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あらためて考えたい中小企業における在宅勤務と労働生産性の問題

2021.03.07

■連載/あるあるビジネス処方箋

 緊急事態宣言を受けて多くの企業が在宅勤務をしている。毎度のごとく、新聞やテレビ、ネットニュース、雑誌は在宅勤務のよいと思える面を強調して報じる。例えば、「通勤がなくなり、働く人の負担が減った」などだ。中には、根拠が明確に示されないままに「労働生産性が上がった」と報じるメディアもある。私は、そこまで言いきる根拠を今なお見出すことができない。むしろ、混乱を繰り返している職場のほうが多いように思う。

今回は、1月上旬から現在までの間に私のそばで起きている問題を紹介したい。実は、これらは昨年4月に緊急事態宣言が発令された後、解除の5月下旬までにも頻繁に見られたものだ。ところが、なぜか、新聞やテレビ、ネットニュース、雑誌でこういった在宅勤務のマイナスの部分をほとんど報じない。今回あらためて書いておきたい。

 結論から言えば、メールや電話のレスポンスが通常よりも数日~1週間は遅れている。私が仕事をする出版社、業界紙、編集プロダクション、IT系企業で言えば、正社員数が300人程以下の会社に集中している。この類の会社は得てして組織のあり方が未熟で、担当者がふだんから1人で仕事をする傾向があるようだ。会社員でありながら、フリーランスのような姿勢で仕事をする。だから、チーム力を生かし、効率よくできない。ムリ、ムダ、ムラが多く、不安定な仕事となる。現在のような非常時の場合は上司の了解を得ることが難しくなり、返事がすぐにできないのだろう。

 もともと、社員数300人以下のいわゆる中小企業は、全体的に仕組みができていない。例えば、全社や各部署、上司と部下、社員間の情報、意識、目標の共有である。仕事の仕方や進め方、意思決定も互いに共有しようとする意識に乏しい。管理職のマネジメント力は概して低く、部下の育成がなかなかできない。そもそも、育てようとする意欲すらない上司が少なくない。

 新卒、中途の採用力は同業の大企業やメガベンチャー企業よりも見劣りするために、人材の質が相対的に低い。厚生労働省の調査でも明らかなように、入社3年間での離職率は高い。採用、定着の柱が立たないので、育成の柱を立てることができない。結果として、20代後半から40代までくらいの社員の仕事力は企業やメガベンチャー企業よりも低い。

 これら一連の本質的な問題をいつまでも解決しようとしないので、全社規模での在宅勤務をすると、各部署やチームの組織力や求心力はますます弱くなる。もともと、バラバラに動いていた人たちはますます独自の判断で動くようになり、完全に各部署は空中分解となる。メールの返信がどんどんと遅れるのは、この流れの中で起きているとみるのが妥当だろう。

本来、メディアは在宅勤務を報じる時に、ここまで踏み込まないと問題提起にはならないと私は思う。ただ単にオンラインツールを使っただけで中長期にわたり、労働生産性は上がらない。仮に「在宅勤務をすることで、労働生産性が上がった」と言いきるならば、労働生産性が上がらない大きな理由である人事の仕組みやマネジメントが不備であることにも触れるべきだろう。

例えば、以下の問題だ。

・300人以下の会社を中心に採用力が弱く、その会社にとって大きなメリットをもたらす人材を獲得ができない。むしろ、ミスマッチする傾向が多々あり、定着率がなかなか上がらない。結果として、組織化やチームビルディングができない。

・こういう状況下で在宅勤務をしたところで、問題の本質が残ったままである以上、労働生産性がわずか1年で上がることは可能性としては相当に低い。

・オンライン化を進めるのと同時に、採用力を始め、定着の仕組みを整える。そし定着率を上げて、密度の濃い競争の空間を作る。その中で社員たちが刺激し合い、支え合い、仕事をする。このような状況や環境、風土がない中、オンラインをしたところで大きな効果にはつながらない。

 さらに詳しく見ると、300人以下の会社でも、特に際立つのは社員数が100人以下だ。この規模になると、メールの返信は2週間(14日間)を超える場合がある。昨年4月~5月に遅れていた状況と変わらない。同じ問題が繰り返されているのだ。つまり、PDCAサイクルが回っていない可能性がある。様々な理由が考えられるのだろうが、組織として未熟であり、最早、どうすることもできない一面もあると思う。

 私が、この連載で就職活動をする学生やその予備軍、将来があるはずの20~30代半ばまでの読者諸氏に、「100人以下の会社への就職は慎重に考えたほうがいい」と繰り返し助言している。後々、後悔することになりはしないか、と案じているがゆえに警告を発している。

文/吉田典史

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