
電気自動車の覇権をかけて「中国市場」から学ぶ教訓とは
中国で補助金が削減されたことを受けて、世界の電気自動車市場が変わっていく中、JATO Japan Limitedのレポートでは中国の自動車会社の世界を視野に入れた野望と、アジア以外の地域で強力な存在感を確立しようする中での世界市場への潜在的な影響も考察している。
10年弱で世界最大の電気自動車市場になった中国の歩みは、速く普及させるためには政府による介入が必要であることのよい見本となった。
国の政策と支援は、電気自動車業界が市場を切り開くためには必須である。特に、消費者信頼感はインフラ整備と競争的な価格設定に頼っているため、国家による介入は電気自動車市場の成功の方程式には不可欠なのだ。
中国以外の国に目を向けた場合にも明白だ。ノルウェーのように電気自動車を普及させるために、1990年代から協調努力を続けてきた国は大きな成果を上げている。対照的に、北米のように軽い規制を行ってきた国では、市場が盛り上がっていない。
中国は自動車産業の発展と改革のために注力しており、2035年までに世界市場の50%を電気自動車にするというボアオ宣言の目標を目指している。
欧州では次の電気自動車ブームが来ると言われており、世界の電気自動車をめぐる覇権争いはますます面白くなるだろう。
そして大きな困難にもかかわらず、感染拡大は、政府による補助金と介入を強めることで、欧州での電気自動車の市場拡大を加速させたようだ。
豊富な刺激策と、すでに確立されたブランドが排出規制を達成する目的以上の電気自動車を販売することに乗り気でなかったことが合わさり、中国企業が一段と力を増す明確な機会となった。
中国の自動車会社がこの課題に取り組んできたことは明白だ。例えば、歴史あるブランドが欧州の消費者に大きな影響力を持っていることを理解し、中国企業はその中に入り込む方策を探していた。中国ブランドをそのまま売ろうとするのでなく、欧米の自動車会社の株を買い占めたり、率直に買収するなどして。
おそらく中国企業が欧州市場で強固な基盤を固めるまでにはまだ時間がかかるだろうが、自国の人材を強化することや、欧米のメーカーと競合できる電気自動車をつくろうとする、長期的野心からそれることはないだろう。中国企業が自国で成功するに至った法則を挙げると、以下の様になる。
・廉価な電気自動車に力をいれる
・ 消費者の選ぶことができるモデルレンジを広くする(SUVも含める)
・ 欧米企業の車種よりも長い航続距離を実現する
・ テクノロジー好きのための車両
・ 消費者のデータを分析することから生まれるデザイン
・ 若い消費者へ強く訴求する
これらの項目が欧州市場に戦略的に適用された場合、多くの消費者に魅力を訴求できないとは考えにくい。
そのためおそらくは、電気自動車の世界市場拡大という点で見れば、中国企業が成功するかどうかと言うよりも、欧州市場に無事参入するまでには後どれくらい時間がかかるかが問題なのだろう。
構成/ino.
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