
マスク生活で口元が衰える!?
「まさか、年をまたいでマスク生活をしているとは思わなかったよ…」
新たな年を迎えて、こうこぼしている方はきっと多いはず。感染リスク低減のためとはいえ、マスクのつけっぱなしは、やはり気持ちのいいものではない。
ところで、想定外に長期におよぶマスク生活は、美容上の問題もはらんでいるのはご存知だろうか?
「マスクに隠れた口元は、どうしても緊張感がなくゆるみがちになってしまいます。つられて口角が下がり気味になったり、口が半開きのままだったり、口元が衰えてしまいます」と語るのは、歯科医師の末光妙子さんだ。
実際の話、コロナ禍以降に「ほうれい線が気になる」など、口元が老け込んだと感じた人が9割を超えるというアンケート調査がある。マスク生活とリモートワークの長期化で、会話の絶対量が減り、「発声に欠かせない舌の筋肉や顔の表情筋をあまり動かさなくなった」ことが主な原因だという。
早口言葉で口元が若返る
末光さんが、その対策として著書『小顔音読 - 歯科医師が教える、魔法の早口ことば』(ワニブックス)ですすめているのが、早口言葉の音読。それも、末光さん特製のひらがな文字の羅列だ。例えば―
かてぃる
とぅとぅ
るてぃか
呪文のようなこの言葉を、鏡の前で大きく3回言ってみよう。実はこれ、「初級編」の1つで難易度は低いほう。これが難しければ、「落ち舌」になっている可能性があるという。
落ち舌とは、黙っているときに舌先の位置が、下あごの歯列の内側についている状態を指す。統計的には約3割の人が落ち舌になっているが、これは舌の筋肉が衰えている証拠。正しい舌のポジションは、上あごに沿ってべったりと貼りつき、なおかつ舌先は、(前歯自体でなく)前歯の裏側の歯肉になる小さな突起部分に軽く添えられている。
末光さんによれば、落ち舌の人は「隣接している顔全体の表情筋もたるみがちです。そうなると目はたれて、口角が落ち、フェイスラインもたるむ。声まで老けた印象に」なるという。こうして実年齢よりも老け顔になってしまうのだが、それを改善するのが早口言葉の音読。舌とその周囲の筋肉に負荷をかける(=鍛える)ことで、舌が上のポジションへと戻り、顔のリフトアップ効果もあるという仕組みだ。
舌を鍛えて老け顔から脱出
落ち舌を改善し、老け顔をもとに戻す効果がてきめんと、末光さんが編み出したもう1つのやり方が「舌回しトレーニング」だ。
これは、いわば舌の筋トレ。落ち舌の原因は、インナーマッスルの舌骨上筋群の筋力低下なので、そこを鍛えて改善する。
『小顔音読』には6種類の舌回しトレーニングが載っているが、マスクしたままでもできる「歯ペロ運動」を紹介しよう。
STEP 1:舌で歯の表を1本1本触る。上の歯→下の歯、あるいは下の歯上→上の歯でも。
STEP 2:8周したら、今度は歯の裏へ。こちらも、舌で1本1本触っていく。
8秒ほどの休憩をはさんでこのサイクルを4回繰り返す。週に2回行う。
小顔ほぐしで顔のコリを解消
もう1つ、末光さんが指摘する盲点が「顔のコリ」。肩コリと同じように、顔の筋肉もコリ固まるのだという。「落ち舌で口がポカンと開いてしまう口呼吸の人は使わなすぎる口輪筋や表情筋が、歯を食いしばるクセや片側の歯ばかりでかむクセのある人は、使いすぎてしまう咬筋などが、それぞれコリ固まってしまう」と、末光さんは説く。
それに効き目があるのが、末光さんが医院でも施術するという「小顔ほぐし」。鎖骨下から唾液腺へと、全部で6つのスポットにアプローチするソフトな手技だ。『小顔音読』に一連の流れが掲載されているが、参考までに最初の2つを取り上げよう。
1:鎖骨下のリンパ節ほぐし
まず、滞ったリンパ管の「元栓」を開く。これは鎖骨下にある大きなリンパ節を指し、手でほぐしてリンパ液の流れを改善する。
片手を軽く握り、指の関節の部分を鎖骨下にあて、内から外側に向かってぐっと押し出すようにほぐす。左右各10往復する。
2:首のコリほぐし
太いリンパ管や大きなリンパ節が集中している首。ここの筋肉がコリ固まると、首から上に流れるリンパ液の流れが滞ってしまう。それを改善するのが「首のコリほぐし」で、肩コリ・頭痛・ストレートネックにも効果がある。
まずは、頭を前に倒し、首の後ろを触って、一番出っ張っている骨を確認。ここが、「首のコリほぐしの要」になるという。
次にフェイスタオルを用意。仰向けになって後頭部全体をフェイスタオルで覆う。そして、タオルの先を持って首の骨を軽く揺らす。1回5秒で3セット行う。
「目元はお化粧などで印象を大きく変えることができますが、口元や歯の状態は化粧では変えられない」と、末光さん。マスク生活が終息する時にそなえ、これらのセルフケアを実践してみるとよいだろう。
末光妙子さん プロフィール
歯学部を卒業後、日本大学松戸歯学部附属病院や一般歯科医院の勤務を経て、ホワイトニング専門医師への道を進む。2011年、虫歯予防の効果も得られるホワイトニングの普及のため、専門医院ミュゼホワイトニングの立ち上げに携わり、現在は同歯科医院を運営する医療法人の理事長を務める。企業や学校、歯科医院向けに様々なイベントやセミナーに講師として参画。2020年より新東京歯科衛生士学校の教育課程編成委員として「歯科衛生士の本質的な役割としての教育」という観点で学生の指導にも携わる。『小顔音読 - 歯科医師が教える、魔法の早口ことば』(ワニブックス)は初の著書となる。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)
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