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スキルや知識だけに目を向けているとキャリア形成にダメージを受けるリスクあり

2021.01.26

■連載/あるあるビジネス処方箋

 今回は、会社員にとってのキャリア形成をテーマとします。昨年秋、人事労務のメディアで転職支援会社の役員にインタビュー取材をしました。1時間半前後の話の中で最も印象の深いものを次に抜粋します。


「転職を考えるうえで、以前は「キャリアが大切」と言われました。もう、そのような時代ではありません。一時期、「スキルで転職する時代」とも言われていました。現在は、スキルが陳腐化しやすくなっています。

 現在、転職市場においてはキャリアやスキル以上に大切なものがあります。高い価値があるのは、その人にひもづくネットワークやポータブルに持ち運びできる仕事やその進め方です。銀行員としての豊富な経験や高い金融知識はもちろん、例えば、企業経営者や地域の人とコミュニティーを作り、地域の金融機関や社会に貢献する力を持っていることが大切です。

 そのこと自体に、高い価値が生まれる時代になっているのです。金融知識だけで転職市場で勝負しようとすると、上手くいかない時があります。その場合の「上手くいく」とは、ご本人が転職先の会社できちんと納得できていることを意味します。心から納得できている方は、仕事のパフォーマンスが良くなっていく傾向があるのです。」


 私は、特に「キャリアやスキル以上に大切なものがある」といった指摘に共感するものがありました。この20年程、キャリアやスキルが強調され過ぎたように思えるのです。背景には1990年代後半から安定雇用にきしみが生じたり、成果・業績主義が浸透してきたことがあります。そこから「実力主義」といった考えが広まりました。

 確かに、会社員は機会あるごとにキャリアやスキルを考えるべきではあるのです。しかし、それらだけで現在の職場もしくは転職先で高い評価を受けることができるのかと言えば、そこまで単純ではないでしょう。例えば、私はフリーランスになったこの16年間で110人程の編集者と仕事をしてきました。経験やスキル、知識で他の編集者を圧倒するレベルに達していると感じたのは、数人しかいません。会社員が「抜きん出る」のは、とても難しいのです。

 そもそも、会社(この場合は、社員数500人前後以上とする)の仕事は各部署内で標準化、規格化、マニュアル化、共有化されています。そのようにしないと、この規模の会社は一定のスピードで社内が動かないはずです。逆に言えば、中小企業や創業数年以内のベンチャー企業の仕事が全般的に遅いのは、標準化、規格化、マニュアル化、共有化ができていないからです。個々の社員の考えや判断で仕事をする傾向が強いからとも言えます。それぞれの社員がバラバラに動くがゆえに、ムリ、ムダ、ムラが多いのでしょう。

 社員数500人前後以上になると、ある程度のスピードで進みます。社内が整備され、態勢が整っているからです。社員の仕事力もまた、標準化、規格化されています。例えば、広報担当者が他部署へ異動し、新たな人が担当者になっても、仕事力はさほど変わりません。このようにならないと、広報部(課)のスピードは維持できないはずです。

 個々の社員間で仕事力に大きな差をつけることは組織の構造上、難しいのです。このように考えると、前述の役員の「キャリアやスキル以上に大切なものがある」といった指摘は極めて正しいと思います。今後、日本企業の多くは一段と標準化、規格化、マニュアル化、共有化を進めるはずです。ムリ、ムダ、ムラを可能な限り省き、精強な組織にしないと、国内外の激しい競争で勝つことができないからです。

 役員は、「金融知識だけで転職市場で勝負しようとすると、上手くいかない時があります」とも指摘していました。確かに多くの業界で仕事の知識は大切ですが、それだけで抜きん出ることは相当に難しい。いや、不可能でしょう。仮に会社員が大学の研究者レベルの知識を持っていたとしても、おそらく、今の時代はそれを上回る会社員は相当数いるでしょう。

 キャリアやスキル、知識以上のものに目を向けないと、社内外の労働市場で高い評価を受けるのは難しいはずです。キャリアやスキル、知識で差別化しようとする発想こそ、時代感覚がずれています。実はキャリアやスキル、知識にだけ目を向けていると、キャリア形成に大きなダメージを負うことがありうる時代に入っています。

知識や技術の陳腐化のスピードは、どんどん早まっている

 ここで、参考になる識者の言葉を紹介しましょう。ややさかのぼりますが、10年前に、人事の研究施設・リクルートワークスの著名な研究員が取材時にこんなことを語っていました。会社員、特にホワイトカラーについて述べています。


「経済が成長し、市場が飽和すると、ホワイトカラーのあり方は変わっていかざるを得なくなるのです。例えば、営業部があり、部員がスキルによって、初級・中級・上級と3つのレベルに分けられるとします。

 成長期には市場にはニーズがたくさんありますから、初級レベルの営業力でも売ることは難しくありません。そして、より多く売るコツを身につけていくことでみんなが上級者になり、やがては管理職になっていきます。

 ところが、これが今のような成熟期になると、簡単に売れるようなモノはネット通販などに限られてきます。あるいは、自らのスキルを売るならば、コールセンターでの対応くらいになります。中級程度のモノは、代理店の仕事などになります。それぞれのニーズに合わせてソリューションを提供する難易度の高い仕事は、プロフェッショナルの仕事と位置づけられます。

 つまり、初級、中級、上級という構造が、以前のようにキャリアパスとしてつながっていないのです。上級な仕事以外は、仕組み化されたりアウトソースされたりしているわけです」


 そして今後、ホワイトカラーは2極化していくと説いていました。


「この動きは早いスピードで、まさに加速度的に進んでいます。今後は、より高いパフォーマンス(実績など)を出すことができる人と、そうでない人とにハッキリと分けられていくでしょう。

 前者になる人は、激しい競争により一段とその数は絞られるはずです。後者になる人は、主に単純労働をしていくようになります。これがアウトソーシングされたり、契約社員やパート、派遣社員などに託されることになるのです」


 さらに、こう結んでいました。


「これからは、プロフェッショナルな意識を持ち、仕事に臨むことがより強く求められます。大切なのは、知識を身につけたり、技術をマスターすることのみに注意を奪われないことでしょう。いまは、そのような風潮が強いように思います。

 それは先ほど述べたような、“2極化したホワイトカラー”の後者になる方向にアクセルを踏んでいるようなものです。知識や技術の陳腐化のスピードは、どんどん早まっています。グローバル化の流れの中で、ある領域の仕事が日本から消え去ってしまうことも起きています。特定分野の高度な知識や技術を持つことが、キャリアリスクを低減させるどころか、リスクを拡大していることにつながりかねないのです。

 前者のホワイトカラーになり、高い収入を得ようとするならば、職場の上司や周囲の人とうまく関わる力こそ、養うべきでしょう。それを私は“社会性”と呼んでいます。例えば、ディスカッションやリーダーシップ、コミュニケーションなどが該当します。若い人が苦手としている分野でもあるので、これらの力を身につければ今後、活躍できる可能性が高くなると思います」


 特に注目すべきは、次のことです。

・初級、中級、上級という構造が、以前のようにキャリアパスとしてつながっていない

・大切なのは、知識を身につけたり、技術をマスターすることのみに注意を奪われない

・知識や技術の陳腐化のスピードは、どんどん早まっている

・特定分野の高度な知識や技術を持つことが、キャリアリスクを低減させるどころか、リスクを拡大していることにつながりかねない

・ホワイトカラーになり、高い収入を得ようとするならば、職場の上司や周囲の人とうまく関わる力こそ、養うべきでしょう。それを私は“社会性”と呼んでいます。

 10年前、この識者の言葉を記事に盛り込んだ時、ネット上で「時代錯誤な見方。今は実力主義」といった指摘をする読者が相当数いました。私の周りにいた30代∼40代の編集者も多数が同じ捉え方をしていました。

 これらの人たちは、知識を身につけたり、技術をマスターすることのみをしているようでした。10年経った今、半数以上がリストラの憂き目にあったり、部下のいない管理職をしています。40代半ばになっても、非管理職のままもいます。部下がいたとしても、いわゆるライン(出世コース)からは完全に外れているのです。これが、現実です。

 この人たちが社内競争で負けた大きな理由は、“社会性”が欠けていたからだと私は思います。例えば、ディスカッション力やリーダーシップ、コミュニケーション力が著しく足りないのです。読者諸氏は、この人たちを反面教師として日々の仕事やそのスキル、知識はもちろんですが、周囲との良好な関係やリーダーシップ、コミュニケーション力などを徹底して学んでほしいと願っています。

 キャリアやスキル、知識の獲得だけに力を注ぐことを煽るメディアや識者の言論には警戒をしたほうがいいと思います。いずれ損をするのは、感化されたあなたになります。

下記は、この連載の過去の記事ですが、今回の内容をより深く取り上げています。ぜひ、ご覧ください。

社内で「あの人、ラインに乗ってるね」といわれる人物の共通項
「部下のいない管理職」とはいったい何者か?

文/吉田典史

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