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宇宙をテーマにしたビジネス開発を支援する商社「Space BD」の創業者が語る宇宙ビジネスの魅力

2021.01.31

日本初の宇宙商社こと、Space BD株式会社(以下、Space BD)は2017年に設立されたベンチャー企業。創業から1年足らずで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協業を果たし、人工衛星の打ち上げや国際宇宙ステーション(ISS)の実験設備利用の仲介事業などを手掛けている。創業者で代表取締役社長の永崎 将利さんに、宇宙ビジネスの魅力を聞いた。

「突き抜けたチャレンジがしたい!」と飛び込んだ宇宙ビジネス

大手総合商社出身の永崎さんは、創業当時は、宇宙に関しては全くの素人……どころか『スターウォーズ』すら見たことがなかったと言う。宇宙商社はどのような経緯で生まれたのだろうか。

「前職の総合商社から独立して3年が経ち、このままだと私が起業しようがしなかろうが、世の中に何も変化を与えられないのではないかという気がしていました。例えるなら、自分の中でマグマが溜まり、噴火を待っているような感じでしょうか。そんなときに、お世話になっている投資家の方から“宇宙ビジネス”というアイデアをいただき、『そのくらい突き抜けたチャレンジじゃないと!』とその場で『やりましょう』と返事しました」(永崎さん)

それからは急ピッチで宇宙業界の動向をリサーチし、自身の経験が活かせるのではないかと、宇宙商社を構想したそうだ。

“宇宙”と一口に言っても、人工衛星やロケットの開発、打ち上げ、人工衛星が取得したデータの利活用等、多岐にわたる。その中でSpace BDが最初に目を付けたのは衛星打ち上げサービスだった。

「産業は、人と知恵、資金が入って、活性化していくもの。宇宙ビジネスを産業として成り立たせるには、より多くのプレイヤーの参入が必要です。衛星打ち上げは宇宙ビジネスをするうえでは、避けては通れない最初の入り口です。そのハードルを下げられれば、異業種やベンチャー企業など色々な人が参入できるのではないかという思想で打ち上げサービスを提供したいと考えました」(永崎さん)

とはいえ、畑違いの分野での挑戦に、最初は苦労を強いられたそうだ。民間向けに開放されているインドの宇宙研究機関のロケットを活用した衛星の打ち上げ仲介も考えたが、「日本人がなぜインドのロケットを……」と渋い顔をされ、なかなか商談には繋がらなかったと言う。

一方、日本の宇宙産業も永崎さんのような人材の参入を求めていた。官民の役割を明確化し、可能な部分は政府から民間へと移管させようとする動きが日本でも進んでいたのだ。Space BD創業から3カ月後、JAXAはISSの実験棟「きぼう」から超小型衛星を船外に放出する事業者を公募した。これまでJAXAが独占的に使用してきた「きぼう」の設備を民間に開放すると言うまたとないチャンスを逃さず、見事Space BDは事業者に選定された。まさにベストタイミングでの公募で、永崎さんは、創業の時期が半年早くても、遅くても上手くいかなかったのではないかと振り返る。

国際宇宙ステーション Credit JAXA/NASA

日本のキラーコンテンツを最大活用

近年は、ロケットに複数の衛星を搭載することで費用を抑える相乗り打ち上げも主流になってきている。ロケットで打ち上げて直接衛星を軌道へ投入するのと、ISSから衛星を放出して軌道に投入するのにはどのような違いがあるのだろうか。

超小型衛星がISS「きぼう実験棟」から放出される様子 Credit JAXA/NASA

「ISSからの衛星放出は、打ち上げが定期的にあることが大きなメリットです。お客様の衛星は、ISSに滞在している宇宙飛行士に食料や物資を届ける“定期便”に積むのですが、私たちは四半期に1回の打ち上げ枠を持っているので、万が一開発に遅延が生じてしまった場合でも3カ月後に打ち上げの機会があります。費用は相乗り打ち上げとほとんど変わりません」(永崎さん)

加えて、高い打ち上げ成功率を誇るロケットで打ち上げられるのもメリットだと言える。一方、ISSから衛星を放出する場合、投入できる軌道や高度が決まってしまうデメリットもある。ISSが周回している高度400kmより下に衛星を放出することになるが、衛星は徐々に高度が下がっていくため、高度500〜600kmから投入された場合と比較すると短い期間で大気圏に落ち、寿命を迎えてしまう。そのため、現在は打ち上げの方法は、衛星の目的によって使いわけがされていると言う。

そこで、次世代の打ち上げ方式として期待されているのが、補給船「HTV-X」だ。2021年度に運用が開始される補給船「HTV-X」の1号機の衛星放出技術実証ミッション事業についてもSpace BDが受託している。

「HTV-Xは外側に衛星を積んでおいて、ISSに物資を下ろした後、残った燃料で高度500kmまで上昇して、衛星を投入します。ISSから放出するよりも衛星の寿命を長くでき、ビジネスチャンスがあります」(永崎さん)

ISSに物資を輸送するHTV-XのメージCredit JAXA

ISSに物資を輸送後のHTV-Xから超小型衛星を放出されるイメージ Credit JAXA

HTV-Xは2020年8月に運用が終了した「こうのとり」の後継機。米国を中心に有人月面着陸を目指して進められている「アルテミス計画」では、月への物資輸送手段として使用される予定だ。

「月面開発には、創業時から携わりたいと思っていました。私たちが選定されているのは、あくまでもISSへの物資輸送後の衛星放出なのですが、月を見据えてHTV-Xについての知見を貯めながら、日本のキラーコンテンツをどのように使い、どのようにお客様を連れて来て、資産を最大活用していくのか検討していきたいです」(永崎さん)

アルテミス計画には日本も参画することが決定し、日本人初の月面着陸に注目が集まっているが、ISSも当面は現役続行の計画で、民間企業による利用が広がってきている。Space BDも、日本実験棟「きぼう」の実験装置利用の仲介事業を手掛けているが、一般向けのISS利用とはどのようなものがあるのだろうか。

「現在衛星を打ち上げる企業の多くは、技術の実証フェーズで、カメラやセンサなどの部品が宇宙空間で動作することが確認できれば、資金調達など次のステップに進めます。しかしながら、部品だけを宇宙空間に打ち上げることはできません。例えば5kgのセンサを実証したい場合でも、バッテリや通信機を搭載するとトータルの重さは10倍近くになってしまいますし、センサ以外の不具合によって実証に失敗してしまうケースも。ISSを利用できれば、部品のみを単体で送っても、ISSの電源と通信を利用して実証が行えるので、費用を抑えながら、対象の部品の機能をピンポイントで実証できます」(永崎さん)

ISS船外の実験設備に設置されたカメラから撮影された写真 Credit JAXA

Space BDは、エンターテイメントという切り口での宇宙利用の道も模索している。2020年12月には、損保ジャパン株式会社と共同で、写真をアルミ版に刻印してISSに運んで宇宙空間に晒す「写真の宇宙旅行」キャンペーンを行った。同キャンペーンはすでに応募を終了しているが、Space BDは今後も一般向けのISSと宇宙利用の裾野を広げていく考えだ。

「総合商社は『ラーメンからミサイルまで』と言われるように、宇宙商社のSpace BDが、宇宙が切り口であることなら何でもビジネス化していければ、自然と宇宙利用は広がっていくと思います。大事なのは、ISSや宇宙で何ができるかではなく、何をしたいかです。突拍子のないアイデアであっても、私たちSpace BDがビジネスに仕立てます!」(永崎さん)

Space BDの創業ストーリーは、小説『小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ』(アスコム刊)に綴られている。ぜひこちらも手に取っていただきたい。

取材・文/井上榛香

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