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今春、東京都内でのKDDIのローミングサービスを止める楽天モバイル、このまま契約を続けても大丈夫?

2021.01.07

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は楽天モバイル回線を使っていって大丈夫なのか? 議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

圏外になる地域が出てきている

房野氏:楽天モバイルが、一部の地域でauのローミングサービスを打ち切り始めました。一方で、契約事務手数料やMNP手数料、SIM交換手数料やeSIMの再発行手数料を無料にするという施策も行っています。楽天モバイルの状態をどう見ますか?

房野氏

石川氏:auのローミングを終わらせるのは早すぎる印象です。もうちょっと電波のことをしっかり考えないといけないんじゃないかな。この座談会で毎回、毎回、大丈夫かと言っているけど、毎回、毎回心配というか……

石川氏

法林氏:東京の吉祥寺駅周辺の楽天モバイルの電波のつながりやすさを調べた記事があったけれど、これってダメじゃん、という感じだった。

法林氏

石川氏:すでに圏外が出始めていることを、楽天モバイルはもっと意識しないといけない。圏外になると申し出たユーザーに対して、ドコモ回線が入ったWi-Fiルーターが貸し出されているようで、何がしたいんだと。心配、さらに心配、みたいな感じ。

石野氏:マップに載っている所以外でも、例えば地下とか、ピンポイントでローミングが打ち切られていたりするようです。渋谷の地下が入らないという声も聞きます。

石野氏

法林氏:渋谷の地下は共用の引き込み線じゃなかったっけ。

石野氏:そのはずなんですけどね。

石川氏:共同の引き込み線なのでアンテナは共用されるんだけど、確か共用の先に各自、基地局を作らないといけない。楽天モバイルはそれがないってことだと思う。

石野氏:ひょっとしたら、仮想化ネットワークだから設備を置くスペースに問題があるのかなと思った。

法林氏:仕組みが違うことでの要因はあるかもしれない。でも、どちらにしても線を引き込まなきゃいけないのは事実。

石野氏:ローミングの終了は思ったよりも影響があるというか、まだ時期尚早という感じ。もう少し様子を見てやればよかったのになぁと思いました。

法林氏:KDDIとのローミング契約で、70%という数字(楽天モバイルの自社エリアの人口カバー率が70%を超えた地域は両社の協議を以てauローミングの提供・継続を決定するというもの)をどちらが出したかはわからないけど、ちょっと甘いなと思うところがある。イー・モバイルの場合は、ドコモのローミングを終了するのに2年くらいかかった。しかも地方の方からやめていって、都市部は最後の方まで残していた。当時は音声メインで、プラス、データ通信の時代。今はデータ通信オンリーとも言えるくらいデータ通信がメイン。それに加え、ユーザーの端末の使用頻度が全然違う。今はずっと使っているので、余計シビアに判定される。

石川氏:11月中旬に、都庁で「第2回TOKYO Data Highwayサミット」あって取材したんですが、その時に楽天モバイルの山田さん(代表取締役社長 山田善久氏)がプレゼンテーションして、2020年10月時点で東京都の人口カバー率が87.4%だと示した。楽天モバイルが人口カバー率96%をゴールとしている段階でちょっと厳しいなぁと感じる。他キャリアは99.9%以上で、富士山頂もエリア化するほど。普段生活している場所はもちろんだけど、旅行先でも使えないといけない。そこまでユーザーのことを考える必要があって、安かろう悪かろうでは使ってもらえない。

法林氏:99%の先が長いというのは、田中さん(KDDI 代表取締役会長 田中孝司氏)が言ったんだよね。

石野氏:0.1%刻みがすごく大変だと言っていましたね。

石川氏:人がほとんどいないところもエリア化する必要があるからね。

ローミング料金が負担になった?

石野氏:楽天モバイルのあのカバー率だと、人がいるところでも圏外になるなって感じがする。まぁ、ローミングでお金がかかるし、コストが想定以上だったのかなと。

石川氏:第3四半期の決算会見で、三木谷さん(楽天モバイル 代表取締役会長兼CEO 三木谷浩史氏)もローミング費用が増えているとコメントしていたよね。たぶん相当痛いんだろうなと思った。

楽天株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷 浩史氏

法林氏:1GBあたり 500円弱の支払い。1年間無料で使えるのが300万人で、全員が5GBフルに使うと大変なことになる。

石野氏:都内にいる限り、パートナーエリアでの上限容量5GBをフルで使うことはまずないんですけど、某ローミング地域に行ったんです。そしたら、まぁ、5GBなんてあっという間に使っちゃうんですよ。無制限に対しての5GB制限って、やっぱり少ないなと思いました。

石川氏:無制限に慣れてしまうと、それが当たり前になって、5GBなんて数日で使ってしまう。

法林氏:実際にスマホを使う人のことを考えると、大手3社が発表した20GBプランは、落とし所としては割といい。5GBはローミングとしては物足りない。楽天モバイルはもっと自社エリアを広げないといけないけど、周波数が1.7GHzの1波しかないので、広がらなくても仕方がないところがある。当然、イー・モバイルの時代と違って使用頻度が違うので5GBは無理だろうね。

石野氏:ローミングで10GBを許容すると、楽天モバイルは毎月1人当たり約5000円、KDDIに払わないといけなくなる。

法林氏:5000円×300万人、大丈夫かと。

石川氏:当初、ローミングは2GBまでだったのを、5GBにしたのが運の尽き。。

石野氏:踊らされてというか評判を気にしすぎてというか。ただ、5GBに達して速度制限がかかっても、速度が1Mbpsなので意外と使えちゃうんですよ。my 楽天モバイルでパートナー回線の利用量を見ると、普通に5.5GBとか使っていて、あー、これは支払いが大変ですねぇ、みたいな(笑)

my 楽天モバイル

石川氏:「楽天モバイル 圏外」でTwitterを検索すると、「もうやめる」とか結構厳しい意見が投稿されている。タダで使っているのにもうやめちゃうのかと。でも、そういうものなんだろうなと。料金値下げの議論にもつながるけれど、日本のユーザーは値段よりもつながることを優先している。だからこそ昔、PHSがケータイにシフトした。もしかすると、料金が高いからこそ大手キャリアはちゃんとつながるんだと理解してもらえているのだとすると、楽天モバイルの存在価値はあるだろうという気がする。3キャリアとほぼ同じ品質で、みんなつながって安ければいいじゃんという考えになるけれど、そうじゃないんだと。値段と品質は比例しているんだということが理解されるかなと。

石野氏:Twitterだと、楽天モバイルはつながらないキャリアというイメージが付いている感じがしますね。

石川氏:ここで挽回するのは難しい。ソフトバンクだって相当苦労した。2012年にプラチナバンドの900MHz帯を持って、ようやくイメージが回復した。つながらないイメージが付くと厳しい。

法林氏:楽天モバイルはゼロスクラッチでネットワークを作り始めた。今のau、かつてはIDOのcdmaOneがそうだし、ドコモのFOMAもゼロから作っている。こういうネットワークは、使えるようになるまでに短く見積もっても5年はかかる。普通に使えるようになるには10年近くかかる。当時よりも技術が進歩しているといっても、短縮できたとしても3年、ユーザーのニーズを普通に満たそうとすると5年はかかるはず。それを楽天モバイルは「とりあえず早くやればいいんだ」という形で作ってしまったのがどうかな。誰もコントロールしないで、上から「5年前倒しで作れ」といわれている。

 よくTwitterに、楽天モバイルのアンテナがビルの上に立っているけれど全然つながらないと投稿されているけれど、あれはたぶん、回線が来ていないせい。アンテナの工事は主要3社の5Gの工事と取り合いになっているし、回線も結局同じことが起きている。どこの光回線を使うにしても、相当キツい話。そこがわからないまま始めたので、まぁ仕方がないですね、という感じです。

石野氏:フォローしておくと、まだ本格サービスが始まって1年。というか、記者会見では「本格サービスが始まって1年未満」ということになっていて、本当のサービスインは2019年の10月だろ、という突っ込みはしたいんですが、まだ1年で、都内だけでもエリアがここまで広がっているのは、今までの新規参入事業者になかった。そこはすごいと思います。でも、そのくらいの期待値の超え方では、ユーザーが満足するエリアは作れないんだなと。

有料になるタイミングが正念場

房野氏:MNOの楽天モバイルの申し込みが160万になっているそうですが、それはどう思いますか?

石川氏:三木谷さんが「今年度中に300万を目指す」と言っちゃったので、それと比較すると見劣りするけれど、1か月10万ペースで増えているので頑張っていると言えます。

石野氏:まぁ、料金がタダだしなぁってところがある。

法林氏:そこが今後、読めないところ。

石川氏:タダで、ほとんどのユーザーが2回線目として契約していると思われるので、無料期間が終わって3000円の料金がかかるようになったら解約する人も多いと思います。楽天の決算会見では「1年超えたら収益になってくる」と言っていたけど、1年経ったら解約する人も当然いるだろうから、そうなった時に、ねぇ……大手キャリアをメイン回線として使いつつ楽天モバイルも使っている人って、現状、0円で使い放題が手に入っていてお得に使える状態。それが1年後、3000円かかるようになると、メイン回線プラス3000円。だったら楽天モバイルをやめてしまって、メイン回線を使い放題プランにした方が安くなるという人もいる。その時に今のネットワーク品質でユーザーを引き留められるのか。そこが正念場だと思います。

法林氏:簡単に比較はできないけどイー・モバイルの時は開業2年くらいで約140万契約だった。楽天モバイルはもともと母数というか、基盤として楽天会員があるので、そこがプラス要素として働いているけれど、申し込み数160万という数字は、よく獲得したと思います。ただ、あくまで料金0円での評価なので、有料になった時に本当にどれくらいになるか。

 あと、もう1つ。楽天モバイルは比較的、「言われたからやる」「思いついたからやる」ということが多い。eSIMの再発行手数料をタダにしたけれど、「Rakuten BIG」を発売した時は有料で、その後、突然、無料に切り替えた。有料で切り替えた僕はカチンと来た。そういう部分の作り方が杜撰というか、思いついたらやるという感じで計画性がないんですよ。信頼性がすべてなので、そこは気をつけてほしい。

Rakuten BIG

石野氏:確かにeSIMを無料で再発行できることはいいことだし、他社も追随してほしいと思うところです。eSIMをこんなに入れ替えられるのは楽天モバイルくらいなので(笑)。IIJmioで同じことをやったら何千円もかかる。

法林氏:つながらないけど2980円で、eSIMを何回でも入れ替えられる。複数回線持っている我々としては1回線持っていると嬉しいキャリアですね。

石野氏:サブ回線としてはすごくいいんです。低コストで使い放題だし、eSIMは入れ替え放題だし。サブ回線としては超魅力的なんですけど、そこにメイン番号を移すかといったら、それはちょっとツライなぁという感じですね。ちょっと郊外に行くと5GB縛りがあるし。無制限だったら、例えばGoogle フォトもバックグラウンドでいつでもアップロードするようにしちゃうんですけど、ローミングのエリアを見て設定を切り替えるのは面倒だし、しないじゃないですか。そういう面倒なところはある。

担ぎ上げられた挙げ句、梯子を外されてしまった?

房野氏:MVNOの楽天モバイルからの乗り換えは、どれくらい進んでいるのでしょうか。

石野氏:あまり進んでいないという話ですね。

石川氏:全然進んでいない。楽天自身「本気になっていない」という言い方をしているけど。

法林氏:元FREETELやDMM mobileのユーザーに対しては、MVNO時代から何度も乗り換え施策をやってきたし、MNOのサービスインの時にも散々やった。僕は、FREETELのSIMはMNOの楽天モバイルに替えたんですが、MVNOの楽天モバイルは1回線残しています。でも別に何も言って来ないですね。

石野氏:妻が母親にタブレットを渡す際に、FREETELの1GBのデータSIMを契約したんです。それはFREETELが「肉球」といって299円からのプランを提供していた頃のデータSIMで、これで写真とか送り合っていたんです。それに対して楽天モバイルからMNOの回線に切り替えませんかという封書が届いたんですが「UN-LIMIT、2980円、使い放題」と書いてあって、全然ニーズと合っていないなと(笑)。毎月300円くらいしか払っていない人に対して無制限だけど値段10倍のプランをお勧めしてくるのはどういう神経かなと。

石川氏:そこが1プランの限界だよね。ユーザーは多様化していて、タブレットでちょっとだけ使いたい人もいるわけで。なんでもかんでも「2980円無制限」はちょっと無理なところがある。

石野氏:まさに。1GBで500円だったら考えてもいいかなって思いますけど。自社回線だから容量を3倍くらいにして、3GBで500円だったらまぁ、ちょっと考えたと思うんですけど、肉球(299)プランに対して2980円のプランをぶつけてくるセンスはどうなのかと(笑)

房野氏:先ほど、auローミングが終わって圏外になった人にWi-Fiルーターを配るという話がありましたが、その場合、料金はどうなるのでしょうか。

法林氏:回線を借りているドコモ、auと、どういう契約をしているかでしょう。あまり素性としては良くないし、突っ込まれたらちょっと騒ぎになるかもしれない。同じ料金です、となったら、ちょっと待てという話になるじゃないですか。

石川氏:でも、使い放題でWi-Fiルーターを提供するんですよね?

石野氏:そうですよね。

法林氏:たぶん、楽天モバイルの持ち出しでしょう。ドコモ側にもauのローミングと同じくらいの金額が発生するはずなので。

房野氏:つまり、Rakuten UN-LIMITで使っていた人が、auのローミング終了でつながらなくなって、楽天MVNOのWi-Fiルーターを借りて、それをRakuten UN-LIMITの契約で使っていいということですか。

法林氏:そうすると、他のユーザーたちに対して、それで大丈夫なのかってことなんですよ。圏外だと文句を言った人だけの話になるとまずい。でも、そこに目が行き届く監督官庁、総務省じゃないんですよ。

石野氏:まぁ、武田総務大臣の一連の発言を見ると、楽天モバイルもかわいそうだなと思いますね。被害者感がある。散々担ぎ上げられて、さぁ、サービスを始めようというところで梯子を外されちゃったような感じ。

石川氏:大臣というより菅さん(菅 義偉内閣総理大臣)ですよ。官房長官時代の菅さんに4社目として担ぎ上げられて、MNOになったけれど梯子を外されたって感じ。

法林氏:1波だけしか持っていない楽天モバイルが大手3社の対抗馬になるはずがない。その中で、楽天モバイルは手数料を無料にするとかでよくやっているとは思う。他社がやっていないeSIMもやっているし、がんばっているのはわかるんだけど、如何せん、思いつきのネタが多い。しかも総務省がよくわかっていない。菅さんもよくわかっていない。だんだんボロが見えてきたという感じ。

石川氏:しばらく赤字が続くと思うので、きびしいなぁ。

法林氏:つぶれはしないだろうけど、不採算が続いたら事業売却とかはあるかもしれない。

石川氏:楽天本体に与える影響が大きいんじゃないのかなぁと。

法林氏:楽天で儲かっているのは、証券とカード。今ちょっと取り戻しつつあるのがトラベル。そのあたりの稼ぎがどれくらい続くか、でしょうね。

......続く!

次回は、総務省の値下げ要請について話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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