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【サステイナブル企業のリアル】「日本よりもはるかにモノづくりの敷居が低い、そこが中国の強み」太陽工房取締役社長・須藤 誠

2021.02.13

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 サステイナブル――持続可能、環境や資源に配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展。それらに関係する企業を紹介する新シリーズ。第2弾は小型のソーラーパネルを搭載し、モバイルできる電源を発明した男の物語である。

 株式会社太陽工房 取締役社長 須藤 誠さん(60)。従業員はゼロ、社員兼社長である。20年ほど前、自ら発明した太陽電池パネルと充電器で成型する、小型軽量モバイル発電・蓄電器、『バイオレッタ ソーラーギア』。“太陽を連れて行こう”がキャッチフレーズで、耐久力に優れ、太陽にかざしておくだけで、半永久的に充電が可能だ。

 山間部の気象や地震の観測装置、線路わきで線路の歪みを監視するセンサーの電源、災害時の衛星携帯電話用の電源等々、太陽電池パネルの大きさを改良し、幅広いジャンルに用いられている。香港を拠点に商社を営んでいた須藤さん、90年代後半のPCや携帯電話の普及、エネルギーの地産地消、小型軽量でモバイルできる電源、エコのトレンドを満たすもの――頭に思い描いていたこれらの焦点が、太陽電池パネルにピタリとあった。

モノづくりの敷居が低い、中国の底力

 香港や隣接する深圳は90年代、すでに数多の会社がひしめき世界の工場になっていた。須藤はインターネットで検索して工場を訪ね歩き、ドイツ系アメリカ人が経営するソーラーパネルを手掛ける会社を探し当てる。

 この会社のコア技術は、小型で薄く長寿命で割れにくい太陽電池パネルの製作だ。ポケットに入る、携帯電話と同じぐらいの大きさの太陽電池パネルを使った電源を考えていた須藤は、この会社の技術を応用すれば、丈夫で長持ちする太陽電池を制作できる感触を得た。

 ちなみに結晶シリコン系の太陽電池パネル(ソーラーパネル)に関して簡単に触れると、半導体と張り合わせたシリコンに、光を当てると発電する特性がある。発電した電気を集約して出力するのが太陽電池パネルだ。強烈な直射日光にさらされる過酷な環境の中に置かれるので、シリコンを保護する樹脂及び、基盤の劣化と熱膨張をいかに抑えるかが、屋外に据える小型ソーラーパネルの技術的な要となる。

「ああ、いいですよ、作りますよ」須藤が製品のスケッチを見せると、ドイツ系アメリカ人の経営者は、二つ返事で仕事を引き受けた。太陽電池パネルは目途が立ったが、パネルの外枠と充電器はどうするか。樹脂で作るといってもプラスチックは多種多様だ。香港・深圳にはプラスチックの成形工場だけでも無数にある。樹脂は劣化すると黄ばむがそれは避けたい。ネットで黄ばまない樹脂を使い、加工の経験ある工場に目鼻を付け完成図のスケッチを持ち込んだ。

「日本では町工場に見ず知らずの人がスケッチを持ち込み、こんなのを作ってほしいと言ったら、嫌がられて相手にされませんよね。でも中国は違う。有名な家電メーカーに部品を供給している工場でも、スケッチに目を通しこちらの話を聞いてくれて、“じゃ、やってみましょうか”となります」

 日本よりもはるかに、モノづくりの敷居が低い。そこが中国の強みだと、中国で長くビジネスをやってきた須藤は言う。

開発した小型軽量モバイル電源の全容

「太陽電池パネルと充電器は、PCやゲーム機に多く使われ、親しみやすいポリカーボネートで作ろう」「劣化で樹脂が黄ばむのは避けたい」「紫外線に強い物質を混ぜよう」「黄ばんでも目立たないように、青紫色にしようじゃないか」

 制作を依頼したプラスチック工場とは、そんな話し合いが繰り返された。ちなみにイタリア語ですみれを意味する「バイオレッタ」の商品名は、青紫色の製品の外観から命名した。

 さらに、エコは新製品の大きなコンセプトだ。

「回路設計は回路屋さんに依頼したんですが、環境負荷を避けたかったので、ビニールの導線を使わず、基盤に直接接続できるようにしたんです。破棄する時のことを考え基盤、プラスチック、金属部分と、全部分解できるようになってます」

 開発におよそ2年、「バイオレッタ ソーラーギア」の発売は2000年6月。同時期に今の会社も設立した。製品は太陽電池パネルと、充電器で成型されている。充電器には充電式電池を2本搭載して、製品の大きさは手のひらサイズだ。パネルを太陽光に向けるだけで充電ができ、2.4~3.0Vの出力を得られる。左右に出力のジャックがあり、ケーブルを刺して電源を得る。発売の翌年にはUSBで出力できるアダプターも制作した。

「携帯電話はもちろん、すべてのデバイスに僕が作ったモバイルのソーラーパネルつけることを理想にしました」

地味だが確実なニーズ

 日本初の携帯できて、本格的な汎用型の太陽電池パネル付き電源器の発売に、テレビや雑誌等の取材が相次いだ。2001年度のグッドデザイン賞を受賞し、製品は徐々に認知されたが、

「現実はあまり売れませんでしたね」

――どうしてですか?

「砂漠の多い国なら衛星携帯を持ち歩くのでバッテリーは必需品でしょうが、津々浦々、電化されている日本ではその必要はありません」

――高価なことも、ネックだったのではないでしょうか?

「例えばソーラー充電式のガーデンライトやランタンは、安いもので数百円からありますが劣化します。うちの製品は半永久的ですが、充電式ニッケル水素電池を含めると5000円以上する。価格的にコンシューマーが受け入れられるものではなかった」

 だが、ニーズはあった。太陽電池パネルでの発電は、環境問題に関心がある欧州の大手アウトドアメーカーから今も注文が途絶えない。少量だが日本では、太陽電池パネルの大きさを改良し、気象観測装置や地震観測計、線路わきで線路のゆがみを監視するセンサー等、環境が厳しく無人のところに置かれ、停電が許されない観測機器に幅広く配されている。また、災害時の停電に備え衛星帯電話の電源等にも用いられている。

もっともサステイナブルなのは?

 微少な電気を発電する彼のオリジナルのデバイスが、バカ売れしたこともあった。

「驚いたのは2011年の東日本大震災の時です。防災グッズとして評価され、太陽電池パネルを大型にした1台6万円以上するものが、日に3000件ほど注文が来ました」

太陽電池パネルの供給は可能でも、製品は国内に借りた倉庫で、最大3人で組み立てているため、日産10台程度が限界だ。殺到した注文に到底、応じられない。ほとんどがキャンセルとなった。


 06年に大病を患い休業したのをきっかけに、従業員には辞めてもらい、役員も身内にして社長一人の会社になった。会社の売上げは年間5000~6000万円だが、会社を維持して彼の生活も成り立っていける。

 微少ながらも太陽光パネルによって、半永久的に電気を発生し続ける。そんな自ら発明した製品と、彼の人生と重なる。

「仕事が趣味なので大風呂敷を広げずに、坦々とやっていこうと……」

 実は、彼自身がサステイナブルな人なのである。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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