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VARの本格導入、オンライン采配、IT化が加速するJリーグの2021年の見どころ

2021.03.09

Etsuo Hara/Getty Images

 コロナ禍の続くJリーグ。2020年は2月下旬から4カ月の中断を強いられたが、2021年は緊急事態宣言下でのスタートとなった。大規模イベントの観客上限5000人以下・20時までに終了という条件がつく首都圏では、3月21日まで超厳戒態勢での試合開催が続き、経営面での打撃は非常に大きい。

 一方で、新シーズン開幕早々、ガンバ大阪にに複数の新型コロナウイルス感染者が発生。5日間の活動休止と2試合中止を余儀なくされた。日程変更できない場合は「みなし開催」と位置付けられ、「0-3の敗戦になる」という新たなルールが設けられたため、どのクラブも戦々恐々としている。コロナでクラスターが発生すれば、勝ち点を失う可能性が高まるだけに、J1・4チーム降格という今季は非常に厳しくなる。徹底したコロナ対策もシーズンを戦ううえで非常に重要なテーマになってくるのだ。

VARの運用や工夫はこれからが本番、想定外の出来事にどう対処できるか?

 スタートから混乱が続くJリーグだが、IT化は着々と進んでいる。その筆頭が今季からJ1に本格導入されたVAR判定だ。
 本来であれば2020年から導入される予定で、日本サッカー協会とJリーグの審判委員会がVARのできる審判員の要請を行うなど準備を進めていたが、コロナによって1試合のみで取りやめとなり、丸1年ズレ込む形となった。

 今一度復習しておくと、VARが使われるのは、得点かどうか、PKかどうか、退場かどうか、警告の人間違いの4つの事象となる。
 プレーに疑問が生じた場合、ピッチ上の主審とビデオを見ているVARに無線でコンタクトを取り合い、該当場面を映像で確認することになる。主審側が「見えなかったからチェックしてくれ」と打診するケースもあれば、映像を見ていたVAR側から「ここは微妙なプレーだ」と連絡することもある。
 その結果、VARの助言だけ(VARオンリーレビュー)で終わる場合と、主審がフィールド外に設置された画面をチェックする(オンフィールドレビュー=OFR)場合に分かれる。スタジアム全体に映像が流れるのは後者だけ。それでも、大型映像装置でハンドがあったかどうか、オフサイドがあったかどうかがハッキリ分かるのは、見る側にとって親切だし、分かりやすいだろう。

 3月7日に日産スタジアムで行われた横浜F・マリノス対サンフレッチェ広島戦でも、OFRを経て、PKが与えられたシーンがあった。前半ロスタイムに横浜の松原健がペナルティエリア内でハンドを犯したかどうかを主審が画面でチェックした場面だ。その映像がスタジアムに流れると、松原が右手を高く上げた瞬間にボールが当たっていて、誰が見ても明らかなハンドだった。これにはホームのマリノスサポーターも納得せざるを得なかった。結局、広島のジュニオール・サントスがPKを決めたが、こういった事象がクリアになるのはいいことではないか。

 しかしながら、課題が残されたのも事実だ。この試合では前半27分に広島の東俊希が奪った2点目もオフサイド疑惑があり、VARオンリーレビューとなったのだが、時間がかかりすぎて、ロスタイムが4分となった。そのうえで、ジュニオール・サントスのPKまで行ったため、前半が54分まで続く事態となった。
 待ち時間が長くなり、試合が途切れるというのはサッカーにとっては大きなダメージになる。選手たちは集中力が切れやすくなるし、ちょっとしたミスや混乱も起きやすくなる。試合の流れ自体がガラリと変わってしまうことも考えられる。それを回避するため、この試合では横浜のアンジェ・ポステコグルー監督と広島の城福浩監督が競技のうえ、前半の飲水タイムを取らないという決断をした。

「アクチュアルプレーイングタイムを少しでも長くする狙いがあって、前半の飲水を取りやめた。連続したサッカーをお見せしたいという両チームの意思によるものだ。レフリーも映像を見て正しい判断をする努力をしている。VARが入ってスッキリした部分も多い。そこは改めて感じた」と城福監督もコメントしていたが、現場が一丸となってVAR下でのベストなJリーグを作っていこうと協力しているのも、前向きな要素と言っていい。今後も想定外の出来事が起きる可能性はあるが、1つ1つ真摯に向き合ってクリアしていくしかない。ITと共存していくのが2020年代のサッカー界なのだから。

まだまだ課題の多いオンライン采配だが、日本にとってチャンスも!?

 さらにオンラインを使った采配というのも2021Jリーグの1つの特徴だ。それを実践しているのが、7年ぶりのJ1参戦を果たした徳島ヴォルティス。4年間指揮を執ったリカルド・ロドリゲスが浦和レッズの監督となり、今季から新たにスペイン人のダニエル・ポヤトス監督が就任したのだが、コロナによる入国規制で入国がいまだ叶わず、スペインから指示を送っているのだ。

 現場を預かる甲本偉嗣コーチは2月の宮崎キャンプの際、現状をこう説明していた。
「毎日スペインにいる監督、マルセルコーチと日本のスタッフでオンラインミーティングを重ねています。練習総括、翌日の練習の打ち合わせと必ず意思疎通するようにしています。監督と選手がオンラインで直接話す形も増えていますし、ポジション別の意思疎通の場も設けるようにしています。僕自身はもともと分析専門で、選手にどう伝えるかを考えながら仕事をしてきましたが、今は正直言って、難しさを感じます」

 甲本コーチが困惑の表情を浮かべるのも当然だろう。2月27日の大分トリニータ戦で開幕してからは、ポヤトス監督のリアルタイム采配はできない環境に直面している。Jリーグはスペイン国内では放送されていないため、試合を見ながらオンライン指揮することがも叶わないからだ。
 現実にはオンライン会議ツール「Zoom」などでDAZNの試合を流して、ポヤトス監督から指示を仰ぐことはできなくもないが、それは放映権の問題で許されない。となれば、試合の準備や練習のマネージメントまでは指揮官の範疇だったとしても、試合中の采配は甲本コーチが一手に担うことになる。「監督からは自由にやっていいと言われています」と本人も話していた。
 3月3日のYBCルヴァンカップで対戦したFC東京の長谷川健太監督が「実際にチームを見ていない監督がチームをマネージメントをするのは現実的には難しい」と発言。他のJリーグ指揮官も同様の感想を口にしている通り、実際の試合では甲本コーチの手腕に託される部分が大なのだ。
 それが奏功しているのか、ここまでの徳島はJ1で2引き分けの勝ち点2を確保。3月6日は難敵・ヴィッセル神戸相手に1-1のドローに持ち込んでいる。スペインにいるポヤトス監督の分析や指示を聞きながら、メンバーを決め、試合中の交代やフォーメーション変更などを決断しなければいけない甲本コーチの苦労は計り知れないが、ここまではやっていると言っていい。

 徳島の例が成功すれば、今後はオンラインを使っての遠隔操作や采配というのが可能になるかもしれない。すでに欧州サッカーの第一線から離れているアレックス・ファーガソンやアーセン・ベンゲルといった名将をアドバイザーにして、支持を仰ぐようなケースも出てくるかもしれない。場合によってはAI監督に戦術分析やマネージメントを託して、現場のコーチが指示を出すという領域まで行くことも考えられるだけに、今回の動向は大いに気になるところ。ITがどこまでJリーグを変えていくかを興味深く見ていきたい。

 取材・文/元川悦子

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