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総務省接待問題が与える通信行政への影響とスマホ料金改革の行方

2021.03.11

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は格安スマホの料金プランについて議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

UQ mobileの料金プランは“価格破壊”

房野氏:昨年12月にドコモから「ahamo」が発表され、各社、各ブランドによる料金値下げ合戦が起こりました。私自身、ちょっと混乱気味なんですが、UQ mobileが「くりこしプラン」で3GB 1480円を打ち出したことは驚きでしたね。

UQ mobile「くりこしプラン」

房野氏

石川氏:UQ mobileは攻めすぎている。Y!mobileよりも値段を下げて容量を上げてきた(その後、Y!mobileも対抗値下げした)。MVNOを潰していくぞって気合いがすごい。UQコミュニケーションズから事業を引き取った時から考えていたのかもしれないですけど、踏み込み過ぎたなって感じがします。

石川氏

石野氏:踏み込まないとKDDIの営業の仕事がなくなってしまう(笑)。「povo」でKDDIに来た人へ契約させるには、UQ mobileのくりこしプランは良いプラン。ユーザー側から見ると良いプランなんですけど、MVNO側から見ると「おいおい、この値段で提供できるんだったら、もっと接続料を安くしろよ」っていう気持ちがあるような気がします。日本通信の福田さん(日本通信 代表取締役社長 福田尚久氏)の受け売りなんですけど、音声基本使用料が660円くらいかかる。1480円で提供しようとすると、3GBのデータ通信はいくらに設定すればいいんだよって話になる。現状の仕組みだと、MVNOであの料金はできません。

au「povo」

石野氏

法林氏:UQ mobileが踏み込みすぎている感はあるけど、ユーザー的には嬉しい……かな。

法林氏

石野氏:KDDIがUQ mobileの料金をあれだけ下げられるんだったら、楽天モバイルのローミング料金を下げてあげたらいいんじゃないかと思いました(笑)

石川氏:そうなんだよね。

石野氏:楽天のローミング料金ってUQ mobileの料金より高いんですよ。それはどうなんだと。

房野氏:総務省がMNOに対して、MVNOへの回線の貸し出し料金を下げろと言ってくる可能性はありますか?

法林氏:それはやります。

石川氏:武田良太総務大臣は「MVNOの競争にとって重要だ」ということを言っています。去年の10月末に発表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」(以降、アクションプラン)では、接続料を3年で半額に下げるという話だったんだけど、それでは間に合わないと。そうなるまでMVNOは体力が続かないので、もっと早く接続料を見直そうと。また、大手キャリアの20GB 2980円や2480円のプランが、本当に正しいかというか、コスト構造を検証するスタックテストをすると言っています。

武田良太 総務大臣

法林氏:順番が逆だよね。

石川氏:そうなんですよね。

法林氏:先にMVNOの接続料を下げさせて、「そんなにMVNOの料金が下がるんだったら、ウチも下げなきゃ」ということで20GB 2980円の料金プランを出すという流れだったら話はわかるんだけど、回線を持っている方が先に下がってしまった。それはMVNOにとってはしんどいですよ。

最安値を狙った衝撃的なIIJmioの料金

房野氏:でも、MVNOの新料金も続々発表されて、値下げしていますね。

石川氏:最初、日本通信ががんばって対抗プランを出したけど、その後、mineo、J:COM MOBILE、BIGLOBEモバイル、IIJmioという感じで新プランが出ています。だいたい、20GBは月額1980円、IIJmioは1880円ですね。ただ、MVNOは少ない容量で勝負しているのかなと思います。1GB、3GB、5GBのあたりでユーザーを取っていきたいという感じ。大手3キャリアが小容量プランの料金を改定していないので、だったらそこでお客さんを獲得したいというのもある。mineoは、新規で獲得するというよりは、今いるユーザーに逃げられないようにするためのメッセージだという言い方をしていて、そういう考え方なのかなと。新プラン適用は4月だけど、このタイミングで発表して、「みんな、ドコモの『ahamo』に変更しないでね」というようなメッセージなのだと思います。

mineo

石野氏:MVNOはどこも準備はしていたんです。mineoも、さすがに今のプランじゃ通用しないと思っていて、今夏くらいまでにはプラン改定しようとしていたと言っていた。IIJも来年度くらいにということだったので、一部のサービスは6月リリースになっています。6月くらいの予定で準備していた中で、ahamoが出てきたので、みんな急に巻き上げだ。この1、2か月は各社とも、残業が多くて大変だっただろうなと思います。

法林氏:在宅だから自宅残業だな。

石野氏:もしかしたら残業代が付かない残業かもしれない……大変だっただろうなぁ。2、3か月くらいペースを巻き上げている感じですね。IIJが一歩踏み込んで、音声対応で2GBで780円、eSIMだと400円という値段を打ち出した。アクションプランで、接続料がこれだけ下がるだろうという見込みで値段を下げているので、見込みが外れたら結構痛いだろうなと思いますが。

IIJ

石川氏:各社、かなり見切り発車でやっている。MVNOは危うい商売になっちゃったなと思う。

石野氏:そうですね。IIJは過去にドコモの接続料が予想より高くて、決算を下方修正している。その意味だと、リスクある料金設定になっているんですよね。日本通信は音声定額を始めているし。

法林氏:会社として体力がないとできない商売になってしまったので、みなさん、ちょっとしんどいよね。IIJの話の中で気になったのが、「ファミリーシェアプラン」の1契約で複数枚のSIMを発行するのはユーザーに理解されにくいので、1契約ずつにして容量を合算できるようにしたってこと。元のシェアの仕組みが理解されないというのが僕はショックでした。

IIJ「ファミリーシェアプラン」

石野氏:理解されないというよりも、すごく安いプランで何枚もSIMを発行しているのがIIJにとって重荷になっている気がするんです。

法林氏:そうなのかな。

石野氏:新しいプランで同じ容量にしようとすると何枚もSIMを発行しなきゃいけないので、トータルで高くなるという意見もネットで見ました。

法林氏:複数枚のSIMを持っている人はそうだね。

石野氏:心配なのは通信品質ですよね。帯域をどのくらい増強するかわからない中で、今のユーザー数であのプランが始まると、お昼休みなんて通信速度はどうなっちゃうんだろうという心配はあります。当然、帯域は増強しているんでしょうけど、通信品質は様子を見ないと何とも言えないところがありますね。

石川氏:auのpovoとソフトバンクの「LINEMO」が2480円で、MNOとMVNOの20GBプランの料金差が500円程度しかないんですよ。2980円と1980円で1000円の差があったら、MVNOに移動してもいいかなという気もするんですけど、500円差というと、MNOをやめてMVNOに乗り換えるモチベーションが上がらないよなぁって気がしています。

ソフトバンク「LINEMO」

石野氏:20GBくらい使っている人は乗り換えないでしょうね。ただ、今回のIIJにびっくりしたのが8GB 1380円の価格で、完全にUQ mobileを意識していて、ユーザーを取られないように全力投球してきたなと。

法林氏:けん制してきた感じがするよね。

石野氏:同時にmineoまで刺されてしまうという。大丈夫なのかな、IIJのプランが衝撃的で、安すぎると思ったんですよ。IIJは真っ先に一番安い料金を出してくるような会社のイメージではなかったので、今回はかなり意外でした。mineoはどうするのかなとか、OCN モバイル ONEも3月に新プランを発表しますというティザー広告みたいなものを出しましたけど、対抗するのかな。後出しで高いプランだったら大ひんしゅくじゃないですか。

MVNOがdポイントに対応する?

石川氏:ドコモの井伊社長の話を鵜呑みにすると、OCN モバイル ONEはdポイントが貯まるようになるんだろうな、きっと。

株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 井伊 基之氏

石野氏:そうでしょうね。というか、その話に乗ってきているMVNOがないので、OCN モバイル ONEがやらなきゃどうするんだって感じですよね。

石川氏:もしかしてIIJがdポイントの話をするのかな思ったら、全然しなかった。その話が出ていないのか、もしくはあまり魅力に感じていないのか。

石野氏:mineoの関係者に聞いてみたんですけど、そんな話は一切聞いてないとのことでした。

石川氏:OCNだけなのかな。

石野氏:最初はOCNでしょうね。

房野氏:OCN モバイル ONEをやっているNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が今年、ドコモの子会社化される話がありますね。

石野氏:子会社化は決定事項に近い話です。ドコモの下にNTT Comがぶら下がって、OCN モバイル ONEは全部NTTレゾナントに移る計画になっています。NTT Comはネットワークのイネーブラーになって、個人向け事業の窓口は全部NTTレゾナントになるというのが、子会社化の第2ステップです。レゾナントもドコモの子会社になります。そうなれば、OCN モバイル ONEは、実質、ドコモのサブブランドみたいなものですよね。

石川氏:UQ mobileやY!mobileみたいな位置付けになっていくと思います。小容量向けブランドとして置かれる感じになるんじゃないかな。

房野氏:ほかのMVNOの立ち位置は危うくなりませんか?

石川氏:武田総務大臣が「MVNOに一番恩恵がある」と言っているので、そんなことはない(笑) ……って、冗談ですが。

法林氏:NTTレゾナントについては、今、NTT Comが66%、ドコモが33%の株を持っている。NTT Comがドコモの下にぶら下がるので、そうなるとドコモの1部門にしかならなくなる。以前からドコモはサブブランドはやらないと言っていたけど、これで結果的に強制的にやらされる形になる。

石野氏:以前のUQ mobileに近い立場ですね。

法林氏:そうですね。で、dポイントを運用させる。問題はdポイントを他社が導入するかどうか。今のところ、どこもやると言っていない。IIJはやらないし、ほかにいる?

石川氏:うーん……

石野氏:2GBで780円の料金だと、1か月にdポイントが7円くらいしか貯まらないんじゃないかと。

石川氏:MVNOからすると、dアカウトと紐付くということじゃないですか。そうなると、MVNOを使っていた人がドコモに行っちゃうってことも考えられるので、やりたくはないですよね。

石野氏:まずはOCN モバイル ONEでやって、店頭とかで紹介してくれて、効果が出そうだなと思ったら、MVNOの何社かが乗ってくるという感じかなって気がします。

法林氏:ポイントを自前でやっているようなところはドコモと組みにくいよね。IIJはビックカメラと組んでいるから、ビックポイントと絡めるし、ビックカメラはビューカード(JR東日本)との提携カードでSuicaでポイントを貯められるとか、選択肢が多い。何年もかけて、コジマとソフマップとビックのポイントを統合したような状況なので、そこにdポイントを紐付けるのは嫌ですよねって話。dポイントは他事業者じゃないと組みにくいよね。可能性はあるかもしれないけど、まったくやっていないところはないからね。

石野氏:IIJはNTT資本が入っているので……

法林氏:従えと言われれば……

石野氏:まぁ、そこまでは話が行っていなかったようですね。

房野氏:auやソフトバンク回線を利用するMVNOはどうでしょうか。

石野氏:mineoが、auのMVNOとしては回線数が一番多いかな。

法林氏:UQ mobileがKDDIの中に入っちゃったからね。

石野氏:UQ mobileがMVNOじゃなくなっちゃったので、今はたぶん、mineoの回線数が多いと思います。あとBIGLOBEモバイル。

法林氏:BIGLOBEとJ:COM、くらいかな。

石野氏:J:COM MOBILEとBIGLOBEモバイルは、KDDIのマルチブランド戦略の一角。UQ mobileと絶妙に差別化した料金を出してきて、棲み分けがわかりやすい料金になっています。

石川氏:J:COM MOBILEはまだ存在価値があると思うんですけど、BIGLOBEモバイルはどうなるのかな。

法林氏:会員数は多いからね。BIGLOBEは僕にとって一番古いプロバイダというか、「PC-VAN」っていうパソコン通信時代のアカウントが生き残っている。古い世代の人たちは、ずっと使い続けているかも。

石野氏:そことの割引が効くのは大きいですよね。

法林氏:それはメリットとしてあるかな。でも「プロバイダとしての魅力って、今、何だよ」みたいなところもある。そもそも必要かという話。

石野氏:BIGLOBEモバイルは1480円で3GB、ゼロレーティングの「エンタメフリー・オプション」付きなので、YouTubeを見まくりたい人とかにはいいかもしれない。法林さんがおっしゃっる通り、BIGLOBEユーザーに対してのMVNOみたいな感じ。よくKDDIの髙橋社長が、BIGLOBEについては「ISPを軸にしたタッチポイント」と言っているので、そういうことなのかなと。逆にそこまで大きな成長を求めている感じでもない気がします。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

BIGLOBEモバイル

法林氏:BIGLOBEモバイルは、もともとやっていたドコモ回線からau回線への乗り換えのキャンペーンもやったし、追加する人に対しての優遇策もやった。ちゃんと販売施策をして、アカウントを活かした商売はできていると思う。

石野氏:KDDIグループからすると、mineoにユーザーを逃さないためのMVNOでもありますよね。

石川氏:巻き取り方が上手いキャリアといえば、KDDIですからね(笑)

石野氏:BIGLOBEモバイルで巻き取らせて、そのうちUQ mobileに上げて、最後、auに上げるというのが、髙橋社長の脳内にあると思います(笑)。決算発表会の時に出したグラフを見ると、グループの中でぐるぐる回していって、最後、auにアップセルしていく。そんなきれいに、みんな上げていくかと思いつつも一応納得感はある。

総務省の接待問題で通信行政にも疑惑?

房野氏:本来、MVNOは通信業界内の競争を促進し、大手キャリアが回線を貸し出すことでいろんな企業が通信事業に参画できるようにするという趣旨だったと思います。今回は総務大臣発言などで、値下げが格安スマホ業界の脅威になっていると思いますが。

石川氏:そうですね。行政に歪められた感じがする。今の段階では料金が安くなってハッピーだよねってところですが、長い目で見ると、大手3社しか生き残れない状況になりかねないと思う。そうなるとまた寡占に戻って、料金上げ放題だよね、という感じになると思います。これまで、2007年から14年間、菅さん(菅総理大臣、2007年当時は総務大臣)と谷脇さん(谷脇康彦総務審議官、当時は総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課長など)ががんばっていた「モバイルビジネス研究会」からの努力が無になってしまうということについて、ぜひとも谷脇さんに話を聞きたかったけど……

法林氏:もう聞けない。

房野氏:菅総理大臣の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から、総務省の複数幹部が接待を受けていた問題ですね。

石川氏:谷脇さんは減給だけなので、しばらく省内に残るとは思うんですけど。

石野氏:7万円のご飯、食べたいですね(笑)

石川氏:谷脇さんは、もう、事務次官の可能性はなくなったんだろうな、というのがなんとも悲しい感じですよね。

法林氏:東北新社の事業に対して何があったかはわからないけど、総務省の行政のあり方がちょっと歪んでいるとは感じる。これからどうしていくのか、武田大臣はちゃんと任期中に言及してほしい。場合によっては、僕は前から言っているけど、省の分割をやるなり、そうじゃなかったら、今やっている内容を見直すなりしてもらわないと。だって、菅総理大臣が総務大臣、谷脇さんが料金サービス課長の時に手を付けたモバイルビジネス研究会から14年間、ずっとやってきたわけなので。

 流出した接待中の音声の内容によると、小林史明議員が叩かれていたりするわけじゃないですか。今回取り上げられたのは放送行政だけど、いや、通信行政も同じことをしているのかな……となっちゃう。キャリアが接待したのか、キャリアがいじめたのか、それはわからないけど、ちょっと考えるべきタイミングなのかなって気はしました。

石川氏:今回の件は、総務省の内部リークが発端じゃないかと想像しています。総務省内で快く思っていない人が、情報を提供したんじゃないかと思っていて、もしそうなら自浄作用が働いていると考えられるわけで、今後の総務省に期待してもいいのかなと思います。

法林氏:わからない、なんとも言えない。

石川氏:今までのいろんな競争政策は谷脇さんが中心になってまとめられてきたと思うし、今回の菅政権になってからの値下げもあったし、菅総理がやりたいから総務省が一生懸命動いていた部分もある。まぁ、そこが根底から覆されると、通信業界としては、なんのための値下げ議論だったのかなと。はしごを外された感じがします。

法林氏:なんとなく薄々と感じていたうわさ話が、今回は世の中へ完全に明らかになった。仮に忖度がなかったとしても、邪推されちゃう状態になった。

石川氏:すべてが疑惑の目で見られるというか。NTTによるドコモの完全子会社化も、そういった接待があったから実現したんじゃないか、みたいな疑い方もされかねないじゃないですか。

法林氏:出てきますね。

石川氏:いろんなものが、これって本当に正しいことなんだろうかと、すべて疑念の目で見なきゃいけなくなってきた。色んなことを検証しなくてはいけない感じがしますよね。

法林氏:信頼できない部分が出てきた。良くないですよね。

石川氏:放送も通信も枠が限られているので、その枠をどうするんだって議論に当然なり、じゃあ接待すればするだけ枠が優遇されるのかと思ったりもするし。このへん、どうなんですかねぇ。

石野氏:結局、接待はしていたけど、結果を見ると新規事業者が参入していて、接待損になっていたというか、その接待で本当に効果があったのかって感じにもなっている。武田大臣は、行政が歪められたかどうか検証するとおっしゃっていましたが、あなたの発言の方が歪めていると。

石川氏:でも、今さら衛星放送に枠を与える意味がさっぱりわからない。これだけNetflixなどネット配信で盛り上がっている中、なぜBSの局を増やさなきゃいけないのか。

法林氏:衛星の再割り当ての話があったけど、楽天モバイルのプラチナバンドの話があるじゃないですか。

石川氏:そうそう。

房野氏:楽天モバイルがプラチナバンドがないと厳しいといって、割り当てを求めている話ですね。

法林氏:再割り当てすることになると、また端末の入れ替えが必要になったり、この時期までは利用できるけど、ここからは非対応になる、みたいなことがまた起きるので、余計な混乱が増える気がする。あまりいい感じがしない。そういう意味でも通信行政はグランドデザインをちゃんと描いてほしいと感じます。

石川氏:本来であれば6Gに向けて未来のあるべき姿を描いていかなきゃいけないんでしょうけど、正しく描くのは難しいのかなって不安になりますね。

法林氏:クリーンさは保ってほしいと思いました。特に行政はクリーンにやってほしい。なんでも清廉潔白とは言わないけど、今回はあまりにも緩かったというか。

総務省の仕事への期待

房野氏:今回の行政主導の値下げは、通信業界にどういう影響を与えていくでしょうか。

石野氏:本来、競争をしかける側だったMVNOが後手に回っている。大手通信会社へ先に値下げさせたので当然なんですけど、それがすでに間違っているというか。ahamoが最初に発表されたので、みんなドコモの料金水準に引きずられ、MVNOもドコモよりいくら安いみたいな感じになっている。本来であれば、接続料を先に下げて、MVNOが20GB 1990円といった料金プランを発表する。「お、これは安い」とMVNOに移るユーザーが出てきて、そんなユーザー流出を食い止めるためにドコモがahamoを出してくる、という順番が期待された競争の姿だと思うので。

石川氏:去年の10月末に総務省がアクションプランを出していて、接続料を3年で半額に下げることになっていますが、これを1年で実現させるんだといってMVNOが値段を下げる、というように、総務省は本来、これを我慢してやるべきだった。でも、武田総務大臣がちゃちゃを入れたから、こうした状況になっちゃったということだと思います。
 発言として一番ダメだったと思うのが「メインブランドで下げろ」というもの。最初、KDDIとソフトバンクは、サブブランドのUQ mobileとY!mobileで20GBのプランを出した。あれによって、メインとサブの棲み分けができて、サブブランド対MVNOという構図になって、「高いと思うならサブブランドか格安スマホに行きましょう」という図式を作れば良かったんだけど、ahamoによりメインの料金プランが下がってしまった結果、こういう結果になった。武田総務大臣が色々発言したのが終わりの始まりだったかなという気がします。

石野氏:玉突きでどんどん安くなっている。究極的には楽天モバイルで1GB以下は0円になっているじゃないですか。そうなっちゃうので、MVNOがもし先に20GB 2980円みたいな料金を出していたら、ahamoは3980円で対抗するか、みたいになって、国際水準から見ても、まぁまぁ、ちょっと安いくらいの料金に落ち着いたと思うんです。それをいきなりメインブランドで下げろってことになると、行き過ぎな価格破壊が起きて、競争の軸が歪んでしまうなぁという感じがしましたね。

法林氏:2014年に日本通信とイオンが組んで「Nexus 4」を売って、格安スマホが生まれた。あれから5、6年間、僕らは色々記事を書いてきたけど、総務省がMVNOのことを真面目に後押ししなかった。接続料を下げる議論もそうだけど、基本的に総務省の仕事は遅い。武田総務大臣の発言がマズかったのは本当にそう思うけど、その前の5年間くらいの総務省の仕事ぶりも、その下地を作った感がある。政府は仕事をしていないなって感じるところ。

石川氏:キャリアメールのポータビリティも、なんで今さら語られるんだろうと思いますよね。そんなのMNPを導入した時から整理しておいてよって話だし、MNPのワンストップ化も、MNP導入時からやっておけば良かった。契約解除料やSIMロック解除云々も、もっと早い段階でやっていれば競争が促進されただろうけど、それが先送りされてこの状況。総務省はもうちょっとがんばるべきだったんじゃないかと思います。

石野氏:接続料も、大臣に言われたらこんなに一気に下がるんだというのが、ちょっと納得行かない。今までは、算定式があって自動的に出てくる数字という説明だった。大臣が指摘したら、自動的に出ている数字が変わるってどういうことだよと(笑)

石川氏:総務省は余計なルールを作り過ぎている。ルールをなくさないことには自由な競争が起きないんじゃないかな。総務省はユーザーが解約しやすい環境だけ整備して、あとはもう自由に競争すれば、端末割引しまくるキャリアもあるだろうし、料金で勝負するキャリアもあるだろうし。流動性を上げる施策をもっと早いタイミングでやっていれば、だいぶ違ったんじゃないかなと思います。

楽天モバイルはプラチナバンドを獲得できるか

房野氏:楽天がプラチナバンドを欲しいと言っていますが、その辺はどうですか?

法林氏:無理。空いてないもん。

石川氏:そう、欲しいと言うならば、参入する前に言わないと。

法林氏:おっしゃる通り。

石川氏:順番が違う。当時から「プラチナバンドがないけど大丈夫?」って話は出ていた。しかも去年の1月、楽天モバイル 恵比寿店がオープンした時の記者会見で、自分は山田善久社長にその件を質問したんですけど、その時は「1.7GHz帯は意外とつながるから大丈夫です」という言い方をしていた。ということもあるので、今さら感がある。

石野氏:しかも、割り当てるとなると周波数を再編しなきゃいけないので、他社のユーザーにも迷惑がかかる可能性が出てくる。

法林氏:これだけ端末の数、ユーザー数が増えている現状を考えると、今から再編して周波数をひねり出すのは、相当、無理があると思う。まして数を考えると。楽天は300万契約でしょ。他社はその10倍以上の契約を抱えている。たぶん無理じゃないですかって話。

石川氏:そうですねぇ。

法林氏:根本的な設計が間違っている。

石野氏:周波数は、そんなにすぐに割り当てられない。再編も必要だし。タイムスパンでは、年内になんとかなるというレベルでは全然ないと思います。

法林氏:楽天モバイルには、もう1つ突っ込みどころがある。MVNOが大変だと言っているけど、MVNOのシェア1位は、実は未だに楽天モバイルです。それはいいのか。プラチナバンドが欲しいというなら、それまでに全部、今のMVNOの回線を移行してねってことになると思う。それに楽天が耐えられるかという話で、たぶん無理だろうなと思う。

J:COM MOBILE の「iPhone SE実質0円」がなくなったワケ

房野氏:J:COM MOBILEの「iPhone SE」0円販売がなくなった件を解説していただけますか?

石川氏:以前、石野さんも言っていましたけど、そもそも「これ、どうなんだ?」ってところがあった。

法林氏:そうね。

石川氏:J:COMの地域会社が販売して実質0円にできるんだったら、ほかのキャリアもいっぱい地域会社を作ってやればいいんじゃないかなって話になる。

法林氏:au沖縄セルラー(KDDIの連結子会社)で売るんだったらいいのか、みたいな話になる。

石川氏:まさにそうですよ。

法林氏:ただ、J:COM自体が微妙な立ち位置。地域のケーブルテレビ会社があって、そこがJ:COMのグループに参加しているという格好。

石野氏:KDDIの特定関係法人の中にはいくつか種類があって、「その他」のところにジュピターテレコムを入れていたらしいです。「その他」に入れると、その子会社、つまりKDDIから見ると孫会社は、完全にノータッチというか、特定関係法人に含まなくていいというルールがあったらしいです。でも、本当は「その他」じゃないですよね、ということでジュピターテレコムを移した結果、MNOなどに適用される省令が全部適用されることになっちゃって、「iPhone、0円はけしからん」ということになってしまった。ジュピターテレコムの社長に石川さん(石川雄三氏)が就任して、また0円端末が出た! って感じで、ちょっと面白かったですけどね。

石川氏:石川さんの伝家の宝刀というか……ただ、ジュピターテレコム側も確認するなりしないとダメだよね。

石野氏:そうですよね。

石川氏:どう考えても、これ、よそから突っ込まれるだろ……ってことをわかった上でやっていた感じも……。

法林氏:指摘されるまでに何台売ったか、だよね。

石野:そうですね。KDDI側の説明としては、意図的ではなく単純なミスで、法務部との連携のチェックがちゃんとできていなかった、みたいな話をしています。ジュピターテレコム側が、本当にそう思ったかなというのは、ちょっと……石川社長は、0円 iPhoneのうまみをもっともわかっている人ですからね(笑)

......続く!

次回は、携帯電話会社の決算について話し合いする予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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