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どこまで使える?日本で初めて薬事承認を取得した世界初のニコチン依存症治療用アプリ「CureApp SC」

2021.02.23

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

「行動変容」の視点を持ち「治療空白」をカバーする治療用アプリ

疾患治療用アプリを開発している「CureApp(キュア・アップ)」が発売した、ニコチン依存症を対象とした禁煙治療用アプリ「CureApp SC」が昨年12月、日本初の疾患治療用アプリとして薬事承認を取得し、保険診療内での提供を開始した。

医療機関の禁煙外来にてニコチン依存症と診断された患者に対し、医師が「CureApp SC」を処方した場合、患者は保険適用(3割負担で半年間の利用で7620円)でアプリを使用することができる。アプリでの禁煙治療が保険適用となったのは世界で初めてとなる。

従来の治療法は、医師の診断で処方した薬を使う薬理学的観点からの治療、手術、処置といった医療機器を用いた解剖学的観点の治療だったが、それだけでは治りきらない病気もあり、膨大なコストがかかる新薬の開発は社会的にも負担になっていた。そこに新しい治療戦略として登場したのが「アプリで治療する」という考え方。世界中で開発が進んでおり、新産業として注目されている。

治療用アプリは「⾏動変容」という新しい治療アプローチが特長。例えば、高血圧の場合、薬を飲めば血圧が下がるが、生活習慣や食生活といった血圧が上がる背景となる要因が関連しており、薬を飲み続けなければ血圧が上がってしまい根本的な治療につながっていない。そこに対してアプリを使って患者の生活習慣や考え方を根本的に変える、行動変容の視点を用いたのが治療用アプリだ。

患者の行動変容を促すには、日々の生活への介入が大切だが、外来診療の場合、4週後、8週後と間隔をあけて通院するため、医師が患者の生活習慣に介入できず、「治療空白」ができる状態になる。病院では患者に医師が薬を処方したり、家での生活をアドバイスするが、病院に行っていない間の治療改善の行動を、患者自身で完全にコントロールできる人は少ない。

禁煙治療の場合、限られた外来診療の中で十分なケアが難しいことが課題となっており、禁煙外来の治療では、1年後も禁煙を継続できている人は3割ほど。お金をかけて治療しても7割はまた吸ってしまう状況になっている。

そうした治療空白に対して、手元にあるアプリから医学的に正しいエビデンスに基づいたアドバイス、疾患の教育、毎日の記録管理を通じて、生活改善を定着させていくのが治療用アプリの役割だ。

行動や考え方を変えることで治療ができる治療用アプリと相性が良い疾患も多く、ニコチン依存症もそのひとつ。

ニコチン依存症は身体的依存と心理的依存があり、心理的依存は起き抜けのタバコ、ストレスを感じたときの喫煙、お酒を飲むと吸いたくなるといった日々の習慣に依るもの。心理的依存はタバコに対する考え方、日々の行動を変えないと成功できず、この点が今までの禁煙治療では十分改善されなかった。治療用アプリではこうした心理的依存をカバーしていく。

CureAppは慶應義塾大学医学部の先輩、後輩だった佐竹晃太氏、鈴木晋氏の2人の医師が2014年に立ち上げた治療用アプリを提供する会社で、代表取締役CEOの佐竹氏は日本赤十字社医療センターに勤務する現役の呼吸器内科の医師。禁煙治療を行っていた経験から、最初のプロダクトは禁煙治療用アプリとなった。

臨床的エビデンスでは、CureApp SCアプリ使用をした場合と使用しなかった場合の、アプリ使用期間(24週間)を終えた時点の継続禁煙率の差は13.4%。別の試験にはなるが治療薬の治験では24週で8%程度の差となっており、アプリの治療効果が出ていることが明らかになった。治療開始後52週後の継続禁煙率でも10.8%の差が見られ、治療効果の持続が確認できた。

臨床試験もアプリの使用に関連性がある有害事象は認められず、副作用を気にする必要がないので、医師としても安心して患者に処方を出すことができる。

また、治療用アプリ開発は新薬開発よりも圧倒的に低いコストでできるのも大きなメリット。治療効果は医薬品と遜色なく、費⽤対効果の高い治療法で医療費適正化に寄与し、医師がパソコンひとつで処方できるので、医師や病院による格差が改善され、治療の標準化にも寄与する。

CureApp SCの機能

CureApp SCは、患者アプリと医師アプリ、呼気CO濃度を測定するCOチェッカーで構成。料金は診療費として支払う。医師が処方すると処方コードが発行されて、それによりダウンロードしたアプリが実際に治療用アプリとして使えるようになり、COチェッカーは自宅に直送される。従来の禁煙外来の通院と並行してアプリを使用する。

行動変容を促すための患者アプリには4つの機能がある。「治療プログラム機能」は、ニコチン依存症について理解を深める機能。ニコチン依存症の離脱症状に一人で取り組むには限界があり、まずニコチン依存症とはどういったものなのか、正しい知識を学ぶことから始める。様々な不安や患者の状況に合わせて、医学的エビデンスに基づいた適切なアドバイスをテキストや動画で提供する。

「禁煙日記機能」は患者自身で測定した呼気中の一酸化炭素濃度、服薬状況、体重、喫煙欲求などの日々の禁煙状況を記録。COチェッカーの測定値はグラフで表示、吸わない場合は緑のラインにグラフが表示される。

「実践管理機能」は患者ごとに適した禁煙テクニックをチェックリストで管理。ユーザーにあわせたリストが毎日提案される。

「チャット機能」は高齢者でも使いやすいように、文字入力ではなく選択肢を選ぶスタイル。吸いたい欲求に駆られたときはナースコールボタンを押してチャットでやり取りする。喫煙者にとって喫煙欲求が高まっている時に冷静に代償行動を取るにはハードルがあるが、アプリにSOSを出すナースコールの1タップはハードルとして比較的低く行動しやすい。

チャットでの会話の流れは、共感を示す→吸いたい理由を確認→解決につながると考えられる代償行動法の具体的なアクション(ガムを噛むなど)をユーザーに提示→吸いたい気持ちが収まったのを確認→残っている場合は別の策を提示する。

吸いたい気持ちは5分程度で収まるとされており、吸いたくなったら違うことをしようとアプリが提案を行い、チャットのキャラクターに促される形で自然と冷静な判断ができるようになる。

治療用アプリは、コロナ禍以降増えているオンライン診療とも相性が良い。治療、処方の対面コミュニケーションを画面を通じて行うオンライン治療の中で、アプリはその合間を埋める役割を持つ。

オンライン診療の課題として問診の質の低下が言われているが、アプリを使うことで、患者が入力した情報を医師側のアプリで共有できるので、診察と診察の間に患者がどのような行動をとってきたか、どういう状態か医師にも伝わるので、オンライン診療に限らず問診の質が上がると期待される。

【AJの読み】高血圧、糖尿病、アルコール依存症、うつ病など、治療用アプリは注目大

塩野義製薬と大塚製薬がうつ病治療用アプリ、アステラス製薬が糖尿病アプリと、日本の製薬会社が海外のアプリベンチャーと業務提携の発表しており、近年、治療用アプリは新産業として注目されている。

CureAppでも現在、高血圧治療用アプリを自治医科大と、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)アプリを東京大学と、アルコール依存症に対しての減酒支援アプリを久里浜医療センターと、副作用の管理、栄養状態の管理等を支援できるがん患者支援治療用アプリなどを第一三共と共同で研究開発を行っている。治験、臨床試験の段階のアプリもあり、高血圧は治験を経て、2年以内に実用化を目指している。

すでに運用されている禁煙治療用アプリについては、「薬以外に治療の武器が増えたという感覚」と、治療に当たる医師からの反応も良いとのことで、患者が医師との関係の中で使うというのが治療用アプリのメリットといえる。

私自身も高血圧、境界型糖尿病で、医師から生活についての指導を受け、実践すべき事が書かれた資料を山ほどもらうが、診察後の3日ほどは食事や生活を意識するものの、1週間後には「なあなあ」になってしまう。

患者の状態を良い意味で監視、管理する治療用アプリは、日々の管理や意識付けが必要な疾患と確かに相性が良いと感じる。アプリによりサボっていたことや、自分のダメな部分も浮きぼりにされ、次回の診察で医師に突かれると、治療に対する意識がより高くなるのではないだろうか。

文/阿部純子

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