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AIで接客スキルを可視化してわかった「売れるアパレル販売員」のトークの特徴

2021.01.17

売れる販売員のトークには、どんな特徴があるのか? 販売員の経験がある人なら、一度は考えたことがあるだろう。その特徴がデータとして見える化できるシステムがある。

CRM(顧客関係マネジメント)のコンサルティングを行うスマートウィルが、AIを活用した分析ツールの開発を行うコグニティと開発した、アパレル販売員の接客スキル向上を支援するサービス「AIスマートトーク」がその一つだ。このAIスマートトークの分析データにより、売れる販売員のトークにはどんな特徴があるのか、事例を通して探る。

「AIスマートトーク」とは?

「AIスマートトーク」は、2019年7月にリリースされた、アパレル販売員の接客スキル向上を支援するソリューション。トークを記録し、定量的に可視化することで、ハイパフォーマーとの比較によって問題点を理解し、改善へとつなげることができる。

複数の販売員の接客販売時のトークを専用のスマートフォンアプリもしくはボイスレコーダーに録音し、ハイパフォーマーとローパフォーマーのトークの差を見える化。販売員が目指すべきモデルとなるトーク標準を作成する。

そして、目指すべきモデルとなるトーク標準を100点とした場合の、販売員一人ひとりの個別トークをAIにより自動採点する。そして、ハイパフォーマーモデルとの差異を改善ポイントとして示すレポートが出る。

一人ひとりのトークスキルを見える化することにより、自身の接客の癖や弱点を理解するとともに、目指すべき接客スタイルを意識することで、顧客とのコミュニケーションをより望ましい形に近づけていくことができる。

AIスマートトークで可視化される項目

このAIスマートトークでは、接客時に録音されたトーク内容について「情報構成」「ロジック構成」「話量」「質問数」の4項目で可視化される。

株式会社スマートウィルのプリンシパルである安藤美紀さんは次のように解説する。

【A】情報構成

「接客トークの『内容』を1.提案、2.客観的な説明、3.自分ごとに置き換えた説得、4.深堀した説明、5.その他の5つに分けて、全体を100%としたときに、1から5のどの情報から構成されているかを可視化します」

1.提案

お客様との会話の起点となるきっかけであり、お客様のニーズを把握しながらアイテムを紹介し、購入意欲を促すトーク内容。

2.客観的な説明

商品のサイズ、カラー、価格、日付、また在庫点数、割引率など、事実に基づいた商品説明。また、会員登録の方法やメリット、キャンペーン紹介など客観的な情報についてのトーク内容。

3.自分ごとに置き換えた説得

お客様の視点を加味した商品背景や効能、おすすめ理由などについての説得。自分ごとと捉えた主観的な根拠に基づき、お客様の共感を誘うトーク内容。

4.深堀した説明

具体的な事例、比較対象、商品を着用した感覚やイメージなど、詳細についての説明。お客様は商品に対する理解を深めることができ、問題点の解消につながるトーク内容。

5.その他

お客様と他の話題へ広がり、または商品の購入に対するリスクや懸念点を想起させるトーク内容。

【B】ロジック構成

「接客トークの『展開』を1.話が直線的に流れる、2.枝分かれした丁寧な説明、3.発散的、4.全体にまとまり、5.小さなまとまりの5つに分けて、どのような展開が多いかを可視化します」

1.話が直線的に流れる

話題が次々に続いていくパターン。同じテーマに対し、表現を替えて説明することで、ニーズをくみ取りやすくなる。

2.枝分かれした丁寧な説明

一つの話題から、詳細な情報が逐一補足されるパターン。聞き手を「分かった気」にさせることができるが、本質的な理解へつながらないことが多くなる。日本人が好む流れ。

3.発散的

一つの話題からたくさんの情報が補足されるが、話の流れがないパターン。「枝分かれした丁寧な説明」と似ているが、こちらには話の流れが存在していない。アイデアや意見が発散しがちであることを示している。

4.全体にまとまり

話題が一貫しているパターン。名文とされる文章はこの構造を持っていることが多く、説得力と納得感を持つマクロ構造であると言える。特に欧米人が好んで利用することが多いことが分かっている。

5.小さなまとまり

個別の話題がまとまりを持って説明されているパターン。それぞれの話題についての理解度が高くなる傾向がある。

【C】話量

「録音した接客トークをすべてテキスト化した上で、販売員とお客様の対話の量を文字数によって可視化し、割合を販売員の話量とお客様の話量の比率によって可視化します。当社事例では、ハイパフォーマーであるほど、話量が多くなるケースもあります。短い話量が望ましいという傾向もあります。業界や商材によって求められる話量は様々です。

販売員本人とお客様の話量の比率は、接客トーク全体を100としたときに、販売員とお客様が話した割合を比較解析したものです。ハイパフォーマーとローパフォーマーで通常は大きな違いは見られませんが、高単価であったり、機能説明が必要となる商材ではしっかりとした説明が求められるため、本人の話量の比率が多い傾向が見られます」

【D】質問数

「接客トークのうち質問部分を抽出し、その質問をCLOSED(クローズド)質問(Yes/Noで答えられる質問)とOPEN(オープン)質問(Yes/Noでは答えられない質問)に分けた上で、お客様からの質問数と販売員からの質問数を可視化します」

この4項目のほかに、トークパラグラフごとに、情報構成の判定結果と、良し悪しを判定することができるという。

一般的なテキストマイニングでは、接客トークを文言にぶつ切りした上で、特徴的な単語や単語間の関係を分析するといった可視化に限定されるが、それだけでは接客の良し悪しを判断することは困難だそうだ。

その点、AIスマートトークで利用されている解析エンジンは、コグニティが開発した独自の知識表現を用いているため、トークの内容や展開、質問の抽出といったことが可能となっており、「接客の良し悪し」を判断するための要素を数多く備えているという。もちろんすべての要素を網羅できているものではないが、その点が、AIスマートトークの特徴だ。

売れる販売員のトークの「情報構成」の特徴

では、売れる販売員のトークにはどんな特徴があるのか。事業が違う場合はもちろんのこと、同じアパレルブランドでも取り扱う商品によって異なってくるそうだ。売れる販売員のトーク内容の「情報構成」の特徴を、事例を通じて見ていこう。

●外資系ラグジュアリーアパレルの事例
~売れる販売員は「自分ごとに置き換えた説得」の割合が高い

「外資系ラグジュアリーアパレルの事例では、ハイパフォーマーは情報構成のうち、『3.自分ごとに置き換えた説得』の割合が高い点が特徴の一つとなっています。主要顧客が女性であり、商材がバッグなどの皮革製品が多いブランドなのですが、そうした商材をお客様が購入しようと決めるときには、素材や製法についての『4.深堀した説明』ではなく、デザインなどが自分の好みかどうかが重要であるため、『お似合いだと思いますよ』といった『3.自分ごとに置き換えた説得』が重要となると考えられます」

●紳士服アパレルの事例
~売れる販売員は「提案」の割合が高い

「紳士服アパレルの事例では、ハイパフォーマーは情報構成のうち『1.提案』の割合が高い点が特徴の一つとなっています。主要顧客が男性であり、商材がスーツをメインとした仕事服が多いブランドなのですが、そうした商材の場合、お客様はあらかじめ、ある程度購入予定商品を具体的に思い描いていることが多く、フィッティングにおいてサイズが合わなかったりした際に代替商品の提案があるかどうかが売上に寄与するため、『1.提案』が重要になると考えられます」

●グローバル住設ブランドの事例
~売れる販売員は「深堀した説明」の割合が高い

「グローバル住設ブランドの事例では、ハイパフォーマーは情報構成のうち『4.深堀した説明』の割合が高い点が特徴の一つとなっています。住設機器について詳しいお客様は少ないため、商品選択に必要な知識を豊富に有していることが売上に寄与すると考えられます」

「このように、情報構成一つをとってみても、商材によってハイパフォーマーの特徴は異なります。ロジック構成や話量、質問数などもハイパフォーマーの特徴を捉える要素となります」

「個別解析レポート」を踏まえて期待できる成果

AIスマートトークで個別解析レポートが出た後、それに基づいて各販売員が改善することで、どんな成果を出すことができるのか。

「レポートを見ただけで、すぐに接客スキルが向上するわけではありません。ハイパフォーマーの接客とはどういうものなのか、具体例を共有して理解を深める、継続的にAIスマートトークで自身の接客トークを振り返りながら良かった点・悪かった点を認識する、そうした継続的な取り組みによって、徐々にパフォーマーモデルを真似することができるようになります。弊社の事例では、そうした継続的な取り組みによって、販売員が『今の接客はだいたい70点くらいだな』と認識できるようになりました。

コロナの影響で、接客スキルの底上げによる売上改善といった明らかな結果は出ておりませんが、販売員に気づかれないように収録を実施するミステリーショッパーによる方法で実施したところ、ミステリーショッパー自身が感じた『接客の満足度』と、その際、録音した接客トークのAIスマートトークの『採点結果』には相関があることが確かめられています。このことから、ハイパフォーマーの接客を真似することでAIスマートトークの採点結果が向上すれば、お客様の満足度が上がり、買上率やリピート率の向上が期待できます」

コロナ禍においても、顧客はリアルのみならず、バーチャルでも『接客』による買い物を求めていることがスマートウィル独自のアンケート調査結果からも分かっているという。そのため、今後はリアルでもバーチャルでも満足度の高い接客サービスを提供することは、小売業に求められると考えられることから、よりAIスマートトークが活用できるのではないかと安藤さんは話す。

顧客との関係構築が重要といわれる中、自社商材が最も売れるトーク術を勘や熟練技に頼らず、「データ」で分析し、採用していくということは、今後、生き残っていくために必要になってくるのかもしれない。

【取材協力】
株式会社スマートウィル
データドリブンなCRM戦略を基軸とし、企業のマーケティング・コミュニケーション戦略のコンサルティング、プランニング、エクセキューションまでを提供。数多のリテール企業のサポートを通じ、実店舗のデジタルトランスフォーメーション支援のためのソリューションを開発・提供。
https://www.smartwill.co.jp

取材・文/石原亜香利

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