
■茂木雅世のお茶でchill out!
ここのところ、試飲をしてお茶を購入することが極端に少なくなった。
イベントが軒並みオンラインでの開催に切り替わったことで、お茶の味わいを確かめてから購入するという当たり前の流れが、変わってしまった。
その分、今まで以上にそのお茶に込められたストーリーや想いなどを知り、共感したものを購入することが増えた。
そんな折、ちょっと気になるお茶を発見した。
お茶の味わいや香りを音楽として表現し、 “聴いて買う”という楽しみ方を提案している その名もTEA’SICというお茶。
お茶を飲んだ時に感じる苦みや甘み、うま味などをフレーズやリズムとして表現し、一曲の音楽にしているというTEA’SIC。
なんともユニークで、新しいお茶の楽しみ方だ。
このTEA’SICを手掛けているのは、音楽制作事務所「時の醸造所」。
長年、音楽と飲食に携わってきたという代表の鈴木健司さんが、味わいや香りといった食体験を音楽化し、製品化している。
日本茶の音楽を手掛ける前には、クラフトビールや日本酒といった飲み物も音楽で表現してきたという鈴木さん。
100種類100曲を超える作曲をした経験の中で、味わいの中にある塩味や酸味、甘味、苦味、旨味、辛味や渋味、えぐ味などの中でもうま味にあたる“アミノ酸”の余韻が、音楽を作る際に一番影響してくることがわかったという。
そこで、比較的、アミノ酸が強く感じられる3種類のお茶をTEA’SICのお茶としてセレクトし、それぞれのお茶を一曲の音楽に仕上げた。
どんな風に作曲していくのかを尋ねてみると
「お茶を飲んで、目の前のパソコンとキーボードに向かって、そのまま曲に落とし込んでいくだけなんです」とにっこり。
とにもかくにも、体験してみたいと思い、東京・有楽町にあるmicro FOOD&IDEA MARKETで開催された、買う飲むのニューノーマル『音楽のスキで買う日本茶・日本酒のインスタレーション』の会場に足を運んでみた。
インスタレーションの場にあったのは、お茶とQRコードがついたシンプルなお茶の説明パネルのみ。
パネルには農園の名前やお茶の名前の他に、そのお茶を飲むと良いシーンと解説が書かれている。
QRコードを読み取り、再生される音楽を聴きながら、お茶を感じる。
それぞれのお茶の特徴が、リズムや音として表現されているからなのか、聴いているだけでそのお茶の味わいが見えてくるから不思議だ。
「言葉よりもお茶の味わいを理解しやすい」という人さえいるのではないだろうか。
あえて、お茶の情報は読まずに、曲だけを聴いて、“好きなお茶”を見つけてみた。
私が選んだのは、静かに雪が積もっていく様子を見ているような心も身体も落ち着く一曲。
お茶の種類は香川県産の和紅茶だった。
飲んでみると、ざわざわとしていた心が静かにおさまっていくようで、まさに今日の私に合っている。
普段は、品種や産地などそのお茶の情報を理解したうえで、お茶を購入するのだが、ただただ感覚的にフィットする音楽をチョイスし、お茶を買う。
いつもとは違うお茶との出会い方に、とてもワクワクした。
鈴木さんはこう語る。
「うまみが強いお茶というと玉露が浮かびますが、気軽に飲んでもらいたいという想いがあったので、普段から飲めるお茶をあえて選びました。iPhoneで音楽を聴きながら、お茶を飲む…それだけで、どこにいても余白が生まれます。情報ではなく音楽でお茶を選べるので、外国の方はもちろんですが、今まであまりお茶を飲んでいないという方にも、感覚で“好き”を見つけてもらえると思います。」
今後は、お茶を飲みながら、音楽を聴くことで、そのお茶がよりおいしく感じる…そんな商品も企画しているのだとか。
曲から選ぶお茶TEA’SIC。
普段だったら出会えないようなお茶に出会う、そんなきっかけになるかもしれない。
TEA’SIC https://camp-fire.jp/projects/view/312288
文/茂木雅世(もき まさよ)
お茶好きが高じて、2009年仕事を辞めてお茶の世界へ。2010年よりギャラリーやお店にて急須で淹れるお茶をふるまい始め、現在はお茶にまつわるモノ・コトの企画・商品プロデュース・コラム執筆やメディア出演などの活動を行っている。
ゆるっとお茶を楽しもうが合言葉の“ゆる煎茶部”代表。
FMyokohama「NIPPON CHA茶CHA」では最新のお茶情報を毎週発信中。
煎茶道 東阿部流師範/日本茶アーティスト/ティーエッセイスト
オフィシャルサイト:https://ocharock.amebaownd.com/
Twitter:https://twitter.com/ocharock
@DIME公式通販人気ランキング