
最近、自動車業界界隈でよく聞かれるワードに「CASE」がある。Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取った略称であり、この技術・取り組みが、自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすといわれている。
この内、日本、欧米、中国などで脱炭素の取り組みを前倒しで進める動きが強まり、電気自動車(EV)へのシフトが急速に進み始めた。国内の電子部品や素材企業は『EV関連』を成長部門と位置付け、『EV関連』部品や部材の増産投資を加速している。
そんな『EV関連』の部品や部材に関するマーケットレポートがこのほど、三井住友DSアセットマネジメントにより公開された。
各国の政策対応などを受けEVシフトが進む
菅内閣は成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、2050年までに温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする2050年カーボンニュートラルを目指す中で、2030年台半ばにはガソリン車の新車販売ゼロを目指す方向とされる。
中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にするほか、米国ではバイデン政権の誕生により、環境対応を加速する方向にある。こうした流れを受け、自動車のEVへのシフトが急速に進み始めた。『EV関連』部品や部材に強い国内の部品や素材企業には追い風になるとみられ、増産投資に乗り出している。
国内企業は対応を強化
電子部品企業では、TDKは蓄電池など、ロームは次世代型パワー半導体投資を拡大、増産する方針。日本電産はガソリン車のエンジンにあたるEVの基幹部品である駆動モーターなどに最大1兆円規模の投資をする方針だ。
同社は中国では研究開発拠点や生産拠点の準備を進めており、欧州にも約2,000億円を投じて駆動モーターの工場を設ける方針。永守会長は2030年にEV向けのモーターシェアを40~45%に拡大する見通しを示している。
素材企業では電解液で多くの特許を持つ三菱ケミカルはEVなどに使うリチウムイオン電池の中核材料の生産能力を大幅に引き上げる方針のほか、住友化学もEV向けの電池に採用されている絶縁材などを増強し、生産能力を引き上げる方針だ。
各企業の戦略の巧拙が問われる
自動車の「脱ガソリン」は欧州が先行していたが、世界的な脱炭素への取り組み強化によるEVなど環境対応車へのシフトは『EV関連』部品や部材に強い国内の部品や素材企業には追い風になる。一方韓国や中国企業も同分野への取り組みを強化しており、競争はさらに激化していくとみられる。今後は技術開発に加えて、提携など各企業の戦略の巧拙が問われる。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント株式会社
構成/こじへい
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