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総務大臣がドコモ、au、ソフトバンクに要請した料金値下げは、本当にスマホユーザーのためになるのか?

2021.01.08

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は総務省の意向どおりに携帯電話料金は値下げできるのか? 議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

サブブランドでの20GBプランに「不親切」

房野氏:10月下旬に、UQ mobileが月額3980円の「スマホプランV」、Y!mobileが月額4480円の「シンプル20」と、20GBの新料金プランを発表しました。それについて武田良太総務大臣は当初、歓迎のコメントを出していましたが、その後、「メインブランドから新しいプランが発表されていない。不親切ではないか」「低廉なプランを用意したことは評価するが、乗り換えのハードルをなくさなければ意味がない」と、メインブランドでの値下げを要求しています。これについてどう思われますか?

房野氏

石野氏:ブランドがどういうものなのか、よく理解されていないのかなと思います。サブブランドはメインブランドと同じ回線だし、切り替えればいいじゃないかという話なのに、なぜメインブランドで安いプランを作って、それに変えるようにしなくてはいけないのか。これだと本当に価格統制になってしまう。資本主義、自由主義経済の中においての大臣の発言としてはNGじゃないかと思います。

石野氏

石川氏:武田総務大臣は、「このタイミングで、ユーザーは自分に合った料金プランを選びましょう。自分が携帯電話をどのように使っているかを理解しましょう」とも言っていて、良いことも言っているんです。でも、「メインブランドで新料金を出していない」と批判したのはまずかったと思います。武田大臣がこう言うと、総務省のアクションプラン(「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」)の意味がなくなってしまう。eSIM推進、MNP手数料無料化などで、これから乗り換えをどんどん活性化しましょうと、総務省がまさに議論しようとしていたのに、国民に「乗り換えなくても安くなる」とインプットされてしまった。総務大臣がアクションプランを台無しにしてしまった。サブブランドや格安スマホを選ばない人が増えてきちゃうので、結果、競争は促進されない。非常に残念で、たぶん総務省のお役人の方々もがっかりしているんじゃないかな。

石川氏

法林氏:大臣は、民間から来る場合もあるけど、基本的に国会議員。監督官庁の責任者であり、一定のことを理解していないと大臣にはなれないと思うんですよ。武田大臣は、放送系のことは詳しいらしいけれど、通信系のことは、わかっているようでわかっていない。通信の競争がどういう風に成り立っているのか全然わかっていないと思います。

 通信の専門媒体に武田大臣の記者会見の記事が載って、それに対するTwitterの反応は当然、「以前、大臣が言っていたことは何だったんだ」というもので、そこは理解できます。ただ、Yahoo!ニュースでも、それと同じ内容のコメントが投稿されていたのは面白かった。

法林氏

石野氏:しかも、20GBプランの提供がまだ始まってもいない。

石川氏:そうだよ。

石野氏:UQ mobileに至っては来年2月の提供なのに。せめて、それが始まるのを待ってから言ってよって感じです。

法林氏:百歩譲って、もしメインブランドに値下げさせたいなら、「サブブランドから新プランが出てきたし、MVNOも料金値下げが実現できるように、キャリアに対しても指導していきたいけれど、キャリア自身、メインブランドも料金を低廉化できるように、ぜひお願いしたい」という言い方だったらいいけれど、そんな雰囲気は欠片もなく「不親切だ」と。ちょっと的外れじゃないかと思う。

石川氏:メインブランドは新しいプランを出していないと言っていましたけど、2019年から出しているわけです。2020年も出している。

石野氏:そうそう!

総務省と大臣の発言に矛盾。専門家の意見を尊重すべきでは?

石川氏:武田総務大臣の発言があった日の午後にKDDIの髙橋社長にインタビューをしましたが、UQ mobileのスマホプランVが発表されて、それがどう評価されるかを見て、検証してから、ということをおっしゃっていた。そうしないことには整理されないじゃないですか。結局、料金プランをわかりにくくしているのは総務大臣じゃないかと。いろんなことを言って新しい料金プランがどんどん出て、しかもそれはユーザーの実態に合っていなかったりする。引っかき回すだけ引っかき回して、ユーザーは混乱するだろうし、ショップスタッフも苦労する。

石野氏:KDDIは、auは5Gで無制限、UQ mobileは4Gというブランディングになっている。ソフトバンクも、超大容量はソフトバンクで、普通はY!mobileでというブランディングで進めようとしている。大臣は民間企業のブランド戦略にまで口出ししているような感じになっている。メインブランドに低容量プランを出せというのは、もう完全に料金の中身に口出ししていることとイコール。これは携帯電話の自由化を全否定しているような発言。ここ何十年かの通信行政をひっくり返しているに等しい。そこまで言うなら、もう全部国有化しろよっていうレベルな感じがします。発言を聞いていて呆れました。

房野氏:発言がコロッと変わりましたよね。

法林氏:上から降りてきたんでしょう。自分で考えて言っているとは思えない。

房野氏:総務省の官僚の方々は、どう感じているんでしょうね。

石川氏:総務省自身、アクションプランが必要だとか、彼らは彼らで考えてやっているわけですよ。総務省は、とにかくMVNOを盛り上げて、大手キャリアからユーザーが流れることで、対抗して大手キャリアが料金を安くするという青写真を描いているんですが、上にいる菅さんや間にいる総務大臣が色々言うので、総務省の思惑通り動けなくなっているところがあるのかなと。菅さんが、人気取りだと思うんですけど、携帯電話料金について言うことによって、混乱してしまっている現状だと思います。

法林氏:菅さん以下この政府は、専門家の意見を踏まえず、安直に発言しすぎると思う。もっとよく考えて発言してほしい。例えば通信行政。ちなみに僕は日本版FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)を作った方がいいという立場。大臣は大臣でいていいから、本当に通信をよく知っている専門家が前に出て話をした方がいいと思う。「メインブランドを値下げしていないみたいなんですけど」といった記者の質問に安直に答えるところが、脇が甘いというか、経験が足りないという感じがする。大臣に対しては、もうちょっと上手に話してと言いたい。

石川氏:通信業界はまだ若いので、政治家とのつながりが全然ないんだなというのは感じる。例えば旅行業界は、二階さん(自由民主党幹事長 二階俊博氏)や菅さんとつながりがある。一方の通信業界は政治家に言われっぱなしの状態。通信業界として、そこはなんとかしなきゃいけないんじゃないかなと、なんとなく感じる部分もある。

法林氏:Yahoo!ニュースにも出ていたけど、評論家の佐高 信さんが「携帯電話料金を政府が下げろなんていうのは、あり得ない」ということを言っている。ああいう人からの発言が出るくらいだから、今の政府のやり方は普通の人からしても、ちょっとおかしいと思うということが、だんだん見えてきている。総務省というより政治家の人たちの知識が上がらないと、そもそも議論がかみ合わない。

石野氏:そこがね、内閣が人事権を持っちゃっているので……

法林氏:わからないなら聞けばいい。先日、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんが亡くなられたけど、ニュートリノのことを文部科学大臣が説明できるかといったら、それは難しいわけですよ。そういう時は聞けばいい。総務大臣も通信のことがわからないなら、石川君が教えると言ってくれると思うので(笑)

石野氏:新型コロナウイルスの感染症対策では、そういうことができている。尾見 茂先生がいて、厚生労働大臣よりも話しているような気がしないでもないですが、ああいう体制ができていて、時には無視することもありますけど専門家の意見を尊重する。大臣といっても選挙で受かって政治家がなるもので、内閣が替わるたびに変わりますし、選挙で落選する可能性も当然ある。リーダーであって専門家ではないので、もう少し専門家を尊重する体制があってもいいかなと思います。今までは総務省の官僚が専門家の立場を担ってきたんですが、今の内閣人事局の仕組み上、それもできないというか、忖度すると偉くなる仕組みがやっぱりあると思うので、通信に限らず、良くないところかなと思います。

法林氏:通信は、5G、さらに次世代で、これからの日本社会の土台、国力を左右する要素の1つ。だから、大臣はもっと勉強してください。

総務省が担当する範囲が広すぎる

石川氏:マイナンバーカードなり、通信なり、総務省がカバーしている分野が広すぎる。そこを、先ほど法林さんがおっしゃったように、日本版FCCとか“5G省”みたいなものを作って切り出し、監督するくらいの考えでいかないと。

房野氏:デジタル庁が……

法林氏:デジタル庁のプラスアルファですよね。

石川氏:そうですね。平井さん(デジタル改革担当の平井卓也氏)は、今はマイナンバーカードばかりになっているので、本当はもうちょっと5Gとかにも注目してほしいけど。

石野氏:そうですねぇ。総務省は、放送とふるさと納税と通信と……ほぼ全部じゃないですか。

法林氏:ちょっと範囲が広すぎる。

石川氏:総務大臣の記者会見を見ていても、本当に幅広いですよ。

石野氏:「総務」というだけありますよね。

石川氏:ほかに割り当てられないものが、全部総務省に集まっている。

法林氏:今後10年、20年を考えると、通信は国の行く末を左右するものになるはずなので、本当は総務省から通信関連を切り出して“情報通信省”を作るべき。それが今のデジタル庁をいずれ吸収する。

石川氏:今の政権では、まだそんな雰囲気はないけれど、その次の世代に期待したいですね。

......続く!

次回は、NTTドコモの完全子会社化について話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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