
ホンダとヤマハが競い合った時代。ヤマハはスポーティスクーターの「JOG」を1983年に発売。
エンジンは49ccの排気量から最大出力4.5psを発揮する2サイクル。セルスターターも用意され、それでも乾燥重量は49kgと軽量。価格は9万9000円と、10万円を切った。
鋭いダッシュで“スクーターは遅い”という意識を変え、しかも手の届きやすいプライスのJOGに、若者は飛びついた。販売1年で30万台を記録する大ヒットモデルになったのだ。
1984年には最大出力を5.2psまで向上させ、デジタルメーターも選べた「Champ(チャンプ)」が登場。ヤマハの攻勢は続いた。
ホンダがヤマハとがっぷり四つを組むスポーティスクーター
そんな中、対抗馬としてホンダは、1985年3月27日に「ホンダDJ・1(ディジェイ・ワン)」を発表。同年4月1日から発売を開始した。
曲線を基調としたデザインに、内装と外装を塗り分けたツートンカラーを採用。若々しい感覚のデザインが特徴となっている。
エンジンは、空冷2サイクル5.2psエンジン(49cc)を搭載。Vマチック(無段変速)機構の採用により、なめらかで力強い走行を可能にした。
サスペンションは、前輪にトレーリング・リンク式、後輪はユニットスイング式。前後輪ともに油圧式ダンパーを装備し、ロングホイールベース(1165mm)とあいまって、快適な乗り心地を実現した。
乾燥重量は52kgと、セルフスターターを採用しながら軽量。
ノーマルモデルの価格が10万9000円と、原付少年でも背伸びすれば届く価格設定もあって、DJ・1は大ヒット! 2ストロークでエンジンをいじるのが容易だったこともあり、当時人気だったスクーターレースでも大活躍した。
DJ・1という名前は、“打倒ジョグ”が由来だという人もいる。そんな都市伝説が生まれるほど、ジョグとDJ・1は互いに競い合いながら80年代中盤のバイクブームを支えた。
文/中馬幹弘
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