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【開発秘話】発売から2週間で年間販売目標の38万ケースを突破した「キリン 麹レモンサワー」

2021.01.18

■連載/ヒット商品開発秘話

 RTD(Ready To Drink:栓を開けたらすぐ飲めるアルコール飲料)の代表であるレモンサワーでいま、異彩を放ち目立っているものがある。キリンビールが2020年10月に発売した『キリン 麹レモンサワー』(以下、麹レモンサワー)である。

『麹レモンサワー』は同社のRTDでは初めて麹を使ったもので、レモンサワーに麹の旨味をプラス。麹を使ったことで健康感や手間ひまかけて丁寧につくられたイメージを持たせた。パッケージでは商品名の「麹」のほか、同社のRTDでは初めて、ビールでおなじみの「聖獣麒麟」を採用したのも特徴だ。

 年間販売目標約38万ケース(1ケース:250ml×24本換算)で発売したところ、発売から約2週間後の10月下旬に目標を達成。約67万ケースに販売目標が上方修正したが、これも約1か月後の11月下旬に達成し、100万ケースに再上方修正されたほど。いま勢いに乗って売れている。

麹の魅力はブランドコンセプトに生かせる

 開発が始まったのは発売の1年半ほど前。背景にあったのは、「健康的なお酒の開発」であった。

 キリングループは現在、ヘルスケアに注力しているが、酒類事業を担っているキリンビールはこのままだと、この流れから徐々に離れてしまいかねない。このため、キリングループの理念や事業の方向性を踏まえた上で事業の理想を模索。これからのキリンビールのあるべき姿を商品で示すために、健康的なお酒の開発を目指すことにした。

「お酒を割るのに使うものも健康感や素材感が感じられるものにすれば、キリングループがこれから向かおうとしているところや、高まり続けている顧客の健康志向に少しでも応えられるブランドができると考えました」

 このように話すのは、ブランドマネージャーを務めるマーケティング本部マーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当 主務の山﨑勝弘氏。健康的であり、お酒との親和性が高く美味しさが感じられる素材を、レモンサワーに生かすことにした。

キリンビール
マーケティング本部マーケティング部
RTDカテゴリー戦略担当 主務
山﨑勝弘氏

 条件に当てはまった素材は複数あったが、麹が選ばれたのは、麹が持つ「和」のイメージが他にはない独特なものだったからであった。

「麹のイメージを尋ねると、故郷のお婆ちゃんのような懐かしさや、職人の手仕事に裏打ちされた高い品質、親しみやすい、といった声が聞かれました。中には、故郷に帰ったときの家族との団らん、手間ひまをかけ発酵食品をつくる様子、古い蔵の様子といった、思い出と紐づいたものや郷愁を誘うような深いものもありました。これは麹以外に検討したものにはない特色で、ブランドの強みとして生かせるものでした」

 麹を使うことにした決め手を、このように明かす山﨑氏。ブランドコンセプトの軸に据えることができるほどの魅力を、麹に見出した。

鮭のおにぎりを食べながら試飲

『麹レモンサワー』は麹が持つ旨味成分(アミノ酸や他の代謝物)の豊かな味わいが特徴だが、レモンサワーの主役はやはりレモン。レモンの使い方も工夫した。その工夫とは、皮ごと搾ったレモン果汁の使用である。

 皮ごと搾ったレモン果汁を使うことにした理由を、山﨑氏は次のように話す。

「単純に搾ってできたレモン果汁ではなくほんのり皮の風味が感じられるレモン果汁の方が、より食事に合います。日本人は隠し味が好きですし、日本の食文化もアクセントとなる隠し味の存在が重要な役割を果たしてきました。食事と一緒にレモンサワーを楽しんでもらうためには、レモンの皮の風味は必要な要件だと考えました」

 目指すは食事に合うレモンサワー。ただ、初めて麹を使うことから、全体のバランスを取ることは容易なことではなかった。開発チーム内では活発に議論が行なわれ、ときには激論へと発展することも。「麹をしっかり感じてもらいたいという人もいれば、隠し味程度に使い少しだけ感じ取れればよく塩が効いている方がいい、という人などもいて、意見がすごく割れました」と山﨑氏は振り返る。

 麹、レモン、アルコール、炭酸感の微調整を繰り返し、つくった試作は数十。食事と一緒に飲んでもらい評価してもらった。相性がいい食事は旨味が豊かな和食で、試飲時は鮭のおにぎりを用意。レモンサワーとお米の相性はあまりよくないが、試飲した多くの人が「こんなに合うんだ」と驚きを隠さなかったという。

 麹を使うことから、製造には気を使った。工場ではビールをしていることから、ビール酵母への影響が懸念されたためだ。ビールの製造に影響を及ぼさないようつくるエリアを厳格に分けたり、麹とレモンを混ぜ合わせる工程を配慮したりするなど細心の注意を払うことにした。

 また、パッケージに採用された「聖獣麒麟」は、開発チームのメンバーから出たアイデアであった。山﨑氏は次のように話す。

「醤油や味噌、日本酒などのように、麹を使ってつくるものにある、手間ひまかけてつくったしっかりしたもの、というイメージと、キリンビールの商品に共通している本格感や伝統感には親和性があります。『麹レモンサワー』は手間ひまかけてつくったしっかりしたブランドであることを伝えるに当たっては、聖獣麒麟を使うと伝わると考えました」

SNSにはイラストの投稿も

 発売に合わせて、同社は2020年9月25日に、メディア向けにオンラインで商品発表会を実施する。発表会にはマスターブリュワー(味の総責任者)である田山智広氏が登場し、麹が持つ旨味などについて解説した。

メディア向けオンライン商品発表会でプレゼンテーションを行なうキリンビールのマスターブリュワー、田山智広氏

 発表会では試飲も実施したが、『麹レモンサワー』のほかに「北海道・噴火湾産ほたて燻製油漬」と「九州産いか明太」も事前に届けた。フードペアリングで、食事との相性の良さを体感してもらうことを狙ったのだ。なお、田山氏が勧める『麹レモンサワー』と相性のいい食事は、アミノ酸やたんぱく質が豊富な刺身、旨味のあるだしを使った煮物やだし巻き卵、アミノ酸が含まれている含む米。日本酒に合うもの全般と相性がいいという。

 発売後はイメージキャラクターに俳優の玉木宏さんを起用したテレビCMを放映。ガラスポットに薄く輪切りにしたレモンと麹を入れて漬け込む、製法をイメージしたシーンが印象的だ。このシーンは美味しさと手間ひまかけてつくるキリンビールのものづくりのこだわりを伝える上で効果的なことから、ブランドサイトでも公開することにしたほか、店頭に掲示するパネルにも活用されている。

テレビCMにも登場する製法をイメージしたシーン。実際の製造はこのような形ではなく米麹抽出物をブレンドしている(キリンビール公式YouTubeチャンネル「麹レモンサワー 麹できわだつ果実の旨み篇」より)

店頭での掲示に使うパネル

 また、Twitter上で断続的に、フォロー&リツイートキャンペーンや感想投稿キャンペーンを実施。感想では「やさしい味わい」「気づいたらなくなっている」「何本も買ってしまった」などといったもの投稿された。

「投稿された感想から、深く愛していただけていることが窺い知れました。食べ物と一緒の写真も投稿していただけていることも多かったです」と山﨑氏。Instagramでも、料理と一緒に写した写真が数多く投稿されている。中には、パッケージのイラストや料理とパッケージを一緒に描いたイラストを投稿する人もいるほどだ。

取材からわかった『麹レモンサワー』のヒットの要因3

1.健康志向にマッチした

 健康を考え食事に気を遣う人が増えたことを受け、麹を活用。発酵素材であることから健康感があり、昨今高まっている健康志向にマッチした。

2.食事に合う

 単体で飲んでも美味しいだけでなく、食事と相性がいいものを目指して開発。とくに和食との相性はバッチリで、普段の食事に合わせやすかった。

3.差別化が図れた

 レモンサワーはレモンの香りや酸味が印象に残るが、麹を活用したことで旨味を強調。味わいが日本酒やワインのように多義的で独特なことから、他のレモンサワーにはない差別化ポイントとなり、支持も得られた。

「麹の可能性はすごく感じます」と手応えを口にする山﨑氏。社内では麹を活用した新たなRTDの提案も出ていることから、今後広がりを見せることも考えられるが、今は『麹レモンサワー』を育てることに注力したいという。麹がもたらす旨味と奥深い味わいの可能性は、計り知れないかもしれない。

ブランドサイト
https://www.kirin.co.jp/products/rtd/kojisour/

文/大沢裕司

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