
auからデータ通信使い放題にAmazonプライムサービスが利用できる新料金プランが発表されました。
多くのユーザーが2020年12月3日に発表された、月々2980円で20GB利用できるNTTドコモの「ahamo」に対抗するプランを期待していただけに、料金が高いと感じた人もいるでしょう。
しかし、auの“データ使い放題×Amazonプライム”は、タイミングから見てもahamoと直接張り合うプランではないと考えられます。では、なぜauは“いま”発表したのでしょうか。
新料金プラン誕生までの流れ
まずは今回のau新料金プラン発表に至るまでの経緯を確認したいと思います。
始まりは約2年前?
そもそもの始まりは約2年前、当時まだ官房長官だった菅義偉氏の「携帯電話料金は4割下げられる余地がある」という発言といえるでしょう。
2020年から首相となった菅氏は、「携帯電話料金の値下げ」を打ち出しています。もちろん、今使っている携帯料金が安くなるのであれば、ユーザーにとっては嬉しいことですね。
そして、現総務大臣である武田良太氏は、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を発表し、携帯電話業界の価格競争を促す動きを見せています。
【参照】総務省 「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」
総務省|「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の公表 (soumu.go.jp)
サブブランドがいち早く反応!
2020年の3月には、楽天モバイルが第4のキャリアとして2980円でデータ通信使い放題のプランを引き下げて参入しました。
対抗する動きを見せたのは、auとソフトバンク。政府からの「世界的に見て20GBプランが日本は高い」という指摘から、2020年10月にそれぞれサブブランドとして運営する「UQモバイル」と「Yモバイル」にて、20GBプランを月額4000円前後で用意しました。
【参照】UQ mobile新料金プラン「スマホプランV」を提供
データ容量20GBで月額3,980円のUQ mobile新料金プラン「スマホプランV」を提供 | 2020年 | KDDI株式会社
【参照】「シンプル20」(ワイモバイル)の概要
ソフトバンクの通信料金低廉化などへの取り組みについて | プレスリリース | ニュース | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp)
これに対し、武田総務大臣は2020年10月30日の武田総務大臣閣議後記者会見にて、一定の評価を一度は示したものの、「メインブランドでの値下げでなければユーザーに不親切」と一刀両断。
2020年11月27日の武田総務大臣閣議後記者会見でも、メインブランドからサブブランドへの移行に、複雑な手続きや料金が発生することを問題視しています。
【参照】総務省 武田総務大臣閣議後記者会見の概要(令和2年11月27日)
総務省|武田総務大臣閣議後記者会見の概要(令和2年11月27日) (soumu.go.jp)
こうして、各キャリアはメインブランドでの新プランを用意し始めたわけです。
auの新料金プランはタッチの差で「ahamo」に話題をさらわれた
発表した順番でいうと、ドコモがahamoを公表した後、auが今回のデータ使い放題×Amazonプライムの新料金プランを公表した形。ahamoの料金設定にインパクトがあったために、多くの人が肩透かしのような印象を受けたかもしれません。
しかし、実は発表会の告知自体はauが先でした。このことからも、今回auが発表した新料金プランは、単純な「対ahamo戦略」ではないのです。実際、発表会内でもKDDI東海林副社長は「ahamo対抗プランではない」と話しています。
新料金プランの準備には時間がかかります。特に今回のau新料金プランは、Amazonと協業しているため、かなり前から練りこまれたプランであると考えられます。ahamoが出たから急いで用意した……というものでは決してないでしょう。
サブブランドの痕跡が残るahamo
ドコモの料金プランとして発表されたahamoですが、ドコモは当初サブブランドとして展開しようとしていたとの見方もあります。
手続きはオンラインのみ、ドコモのキャリアメールは利用できず、ファミリー割引の対象にもなりません。また、2021年5月まではドコモユーザーであってもMNPが必要です。
限りなくサブブランド寄りのサービスですが、あくまでドコモの料金プラン。これは、au・ソフトバンクがサブブランドで展開した20GBプランに対する武田総務大臣のコメントを考慮したと思われます。
「データMAX 5G with Amazonプライム」の内容と料金は?
では、改めて新料金プランの内容を見ていきましょう。
「データMAX 5G with Amazonプライム」は、データ通信の使い放題に加え、「Amazonプライム」と「TELASA」のサービスが利用できるセットで、割引適用前の値段が9350円(税抜・税込1万285円)となっています。
ここに、「2年契約N」や「家族割プラス」といった各種割引を適用していくと、最安値が3760円(税抜)、さらにデータ通信量が月に2GB以下だった場合には、自動で2280円(税抜)へと割引されます。
データ通信使い放題の「データMAX 5G」は割引適用前の値段が月8650円(税抜・税込9515円)。Amazonプライムが月額500円(税込)、TELASAが月額618円(税込)なので、すべてを合計すると1万633円(税込)となります。
つまり、「データMAX 5G with Amazonプライム」は、割引適用前の金額が1万285円、月348円お得なプランであることがわかります。
「データMAX 5G Netflixパック(P)」「データMAX 5G ALL STARパック (P)」は?
「データMAX 5G Netflixパック(P)」「データMAX 5G ALL STARパック (P)」は、それぞれ既存のパックにAmazonプライムサービスが追加されたパックとなっています。
料金は、以下の通りです。
「データMAX 5G Netflixパック」は各種割引適用で最安値が4060円(税抜)で、データ通信使い放題・Amazonプライムサービスに加え、「Netflix」「TELASA」が視聴可能。
「データMAX 5G ALL STARパック (P)」は最安値が5460円(税抜)で、「Netflix」、「Apple Music」「YouTube Premium」「TELASA」が利用可能となっています。
今後も価格戦争は激化する?
auの新料金プランは、データ通信使い放題に加え、コロナ禍の影響で需要が高まっている動画配信サービスや、買い物にも便利なAmazonプライムのサービスが組み込まれたもの。
auは、5Gの高速通信をいかにユーザーに楽しんでもらえるか、データ通信無制限は当たり前で、利用できるコンテンツからユーザーがキャリアを選ぶ時代と話しています。価格競争はさらに激化していくことでしょう。
au・ソフトバンクがサブブランドへの移行手数料を撤廃
また、auは2021年夏以降、ソフトバンクは2021年春以降に、それぞれのサブブランドに移行する際の手数料をすべて無料にすると発表しました。
これで、auとUQモバイル、ソフトバンクとYモバイル間の垣根がかなり低くなります。ドコモからahamoへの乗り換えに寄せてきたということです。
【参照】「au」と「UQ mobile」のブランド間の移行の円滑化に向けて
press_20201209.pdf (kddi.com)
【参照】ソフトバンク ブランドのりかえ時の手数料などを刷新
ブランドのりかえ時の手数料などを刷新 | プレスリリース | ニュース | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp)
今後は、ドコモ、au、ソフトバンクなどのメインブランドは大容量プランを選択。ちょうどいい容量を安く使うならサブブランドと、ユーザーのすみわけが進むかもしてません。
そうなると、楽天モバイルや格安スマホを取り扱うMVNOも、打開策が必要となるでしょう。
メインブランドとサブブランドの垣根はどんどん低くなってきています。近いうちにau・ソフトバンクからahamo対抗策が出るかもしれません。
取材・文/佐藤文彦
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