していなかったんで、何とか2週間をしのぐことができました」と本人は苦笑いする。

いきなりの実戦デビュー

 苦労のかいあって2月からようやく練習に合流できると喜んでいたが、ウエスタン・オーストラリア州がロックダウンに。Aリーグの新シーズンは1月16日に開幕していたが、パースが1月31日に遠征したメルボルン地域にコロナ感染者が発生したため、そこに赴いた選手全員が自宅隔離措置に入ることになった。試合も2月5日のアデレード・ユナイテッド戦の後、2週間中断。太田はケガからの復帰組6~7人と軽いメニューをこなす形で調整し、3月デビューを目指してコンディションを上げるつもりだった。

「名古屋グランパスの選手として最後に試合に出たのが10月21日の横浜F・マリノス戦。10月末にアジアチャンピオンズリーグ(ACL)要員としてオファーをくれたパースに行く決意を名古屋に伝えた後は全体練習に参加できないこともあったので、実戦感覚はかなり鈍っていました。パースに着いてからも隔離やリハビリ組との練習ですから、強度の高いメニューはこなせない。コンディションにはかなり不安がありました。
 新天地のチーム練習に合流できたのも、2月26日のブリスベン・ロアー戦3日前。そんな状態なのに、リチャード・ガルシア監督が『試合のメンバーに入るから』と言ってきた。過密日程を視野に入れ、実戦の中で出場時間を延ばしつつ、フィジカルコンディションを上げるという狙いがあったようなんです」

 本人にしてみれば、青天の霹靂だったが、もうやるしかない。ベンチ入りし、終盤に出るつもりで準備していた。ところが、指揮官から声がかかったのは、後半16分。「早すぎるよ」と心の中で叫びながら、4カ月ぶりの久しぶりの公式戦のピッチに立った。
「チームメート全員の名前もロクに覚えてない状態で出たんです(苦笑)。チームはそこから2点を取って3-1で勝ったんですが、その2点を自分がアシストすることになるとは想像もしませんでした。ただ、僕も2016年に1年間、オランダ1部のフィテッセでプレーしていたので、最初のインパクトの重要性はよく認識していました。一番最初に結果を残す残さないがその後の立場を大きく左右する。そういう意味では今回はいいスタートを切れたのかなと思います」

 中3日で迎えた3月2日の次戦、セントラル・コースト・マリナーズ戦でも、後半13分から出場して1アシストを記録。続く7日のウエリントン・フェニックス戦では左サイドバックでスタメン入り。65分間プレーするに至った。ここまでは想定以上の好発信を見せているだけに、さらなる結果が待たれるところだ。
「まだ一歩を踏み出したばかりで、リーグとかチームのレベルを全て理解したわけじゃないですけど、Aリーグはロングボール主体のフィジカルサッカー。ラスト20~30分はオープンな展開なり、攻守の切り替えも遅くなる感じで、Jリーグとは全然違いますね。ウッチー(内田篤人=JFAロールモデルコーチ)が『ドイツと日本のサッカーは別の競技』と言っていたけど、まさにそんな感じ。少し物足りなさもありますけど、33歳の新たな挑戦が刺激的なのは確かです。
 練習場もチーム専用ではなく、近くの学校のグランドを借りている状態。練習中にクリケットやゴルフのボールが飛んで来たりする環境ですけど、2006年に横浜FCに入ったころの『ギラギラ感』を思い出します。前からずっと行きたかったオーストラリアで30代になって再チャレンジできるなんて、本当に有難い。今は楽しくて仕方ないです」と太田は笑みを浮かべる。

3か月後、半年後も見えないがそれも含めワクワクする

 パースは同国南西端に位置する美しい港町。過去に妻と旅行したことがあり、「いつかここに住みたいね」と話したほど、気に入った土地だった。そこに長男含めて3人で再訪し、コロナを乗り越え、人としてサッカー選手として成長できるチャンスをもらえたことに、太田は心から感謝している。
「オーストラリアの人たちはフレンドリーで親切。治安もいいし、英語なので何となくコミュニケーションも取れます。コロナもほとんどないのでマスクなしで生活もできていて、家族も喜んでいます。僕はここにできるだけ長くいたいと思ってます。
 ただ、今季が6月末までで、契約期間もあと3カ月しかない。延長するにしても、次のシーズンが2022年1~2月開幕になると聞いているので、半年くらいは空いてしまう。その間をどうするかが考えどころです。他の選手は東南アジアのリーグに出稼ぎに行ったりするらしいですけど、僕もそういう道を考えることになるのかもしれない。3か月後、半年後も見えないけど、それも含めてワクワクします」

 30代のベテランが自身のサッカー人生をどう描くのか。それは人それぞれだ。今季J1では39歳の阿部勇樹(浦和)、38歳の大久保嘉人(セレッソ大阪)らベテラン勢が大いに活躍しているが、彼らはピッチで燃え尽きる覚悟で戦っている。一方で、松井のように40歳直前で再び海外に出ていく者もいる。太田の1つ上の本田圭佑もアゼルバイジャン移籍決定寸前で、香川も5カ国目の海外リーグでレベルアップに注力するなど、本当に生きざまな十人十色と言っていい。
 こうした中、太田は自分らしいキャリアを積み重ねることに集中している。オーストラリアという理想の地で、左足のスペシャリストが眩いばかりの輝きを放ち続けることを、我々は期待してやまない。

取材・文/元川悦子

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