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自粛要請を受けて会社が休業したら手当はどうなるのか?

2021.01.15

■連載/あるあるビジネス処方箋

前回と今回は、昨年3月前後から本格化した新型コロナウィルス(以降、コロナウィルス)感染拡大によって働く人の働き方はどうなっているかをテーマとします。

今回も前回同様、労働組合・全労連(全国労働組合総連合)の組織・法規対策局長の仲野 智さんに取材を試みました。全労連は、2020年6月末現在の組合員は99万4千人で、単産20組織、オブザーバー1組織、地方組織47組織。

全労連(全国労働組合総連合)組織・法規対策局長の仲野 智さん

Q 前回は、コロナウィルス感染拡大以降に生じている労働問題として、有給休暇の扱いを話していただきました。他にどのような問題がありますか?

仲野:非正規の労働者(以降、非正規)が、例えば、「週末に親類の葬式に出る」と上司に報告したところ、「2週間休むように」と言われたとする相談もありました。

これも(前回の記事で紹介したように)有給休暇ではないようなのです。これでは、休んだ2週間分の賃金が支給されません。おそらく、上司には過密なところに行った部下を職場には入れたくないといった考えがあるのだと思います。

感染拡大を防ぐことそのものに、私たちは異論はありません。しかし、こういう上司の対応は過剰、過敏なものではないか、と思います。そもそも、非正規であれ、正規であれ、週末の行動を、つまりは、プライベートなことまでを会社に報告する必要はないはずなのです。

Q 休暇の延長に、休業がありますね。休業の問題はいかがでしょうか?

休業も、労働相談に多いのです。本来、勤務日数の削減や勤務時間の縮小などで会社の判断で休業を行った場合、労働者に対し、契約どおりの賃金を全額支払う必要があります。正規、非正規であるかに関わらず、労働者には、賃金全額を請求する権利があります。

ただし、この民法を根拠にした請求では、会社が支払いを拒否した場合、裁判に訴えることはできても、労働基準監督官が会社を指導して支払いを命ずることはできません。そこで、労働基準法は「休業手当」の支払い義務を使用者に課しています。違反には罰則を適用し、労働者の権利を守るようにしているのです。労働基準法の休業手当の支払い額は、平均賃金の「6割以上」とされています。

労働相談で労働者から話を伺っていると、会社によっては、法律が求める最低限の額しか支払わないことがあるようです。中には、一切支給しないケースもあります。法律上は平均賃金の少なくとも6割は休業補償するべき、となっているわけですから、「一切支給しない」のは問題があります。

実際に私たちが労働組合として、その会社に話し合いを求めると、「休業補償する必要はない」と回答するケースが多いのです。

Q 政府の緊急事態宣言により、企業活動が停滞しているのでしょうが、それでも会社は休業手当を支給するべきなのですね。

国や自治体の「緊急事態宣言」にもとづく「自粛の要請」にそって企業が休業を判断した場合でも、「不可抗力による休業」とは言えません。休業手当の支払い義務が免除されることにはなりえないのです。

なんらかの方法で労働者を働かせることが可能であるのに、それをせず、会社が休業を判断した場合は、会社に休業手当の支払い義務があります。

ただし、都道府県知事が感染拡大防止のための「業務停止命令」をだすなどして、会社が休業を強いられた場合は、休業手当を支払う法的義務を、会社に求めることが困難になります。

その場合も、休業手当をあきらめる必要はありません。私たちの労働組合は、職場の労働者の要求を根拠として、会社に休業手当の支払いを求めます。同時に、会社の負担も考慮して、休業手当の負担を政府が助成する「雇用調整助成金」の活用を会社に勧め、支払い原資を確保する取り組みも行っています。事業と雇用の存続を求めるための公的制度は、そのほかにも、無担保・無利子の融資や家賃補助、自治体の協力金などがあります。

Q 非正規の人は、生活保護の受給を申請できないのでしょうか。

政府や地方自治体は「迷うことなく、生活保護の受給申請をしてください」とは言っています。しかし、緊急的な支援を想定しているとは思えないのです。例えば、昨年4月以降に人員整理になり、職を失ったりしている非正規は数か月後ではなく、今月や来月の生活費に困り果てているのです。

生活保護を申請し、仮に受給できるとしても、早くて数か月後になるでしょう。この間の生活費がないのです。あるいは、受給できるようになるためのハードルは、非正規の多くの人にとっては高いものなのです。

こういう問題は非正規だけでなく、形を変えて正規の労働者にも影響を与えているはずです。2020年4月1日には、「パートタイム・有期雇用労働法」※が施行されました。正規との間に不合理な待遇差を設けることが禁止されました。(前回の記事や今回の記事で紹介したような)正規との不合理な待遇差が本当に見過ごされてよいのでしょうか。

正規の人は、自分は雇用や賃金などの面で安全とは思っている場合がありますが、実は労働環境は非正規と正規は表裏一体なのです。

※「パートタイム・有期雇用労働法」

2020年4月1日に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行された。中小企業は、2021年4月1日からとなる。同じ会社で働く正規の労働者とパートや派遣などの非正規との間で不合理な待遇差を設けることが禁止されている。対象となる待遇は、基本給、昇給、賞与、各種手当(役職手当、通勤手当、家族手当、住宅手当など)や教育訓練、福利厚生(福利厚生施設の利用、慶弔休暇、病気休職など)など。

取材を終えて

私は1990年代初頭から取材の仕事をしているが、正規の労働者で非正規のことを真剣に語る人を1度も見たことがない。そのほぼ全員が、同じ職場に働く非正規を「よその会社の人」として見ているようだ。企業内労組の役員と話をした際に非正規のことを正規のように捉え、経営側に問題提起する人も1人も見かけない。

「非正規に無関心な正規」の問題を、新聞や雑誌、ニュースサイトのようなマスメディアはほとんど報じない。無関心な人が増えていくと、労働環境は正規、非正規を問わず、ますます悪くなっていく。そのことすら気がつかなくなっているのではないだろうか。

全労連のホームページ
「新型コロナウィルスに関する労働相談Q&A」
http://www.zenroren.gr.jp/jp/corona.html

文/吉田典史

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