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NTTによる「ドコモ完全子会社化」は何が問題なのか?

2021.01.09

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はNTTのNTTドコモ完全子会社化について議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

インフラを抱えるNTTの影響力

房野氏:11月11日に、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルをはじめとする電気通信事業者28社と、主旨に賛同した9社、計37社が、NTTによるNTTドコモ完全子会社化に対しての意見申立書を総務大臣に提出しました。これについて解説していただけますか?

房野氏

石川氏:NTTによるドコモ株のTOB(株式公開買い付け)が成功。その後、NTTによるドコモの完全子会社化が成立しました。でもその前に、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルほか、通信事業に関わる企業が意見書を総務省に提出していました。完全子会社化は認めざるを得ないんだけど、そうなることによって、光回線などのインフラの卸価格や接続料が上がるのではないか。上がった場合、借りるNTTドコモは赤字になるけれど、貸し出すNTT東西は黒字になり、NTTグループとしては黒字になる。ドコモ以外の借りる側は厳しい立場になるので、ちゃんと議論しないといけない、という内容です。

 KDDIの髙橋社長は、インフラを分離する議論があってもいいのではないかということを言っていました。インフラを持っている部門をNTT東西から切り離して会社として独立させて、そこに国やKDDI、ソフトバンク、楽天などが出資するインフラ専門会社を作ることによって不安を解消しようじゃないかという議論に持っていきたい、という話をしていました。どこまで実現するかはわからないけど、面白い展開になる可能性もあると思っています。

石川氏

法林氏:7割の光回線をNTT東西が持っているということは、石川君が言ったように、ドコモは赤字覚悟で借りることができてしまう。また、NTT仕様でネットワークが作られてしまう可能性がある。

 フレッツ網を使っているネットワークはNTT仕様で作られているので、そこの制限で、プロバイダとフレッツ網のつなぎ込みでスピードが遅くなってできないという話になっている。フレッツ網は遡るとISDN時代からあるけど、最初のフレッツで作ってきた「地域IP網」の進化バージョンが使われている。こういうことが起きると、せっかく1Gbpsで契約していても5Mbpsしか速度が出ない、なんてことが起こり得る。auひかりに関しては、そこまでひどい話ではない。これはIPネットワークの設計の差です。NTT仕様でネットワークが作られ、NTTの工事に適した機能ばかり抽出しているのでそうなる。

 携帯電話のネットワークでこういうことが起きてくると、NTTの仕様に合わせていかないといけないから、auやソフトバンク、楽天モバイルはネットワークを作るのが遅れてしまう可能性がある。だから、独占している会社には規制をかけないといけない。

 インフラシェアリングに対しては、確かにわかります。ただ、髙橋さんはずっと競争軸を語ってきた人なので、インフラシェアリングに対して疑問を持っているのかなと思ったら、割とポジティブにとらえていて意外に思いました。

法林氏

石川氏:そうなんですよ。ちょっとびっくりだったんです。

法林氏:僕は、「自社の仕様がなくなる可能性があるから、よく考えた方がいいと思う」と進言はしました。インフラシェアリングは競争軸がなくなって、コストが下がらなくなる可能性がある。こういう懸念もあるので、インフラシェアリングは相当、慎重に考えてやらないと危ないと思います。

 今や電電公社をイメージできない人があまりにも多いんですね。電電公社は昔、すべての電話を持っていた会社なんだけど、今は全部競争なので、それに相当する会社がないんですよ。NTTがNTTドコモを完全子会社化して「電電公社回帰だ、問題だ」といっているのは僕らみたいなおじさん世代だけ(笑)。若い人は「それ、何がマズイんですか?」と疑問に思う。

石野氏:今や存在していないんだから、そりゃ若い人にはわからないですよね。

石野氏

石川氏:本来は、大手の新聞とかが、きっちりと社説なりに書くべきなんだけど、新聞も結局、値下げ軸でしか見ていない。ということで、しっかりしてほしいと思う。

法林氏:「値下げするために完全子会社化した」という書き方をしている人もいるけど、それはどうかと思うね。

インフラシェアリングの是非

石川氏:たぶん、これから総務省で議論すると思うんですけど、5年、10年単位で日本の通信業界がどうあるべきかを考えないといけないのにと思うんですが、どうしても些末な議論になってしまう。

法林氏:やっぱりグランドデザインができていない。

石野氏:あの意見書のおかげで検討会が立ち上がることになり、もしかしたらNTTもNTT東西のインフラ共有化を呑むんじゃないかなと。

法林氏:呑むでしょう。彼らとしては足かせになっていたので。

石野氏:落とし所はその辺にあるんじゃないかな、という気はちょっとしています。そうなると環境が変わるかもしれない。

法林氏:KDDIの髙橋さんと話した時に出ていたのは、インフラシェアリングの会社が仮にできたとしたら、ネットワーク機能も含めたサービスレイヤーで勝負ができるようになってくる、ということでした。上位レイヤーで勝負できるから、それでいいと。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

房野氏:髙橋さんっぽい考え方ですね。

法林氏:いや、僕は逆だと思っていた。髙橋さんは対抗軸にこだわると思っていたので。

石川氏:KDDIはずっと競争で動いてきた。開業当初、彼らは全国にインフラを持っていなかったから、小野寺さん(KDDI 相談役 小野寺 正氏)の「私の履歴書」にも書いてあったけど、DDIの時(1984年頃)にマイクロ波を使って全国をつなげていた。自分たちが取材をしていた頃の小野寺さんは、ひたすらケーブルテレビ会社を集めていて、それでラストワンマイルを提供できるようにしたんだけど、髙橋さんになって「インフラシェアリングもアリなんじゃない?」という感じになって、自分も意外にと思いました。

 11月11日の3社の合同会見の時に、「この議論は最終的に(インフラ層とサービス層の)上下分離の話になるけれど、それぞれ立場が違うと思うので3社それぞれの考えを聞かせてください」と質問したんです。その時のKDDIの登壇者は、「状況を見て議論したい」という回答だったんですけど、先日のインタビューでは、髙橋社長の方から分離の話をしてきた。流れが変わってきた感じがします。もしかすると、何か裏でつながっているかもしれないという気もするんだよなぁ。

石野氏:ソフトバンクは、もともとそういう発想ですよね。

石川氏:ソフトバンクは10年前、NTTからインフラを引き剥がして民間会社を作って「光の道」を作ろうと言った。その民間会社にソフトバンクが出資するからと。その提案も、今やウェブサイトが1ページ残っているだけって感じですが。

 ただ、2020年夏、携帯電話料金値下げの議論が色々出ている中で、ある有名ブロガーが「今回の値下げ議論は本気だ」という話をしていたんですよ。1つはNTTドコモの国有化、もう1つはインフラだとそのブロガーが言っていたんです。だから、すでに裏でこの議論がされていたんじゃないのかな、とも推測しています。

法林氏:詳細はわからないけどね……。家庭への最後の引き込み、いわゆるラストワンマイルは、ずっとNTTが持っていたので、どうにもならなかったんですよ。料金は3分10円、最後は8.4円くらいになったけど、他はどうしてもそれより安い値段にできなかった。ようやくIPネットワークを使った通信網の時代になって全国統一3分8.4円くらいができるようになって、携帯電話が出て、移動しながら話せるようになって、という流れ。ラストワンマイルをNTT、電電公社が持っていたからこそ、小野寺さんはケーブルテレビ会社を傘下に収めたのだろうし、大星さん(NTTドコモ初代社長 大星公二氏)がNTTから外に出て「ウチは株式会社ドコモにしたい」と言って、電波だけの会社にしたいといった話もそう。そういう競争軸だったのに、今度は光回線を全部、国有で、1社でまかなうとなると、そのコストは誰も検知できなくなっちゃう。競争原理が働かなくなるので、そこのリスクは大きい。

石野氏:リスクは大きいですよね。リスクは大きいけれど、日本の中で何本も光回線を通すのは、効率的かといわれると効率的じゃない。NTTがドコモを完全子会社化したことで、競争環境が変わってしまう。NTTの本丸がドコモとNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアを抱えて新生NTTになって、そこにNTT東西がぶら下がっていていいのかという議論には当然なると思う。一番効率が良く、かつ各事業者の納得を得られるやり方を考えると、インフラシェアリングになるかなという気がします。今のままだと明らかに不公平というか、フェアではないというか。NTT持株に権限が集中することになると、そこに何か手を加えないと、いくらなんでもフェアではない。なにかしら分離してシェアする方向に向かうんじゃないかなとは思います。

本来は持ち株比率を下げていくはずだった

法林氏:意見書の中の資料でも指摘されていたけど、当時、閣議で実はNTTからドコモを切り離そうとしていたし、いろんな取り決めがあったのに、全部うやむやになってしまっている。もうちょっと認識すべきだし、それこそ新聞社やテレビが突っ込まなくてはいけないところ。それが何もできていない。

石野氏:そうですよね。ドコモにおけるNTTの持株比率をどんどん減らしていくということだったのに、それがいつの間にかうやむやになっていた。どうかしていますね。

法林氏:もしこのままだと、インフラシェアリングの会社も、コストをどうやって下げていくか、誰がやるのかも含めて考えないといけない。また総務大臣が「下げなさい」と言ったら下げるのかという話になるので。

 もう1つ、総務省の有識者会議は10数年もやってきて、今さらMNPがワンストップでできないことを指摘している。これじゃ有識者じゃないよと思う。1度、全員退任した方がいい。MNPの手続きはワンストップじゃないので、引き止め工作があるだろうということは、MNPが始まった2006年から言われていた。今さら提言に盛り込むことかと。そういうことも含めて、ちゃんと仕事をしてほしい。

石野氏:引き留めちゃダメっていうのも、なんかおかしいなと思いますね。

法林氏:引き留めポイントがもらえると喜んでいる人がいる。また時代を感じるのが、そういうことをブログにばんばん書いちゃう人がいるってこと。みんなが引き留めポイントをもらいに行くようになるかもね(笑)

......続く!

次回は、2020年のスマホを振り返り話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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