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年末年始の暴飲暴食や正月太りを「過小評価」してしまうのはなぜか?

2021.01.18

 体重計を持っていないのだが、いよいよもって購入すべき時がきたのかもしれない。月並みな話ではあるがやはり体重管理のためだ。直近ではもちろん、年末年始の食生活が原因なのだが――。

年末年始の“暴飲暴食”が気になり2駅歩く

 個人的に年末年始はそれなりに休んで、やはり普段よりも食べて飲んだ。暴飲暴食をしたわけではないが、飲み食いしている時間がダラダラと長かったので結果的にそれなりの量を口に運んだことは間違いない。とすればやはり程度の差こそあれ、暴飲暴食をしてしまったといえるのかもしれない。ひとまずの解決策は歩ける時には歩くことだ。

 某所からの帰路、山手線に乗っていたのだが新宿駅で降りて2駅ほど歩くことに決めた。部屋に戻ってからも少し作業はあるものの、今日はもう急ぎの用事はない。歩くには良い機会である。

 冬至は過ぎたとはいえまだまだ日は短い1月の夕刻、新宿駅西口を出ると日は暮れていた。人出が少なく感じられる駅前の通りを青梅街道に向けて歩く。すぐ近くにある「思い出横丁」には久しく足を延ばしていないが、いろんな状況が落ち着いた頃には“ちょっと一杯”目的で訪れてみてもよいのだろう。

 広い交差点を渡り右折し、JRの高架橋であるいわゆる“新宿大ガード”を抜ける。西武新宿駅に直結しているショッピングモール「新宿PePe」を左折して、新宿プリンスホテルから西武新宿駅に沿ってどんどん進んでいくと職安通りにぶつかるのだが、最近になって通りを渡ったところから新大久保を抜けて高田馬場に到る広い道路が開通している。以前にも一方通行の細い道があったのだが、拡張工事によって現在は格段に歩きやすくなっていて、日常生活の中で歩くにはもってこいの道だ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 西武新宿駅前の道には飲食店も多く、気になる店もあるが今は歩くのが先決だ。飲食についてはひとまず高田馬場に到着してから考えることにしよう。職安通りを跨ぐ信号を渡ってさらに進む。

“正月太り”が気になってこうして歩いているわけだが、その事実はなかなか人には言いづらいかもしれない。年末年始に不摂生な食生活をしてしまうのはまぁ人情ともいえるが、自分から「暴飲暴食をした」と打ち明けるのは普通ははばかれるというものだろう。

 よほどの自虐的なキャラクターでもない限り、たいていの人間は他者に自分を好ましく思ってもらいたいと思っているだろう。そうした気持ちが強いほどに、ある意味では無意識に話を“盛る”ことは決して珍しいことではない。

 人から好意的に思われたいという一心で、自分の良い点を過大評価してアピールしたり、逆に悪い点を過小に報告したりする傾向は「社会的望ましさのバイアス(Social-desirability bias、SDB)」と呼ばれていて、各種のアンケート調査や面接、問診などにおいて正確性を阻害する要因として社会科学的に定義されている。自分がより魅力的に見えるように話を“盛る”ことは、一般的な傾向として存在しているのである。

 都会のど真ん中ではあるが、この通りはそれほど歩行者の往来もなく歩きやすい。昨今はこうした道路が各地で整備されることで、都内の車両の流れもどんどんスムーズになっている。

 人からよく思われたい、自分を大きく見せたいというのもまた人情というものかもしれないが、当然ながら度を過ぎれば疑惑を抱かれて逆効果になるばかりか、人間としての信用を失うことにもなるだろう。

 特にスポーツをやっていたわけでもないのに、学生時代に100メートルを10秒台で走っていたとか、野球のピッチングで球速が145キロあったと話す見た目がごく普通の人物に出くわしたことがある。もちろんその言い分を確かめる術もなく、本当のことであるのかもしれないが、あまりにも平凡な体格の本人を目の前にすればなかなか信じることはできない。そしてなによりもその話し方が自己アピールに満ち満ちていたのだ。事の真偽はともかく、こうした人物に対して疑問符がついてしまったことは否定できない。

ホリデーシーズンの不健康な生活の罪悪感を緩和するSDB

 大久保通りの交差点を越えて、さらに直進して高田馬場へ向かう。夜道の人通りはさらに少なくなってきた。“ゴール”はもうすぐだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ここまでくればかなり歩いたことになる。体重管理の懸念も少しは和らいだといえるだろう。もちろん明日以降も歩ける時には極力歩かなければならないが……。年末年始の不摂生が悔やまれるばかりだ。

 自分に対しては話を“盛る”ことなく現実を直視しなければならないともいえるのだが、やはり人の目を想定すればなかなか受け入れがたいバイアスが働くようだ。好ましい人物に思われたいというSDB(社会的望ましさのバイアス)は、年末年始やホリデーシーズンの不健康な生活の罪悪感を緩和するためにも働いていることが最新の研究で報告されているのだ。


 感謝祭とクリスマスの間の期間は、過度の贅沢によって特徴づけられます。私たちは節度を保って食べたり飲んだり、支出を管理したり、もっと運動したりしていることを他者に伝えていますが、実際にはこの正反対のことをしています。ではこの矛盾はどこから来るのでしょうか?

 多くの場合、センシティブな行動(体重増加、過食、深酒など)に関する質問に答えるとき、人々は悪い行動を軽視しながら社会的に「正しい」ように見せたいと思っています。心理学者はこの潜在意識反応を「社会的望ましさバイアス(SDB)」と呼び、人の実際の行動を理解しようとしている研究者にとって、これらの偏った反応は問題になっています。

※「Purdue University」より引用


 米・パデュー大学とオクラホマ州立大学の合同研究チームが2020年12月に「Humanities and Social Sciences Communications」で発表した研究では、実験を通じてホリデーシーズンの不健康な生活について人々の間にSDBのメカニズムが働いていることを実証し、その解決策を提案している。

 研究チームは人々にホリデーシーズンの過ごし方について質問するアンケートを行った。質問の内容とはたとえば「ホリデーシーズン中は他の時期よりも多くのアルコールを消費する」や、「私は体重を減らすことを新年の抱負にします」などで、参加者はそれにイエスかノーかで回答したのだ。

 収集した回答データを分析したところ、ホリデーシーズンの過ごし方の自己申告において、人々にはおしなべてSDBが働いていることが浮き彫りになった。アルコール消費量についてなど、最大で66%もの人々にSDBの傾向が見られたのである。ホリデーシーズンにおいて人々は、実際よりもアルコール消費量が少なく、健康的な食事をし、よく運動していると自己申告していたのだ。

 つまりホリデーシーズン中に行った“暴飲暴食”や“寝正月”などをたいしたことではないと過小評価し、運動など少しでも健康的なことをすればそれを過大評価しているのである。そしてこれはもちろん自分に都合よく話を“盛る”行為である。

 高田馬場のランドマークである商業ビル「BIGBOX」に繋がる下り坂の道を進む。この辺も飲食店が多いエリアだ。さて、帰宅する前にこの界隈で何かを食べてみてもよさそうだ。

“チープトーク”に背中を押されてご飯をお代わり

 坂を下りるとBIGBOXの反対側に書店などが入る商業ビルがある。1階にある某ディスカウントストアは相変わらず賑わっているが、このビルの地下1階はちょっとした飲食店街になっているのだ。通りかかったこの機会に地階に降りてみてもよいのだろう。

 B1のフロアにはラーメン店や串かつ店、餃子店、お好み焼き店や海鮮系料理店などよりどりみどりだ。どの店も人気店であることが入店状況やお客の流れからすぐに理解できる。ここで何か食べることに決め、店頭のディスプレイを見て食指が動いたとんかつ店に入る。ここでは“ちょっと一杯”はしないつもりであるし、せっかく歩いてきたのだから多少ボリュームがあるのも食べてもいいだろう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 2人がけのテーブル席に座らせてもらった。普通のロースかつの定食にするつもりであったが、次にいつ来れるのかわからないことでもあるし、この際だがらと1つグレードが上の「特選ロース定食」を注文する。定食についてくるみそ汁はとん汁がしじみ汁を選べるということで、しじみ汁を選んだ。メニューをよく見ると、ご飯とキャベツは1回だけお代わりが無料である旨が記されている。

 お新香と共に出された日本茶を一口飲んでまずは一息つく。場所柄決して広くはないが落ち着く店内だ。

 さて、年末年始休みの不健康な活動を過小評価し、健康的な活動を過大評価するバイアスが我々にはあるわけだが、このバイアスを生じさせない有効な方策はあるのだろうか。研究チームによればその鍵を握っているのが“チープトーク(cheap talk)”にあるという。

 経済学やゲーム理論で定義されているチープトークは、その名の通り安っぽく、薄っぺらい言葉であり、その真偽も定かでなければあえて意味を斟酌する必要が感じられず、発信者にとっても受け手にとってもあまり利害関係が生じない言及であると解釈できる。

 たとえば「お正月はアルコール消費量が増えましたか?」と面と向かって質問されれば、SDBが働いて実際にはけっこう飲んだとしても「それほどでもありません」と答えがちになることを、「お正月くらいはお酒飲み過ぎたって無理もない。で、どうだった?」とフランクに尋ねられればけっこう正直に答えやすくもなるというものだ。そして実際、今回の研究でもチープトークがSDBを弱めていることが実験で実証されている。

 料理が運ばれてきた。見た目からしてボリュームと美味しさが伝わってくる。まずは一切れのロースかつに大根おろしをつけて口に運んでみる。美味しい。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 小ぶりの茶碗ながらもけっこう盛られたご飯もすすむ。ドレッシングをかけたつけあわせのキャベツもどんどん食べられてしまう。とすると、やはり“お代わり”の二文字が頭に浮かんでくる。ご飯もキャベツも1回であれば無料なのだ。

 ……でも考えてみれば、そうすればけっこうなカロリーを摂取することになる。これはまさにSDBといえるもので今、自分は新宿から歩いてきたという健康的な行為を過大評価し、とんかつ定食を腹いっぱい食べるというやや不健康な行為を過小評価していることになる。しかしながらまだとんかつ本体は半分くらいあるのに茶碗のご飯はもう残り少なくなっていることも事実だ。

 隣の席の2人組のお客の1人が店員さんにご飯のお代わりをリクエストした。「やっぱりご飯足りない」という声がパーテーション越しに聞こえてくる。

 この声に背中を押されてしまった。続いて自分も店の人にご飯とキャベツのお代わりをお願いする。何の利害関係もない隣のお客の“チープトーク”に思わず自分の本心が奮い起こされたということかもしれない。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 さっそくご飯とキャベツが運ばれてくる。満腹になるのは確実だ。まさにSDBに屈服したことになるが、それをじゅうぶん自覚しつつ今回は自分を許してみたい。ともあれ今後のことを考えればやはり早急に体重計を購入しなければならないようだ。食べ終わって帰宅したらさっそくネットで体重計を調べてみようか……。

文/仲田しんじ

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