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2021年度の賃金改善が見込まれる企業は4割、7年ぶりの低水準に

2021.02.25

賃金改善をしない理由「新型コロナによる自社の業績低迷」が7割

2020年は、国内景気を「回復局面」とする企業は3年連続で1ケタ台にとどまり、加えて「悪化局面」は2012年以来8年ぶりに5割超となるなど、より厳しさの増す1年となった。

新型コロナウイルスの感染拡大が企業活動に大きく影響を与えているなか、日本経済団体連合会(経団連)は雇用維持と事業継続を最優先にするため一律の賃上げを打ち出さない方針を示すなど、今後の賃金動向が大きく注目されている。

そこで、帝国データバンクは2021年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2021年1月調査とともに行った。

2021年度の賃金改善見込みは42.0%、2014年以来7年ぶりの低水準に

2021年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業は42.0%となり、2014年度見込み(46.4%)以来の水準まで落ち込んだ。

2020年度見込み(53.3%)と比較しても11.3ポイント減少している。一方、賃金改善が「ない」と見込む企業は28.0%となり、同様に2014年度に近い水準まで高くなっている。また、「分からない」とする企業も30.0%と5年ぶりに3割台となり、総じて2021年度の賃金改善には慎重な見方をしている様子がうかがえる。

賃金改善状況の推移

2021年度の賃金改善見込みを規模別でみると、大企業は38.2%となり、中小企業(42.9%)を下回った。小規模企業でも37.0%と4割以下となっている。業界別では、依然として人手不足が顕著な『建設』の47.8%が最も高い。また、2020年度見込みと比較すると、旅行代理店や旅客自動車運送など観光関連業種を含む『運輸・倉庫』(36.7%)では18.5ポイント減となるなど、賃金改善見込みは大きく減少した。

賃金改善が「ある」割合 ~ 2020 年度見込みと2021 年度見込みの比較、規模・業界別 ~

賃金改善の具体的内容、ベースアップ、賞与(一時金)ともに大幅に減少

2021年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が35.9%で、2020年度見込みから9.3ポイントの大幅減だった。「賞与(一時金)」は20.3%となり、同6.0ポイント減という結果になった。国内景気の回復とともに、2018年度見込みまではいずれも増加傾向であったものの、2021年度見込みでは大幅に落ち込む格好となった。

企業からは、「雇用確保の観点からベースアップは最低限行いたい」(内装工事、愛知県)という意見がありつつも、「新型コロナの影響がどう出るか分からず難しい」(各種商品卸売、千葉県)や「この状況だと毎月の給与額を維持することで手一杯で、賞与は出せない」(デザイン業、東京都)といった、現状の厳しさに関する声が多くあげられていた。

賃金改善の具体的内容 ~ 各年度の推移 ~

賃金改善しない理由、新型コロナウイルスによる「自社の業績低迷」が7割

2021年度の賃金改善が「ある」企業にその理由を尋ねたところ、「労働力の定着・確保」(78.7%)がトップとなった。過去最高となった前回調査(80.6%、2020年1月)より減少したものの、依然として高水準にある。次いで、「自社の業績拡大」(34.1%)や「同業他社の賃金動向」(16.5%)などが続いている。

他方、賃金改善が「ない」企業の理由では、「自社の業績低迷」が76.7%となり、前回調査より18.6ポイントの大幅増加となった。自社業績の拡大や低迷に関して、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響によるものかを尋ねたところ、新型コロナの影響による「自社の業績拡大」は11.0%、「自社の業績低迷」では69.4%にのぼった。賃金改善をしない企業のうち7割の企業は新型コロナによる業績の低迷を理由としていることが明らかとなった。

賃金を改善する理由・しない理由・自社業績による賃金への影響 (新型コロナウイルスの要因別)

雇用契約別の賃金の変化、フルタイム正社員とその他で増加する割合は大きく開く

2021 年度の賃金動向 ~ 雇用契約別 ~

2021年度の賃金の変化を雇用契約別に尋ねたところ、賃金が「増加する」割合は「フルタイム正社員」が36.9%で最も高かった。次いで「外国人労働者」が18.9%となり、その他の項目も2割以下で続いている。特に、「派遣労働者」は7.9%となり、1割を下回っている。

企業からは、「パート社員の待遇(最低賃金等)は全国的に高まりを見せているので、人材確保の観点からも可能な限りこれに沿った対応を検討したい」(駐車場、福井県)や「新型コロナウイルスの影響で外国人技能実習生が入国出来ておらず、人件費が高い派遣社員を採用しているので以前より少し人件費が高くなっている」(溶融メッキ、広島県)、「均衡や均等など、契約社員やパート社員の労働条件について見直しを行っている」(一般土木建築工事、岩手県)といった、さまざまな要因から賃金の見直しを行っているとの意見が多くみられた。

2021年度の総人件費が「増加」と見込む企業は54.2%、前年度から14.7ポイント減少

2021 年度総人件費の見通し

2021年度の自社の総人件費は、2020年度と比較してどの程度変動すると見込んでいるか尋ねたところ、「増加」[1]する企業は54.2%と前回調査(2020年1月調査)から14.7ポイントの大幅減となり、「減少」は15.7%(同7.7ポイント増)だった。

2020年度見込みまで7割前後となっていた総人件費の増加傾向は、新型コロナウイルスを主因とする企業業績の低迷や先行きの不透明感などによって急激に鈍化する結果となった。総人件費増加率は平均1.54ポイントとなり、2016年以降で最も低くなった。

業界別では、『建設』(60.1%)が唯一6割超となった。次いで『サービス』が56.0%で続き、そのなかでも特に「医療・福祉・保健衛生」(72.8%)や「情報サービス」(69.8%)、「メンテナンス・警備・検査」(64.1%)のような人手不足が目立つ業種では総人件費を増加させる傾向がみられた。

2021 年度総人件費の増加見通し ~業界別~

[1] 「増加」(「減少」)は、「10%以上増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計

新型コロナで鈍化も、人手不足解消に向けた賃金改善の動きは続く

2020年の国内景気は新型コロナウイルスの影響で大きく後退し、企業業績に著しいダメージを与えた。現状では事業継続と雇用維持が最優先とされているものの、個人消費の盛り上がりを左右する賃金動向は一層注目される。

そうしたなか、本調査の結果をみると2021年度に賃金改善を見込む企業は42.0%だった。5割超が続いていた2020年度見込みから大幅な減少となり、2014年度見込み以来の水準まで落ち込んだ。

総人件費も「増加」を見込む割合が2020年度より10ポイント以上減少し、総じて賃金改善の勢いは大きく失われていることが示唆される。賃金改善をしない理由では、7割の企業が「新型コロナウイルスによる自社の業績低迷」をあげており、その影響の大きさがうかがえる。

本調査では、新型コロナウイルスの影響が主因となり賃金改善の動きは鈍化する結果となったが、賃金改善をする理由では「労働力の定着・確保」とする傾向は変わっていなかった。そのため、直近こそ割合は低下しているものの人手不足が慢性化しているなかで、その解消に向けた賃金改善の動きは今後も続くとみられる。

構成/ino.

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