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少年たちを正しい道へと導いて散った男、煉獄杏寿郎に学ぶ「上司論」

2021.01.24

鬼滅の刃

今、最もアツい男・煉獄杏寿郎。老若男女問わず虜にする秘密は彼の生き様にあった。彼が遺した、現代社会に生きる私たちへのメッセージとは―新進気鋭の社会学者が徹底解説!

 SNSではファンたちが「#煉獄さんを300億の男にしよう」と盛り上がっています。おもしろいのは、みんな彼のことを「煉獄さん」と〝さん〟を付けて敬意をもって呼んでいることです。これは煉獄杏寿郎という一人の男が、炭治郎たちだけでなく現代を生きる私たちにとっても〈理想の上司〉だからではないでしょうか。

 煉獄さんは部下の炭治郎が上弦の参・猗窩座に侮辱された時「この少年は弱くない。侮辱するな!」と怒りを露にします。もし彼が「へへ、そうなんです。ウチの炭治郎が弱くてすみません」と言っていたら、当然これほどまでの人気は獲得できなかったでしょう。でも現実ではどうでしょう。部下や後輩がダメ出しをされたときに怒ることのできる上司がどれだけいるでしょうか。

 煉獄さんと現実の上司の違いは「自己犠牲」の有無です。多くの現実の上司は、部下が否定されても自分が否定されない限り保身に走ってしまうものです。組織に属している人が自己犠牲的に振る舞うのは難しい。自分の実績を作りたいしアピールもしたい。部下の失敗をかばうときも「失敗の責任をかばってあげた上司」という評価が欲しくなる。煉獄さんが自己犠牲的なキャラクターとして描かれている背景には鬼殺隊の柱として「生への執着」がないことがあるのですが、現実においては「生の執着」を捨てることは難しい。しかし、彼から学びを得るヒントはあります。

 煉獄さんや鬼殺隊には自分の名前を上げたいという功名心や承認欲求が欠如しています。劇場版で彼は、炭治郎たちに花形である鬼の討伐を任せ、自分は列車の乗客を守るという裏方に徹します。個人的な野望よりも組織としての目的を優先できているから自分の欲に振り回されないでいられるのです。

 立脚点を個人の野望ではなく組織に置くことができれば、立場や肩書で承認欲求を満たすこともなく謙虚になれるのではないでしょうか。現代の社会問題である「ハラスメント」は、多くの場合が上司という階級に依存した者が、階級を利用して立場の弱い者の主導権を奪うことで起こっています。一方、煉獄さんは鬼殺隊のトップである「柱」のひとりですが、その立場を悪用しようとはしません。いま一度、自分の肩書は何のためにあるのかを自問自答できればハラスメントはなくなるかもしれません。

 煉獄さんが200人もの乗客をたったひとりで守り切った活躍は劇中では一切描かれていません。それでも彼の成果は鴉が見ていてくれて、煉獄さんの上司である産屋敷に報告されます。現実は漫画の世界よりも残酷かもしれません。誰も見てくれていないこともあります。そういう意味では煉獄さんはフィクションなのですが、だからこそ上司として目指すべき〝理想〟が詰まっているのです。

『炎』

LiSAが歌う劇場版の主題歌『炎』の特装盤には、煉獄が大きく描かれた。ちなみに劇中、汽車内で食べていたのは「牛鍋弁当」(『鬼滅の刃公式ファンブック』より)。

鬼滅の刃

劇場のポスターには、煉獄が大きく描かれた。

鈴木涼美さん

作家、社会学者  鈴木涼美さん
1983年生まれ。元日経新聞記者。2009年東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。著書『AV女優の社会学』(青土社)。『鬼滅の刃』の推しは風柱・不死川実弥。

取材・文/峯 亮佑

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