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三十路で婚活貧乏だった私が猫で結婚できたワケ

2021.01.06

虹の橋を渡る日まで

結婚に至らなければ、婚活なんて楽しくもなんともない。

デートだってお金がかかるし、就活の様に「あんたは用無し、ハイ!次の女性」と相手に捨てられるのも、結構辛い(逆もあるけど)。

とはいえ、三十路の私には確かにもう後が無い。貧乏派遣の私にしては高額の入会金も振り込んだし、しばらくはこの会で相手を探してみるか。それにしても、どうして私にはピッタリの結婚相手が見つからないんだろうなあ。高望みはしていない。相手は普通のヒトでいいのに。

婚活をしていると、普通じゃない男性があまりにも多いのに驚く。極度のマザコン、潔癖症、人の話を全く聞かない男性、ジャージで現れた男性、無職・・・・・・どうして普通の男性と出会えないのかな。

と思いつつ玄関に向かうと、猫が毛玉をケロっと吐いた。前途不穏だ。これは私のジンクスだけれど、うちの猫が吐いた時は必ず何かが起きる。通勤電車が止まったり、祖母が亡くなった時も、予兆の様に猫が吐いた。今回の相手は職業がコンピューター関連というから、とてつもなく変な男性なのかも。ものすごく、不安になる。

でも、ファミレスを指定してきた無職男性の次だったので、今回の相手が指定してきたカジュアルなイタリアンレストランに、ちょっとホッとする。適度にアットホームで、コロナ対策でちゃんとテーブルの間が空いているし、従業員も感じが良かった。こういうお店は料理が美味しいはず。ダメなら美味しく食べて帰ろう。

「はじめまして、よろしくお願いします」と名刺交換して婚活デートのスタートだ。今回はまあまあいい感じのフェイス。会社帰りで、普通のワイシャツに普通のスラックス。髪もきちんとカットしているから、見た目は合格だね。

無難に趣味の話から。私が猫好きだと言ったらちょっと困った顔をして「ぼく、ペット飼ったことないんです」と、困っている。「じゃあ、犬と猫どっちが好きですか」なんてどうでもいい質問をしたら、「ええっ?うーん、どっちかなあ」なんて、かなり真剣に考えてくれて、真面目な印象で、悪くない。

グラスでもらっていたワインが空になって、若い女性店員さんが「ワインリストお持ちしますか?」とすすめる。私は「同じものお代わりで」と言ってボトルを断った(一本ぐらい軽いけど、最初から飛ばすのもね)。男性も「じゃあ僕も、あ、僕は次は赤で」と、私に合わせるのも空気読めて、良い感じ。こういうとこも、チェックしないとねー。

ウエイトレスさんが彼の後ろからグラスをテーブルに乗せようとした。彼は後ろから来たのに気が付かず、フォークをテーブルに置くために、肘を引いて、彼女のグラスをもった手にぶつけてしまった。

手から離れたグラスの中の赤ワインが、ぱあっと放物線を描きながら倒れて、見る見るうちに真っ赤に染まる白いテーブルクロス。私は思わず、小さく悲鳴をあげてしまった。

小さかったつもりの私の悲鳴が思いがけず大きかったのか、他のテーブルからも視線を集め、大惨事となってしまった。彼の白いシャツの腕がマダラの赤色になってボーっとしている。それがうちのマダラの猫によく似ていて、そういえば出がけにゲボッと毛玉を吐いたのを追い出し、「猫の予兆はこれだったのか!」と、思わず笑いがこみあげてしまったのだ。

大惨事なのに、彼はワイシャツを赤ワインで汚して困っているのに、なんだかもう、猫のお告げが当たって面白くて、下を向いてクツクツ笑っていたら、場が和んで、店員さんがわらわらと四方八方からやってきた。見る間にテーブルがきれいになっていく。

ああ、せっかく普通でいい感じの男性だったのに、こんな場面で笑っちゃダメだよなあ。猫が出がけに吐いたのが悪いんだよなあ。と思いながら、もうやけくそで店員さんに「すみません、つい笑っちゃって、あ、パスタはワインかかってないんで、これ、いただきます。マルゲリータは、もう一枚お願いできますか?え、サービス?嬉しい!」なんて、もう素を出してモリモリ食べちゃう。

その後の対応は良い感じだったし、赤ワインでマダラの袖の彼は顔を真っ赤にして笑っていたから、何だかもう吹っ切れた感じ。次はどんな男性を紹介してもらえるのかな、と思いながらレジ前で「ごちそうさまでした、ワイシャツ大変でしたね?クリーニングで落ちるのかなあ、ワインて」と言ったら、マダラの彼はまじめな顔をして、「クリーニング出せば大丈夫みたいです。すみません、そちらこそ、ワイン、ホントに服にかからなかったですか?」と恐縮している。

「私は大丈夫ですよ、汚れても平気な安いもんばっかですし」と言わなくてもいいことまで言ってしまった。これでもう、完全にダメだね。非常識で下品な女と思われただろなあ。まあいいや、次行こう。次。

「今夜はホントすみません。仕切り直してまた、次、ここで会ってもらえますか?」と驚くべきことを言ってきた。信じられない。二回目のデートに誘われるなんて、はじめて。「ぜひ、あなたと、結婚に向けて、真剣に、付き合って欲しいんです」肩を上下させながら、息切れ切れに言う。大丈夫かアンタ。夢なのか、コレは?マダラの袖がうちの猫の柄にそっくりで、これは猫神様の仕業ではなかろうか。

文/柿川鮎子(PETomorrow編集部)

明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

構成/inox.

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