
コロナ禍を機に一気に進めざるを得なくなったデジタルトランスフォーメーション。その中でブロックチェーンは再評価され、それを使ったITソリューションが続々と社会に送り出されている。2020年にも様々なニュースが世間を賑わせたが、@DIME読者の皆さんは、どんなブロックチェーンニュースに興味を惹かれただろうか。事例と共に話題となったニュースを紹介しよう。
『マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ』の著者でアステリア社の Blockchain Solution R&Dグループ ディレクターを務める森さんは「アステリア社で2020年に手掛けたブロックチェーン案件は実証実験のコンサルではなく、実際に社会で稼働するための案件が多かった」と、ブロックチェーンの社会浸透が加速してきていると語る。
そんな森さんが選んだブロックチェーン業界ニュースは、同社のウェブメディア「in.LIVE」の記事としてまとめられている。@DIMEではこれらのニュースから特に気になるニュース3つを深掘りしてみよう。
CBDC:中央銀行デジタル通貨の発行への動きが進む。リトアニアでは記念コインとして実際に発行も
各国の中央銀行、日本でいえば日本銀行が発行する通貨をデジタル化したものがCBDC(Central Bank Digital Currencyの略称)である。紙幣や硬貨などの現物が無い電子的な通貨で、決済手段をはじめとした活用の可能性が模索されている。
そんな折、欧州のバルト三国の一国であるリトアニアでは、同国の中央銀行「リトアニア銀行」が「LBコイン」というCBDCを発行。一般生活で使う通貨ではなく記念通貨としての位置づけではあるものの、政府が行うブロックチェーンの取り組みとしての大きな一歩を踏み出した。
Lithuania's central bank (@Lietuvosbankas) plans to issue a collectible coin using NEM blockchain technology in celebration of the anniversary of Lithuania’s independence: https://t.co/dYjxOigvii pic.twitter.com/dwfgsrtDwd
— NEM (@NEMofficial) December 11, 2019
日本銀行にも動きがあり10月9日に「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表。発表時点でCBDCを発行する計画は無いとしながらも、準備を進めていく方針を打ち出した。CBDCを導入した場合にどのような影響・効果があるのか。調査を進めるとしている。
■日本銀行のCBDCに対する取り組み方針資料
引用元:中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針/日本銀行
Facebookが中心となって立ち上げた暗号資産(仮想通貨)「Libra」は「Diem」へ
引用元:diem
2019年6月に発表して大きな話題を呼んだFacebook発の暗号資産「Libra」は「Diem」という名称に改名した。同時に旧Libra協会に名を連ねていた大手企業はことごとく脱退。米国議会をはじめとした各国政府のネガティブなイメージや規制方針に対しての取り組み結果となっているようだが、名称変更の真意は不明。
引用元:同
Diemのウェブサイトを表示して名を連ねている企業を見てみても大手の企業はほとんど見当たらない。カード決済のブランド「Visa」社やネットオークションを手掛ける「eBay」社などはすでに脱退済。
「このまま失速してしまうのではないか?と思う一方、暗号資産の仕組みとしては出来上がっているほうなので、今後の成長にも期待しています」(森さん)と、2021年以降に再び話題の中心となるネタが出てくるかもしれない。
改正資金決済法と改正金融商品取引法の施行でセキュリティ・トークンが有価証券へ
ブロックチェーン技術を使って株式などの有価証券をデジタル化したものを「セキュリティ・トークン」という。セキュリティには「証券」という意味があり、従来の株式に比べて、技術的な優位性を持つ。例えば、売り手と買い手間での即時決済の実現や、24時間365日のいつでも取引が可能といった風に。またスマートコントラクトという自動化技術と組み合わせれば、配当金の支払いや、株式分割といった事務作業を合理化できる。その結果、コスト削減はもちろんのこと、株式の価値をさらに分割して、1円未満単位でも流通させることができ、支払手段として用いたり、新たな投資家を呼び込んだりといった新たな可能性もあるのだ。
今回の関連法令の改正で、セキュリティ・トークンの発行に対して投資家から資金を募る時、その募集業務を行えるのは、株式や投資信託などの取引を扱う「証券会社」でなければならなくなった。関連法令は「資金決済法」と「金融商品取引法」の2種類。
法令上、正確にいえば証券会社は「第一種金融商品取引業者」という業規制になっている。株式の新規上場するときの業務が行えるのは、この業者のみ。そこに相乗りするように、セキュリティ・トークンでの募集を行えるのも同業者のみという規制になった。セキュリティ・トークンの募集を行うことを「STO」(Security Token Offering)という。
■セキュリティ・トークン発行のイメージは株式と同じ
引用元:金融庁広報誌アクセスFSA 2020年5月号
図中には証券会社の登場が無いが、企業や投資家間の発行・売買とそれによる金銭の受け払いを業者が行う場合、それが証券会社の役割となる。
アステリア社が手掛けたブロックチェーン案件の実例
2020年12月にはビットコインの価格が史上最高値を更新して1BTCあたり2万ドル超となったり、Ethereumという暗号資産が大きくバージョンアップしたりとブロックチェーンに関する話題は尽きない。
本記事で取り上げたニュースは金融業界のものばかりだが、様々な業界・業種でブロックチェーン活用の機運が高まっている。参考までにアステリア社が手掛けた実際のブロックチェーンの具体的事例を紹介しておこう。
■ブロックチェーン技術を使った「3密回避Webアプリ」
ブロックチェーンの特徴である「データの耐改ざん性」を活かし、アリバイ工作や居場所の改ざんができないことを担保。公正な行動履歴を蓄積するソリューション。合わせてイベント会場などの混雑状況を可視化し、コロナ禍対策に必要な3密を回避できる。
引用元/アステリア社プレスリリース
■バーチャル株主総会ソリューションの外部提供(提供先:明治安田生命)
アステリア社が開発したバーチャル株主総会ソリューションは、すでに自社の株主総会では実際に使われている。この度、明治安田生命でも同社のソリューションが採用された。株主による投票の公正性が担保できるブロックチェーンの特長を生かした同ソリューションは、他社からも注目を集めているという。
引用元/アステリア社プレスリリース
デジタル庁の新設や企業のDXの推進もあって、21年にはますます目にすることが多くなるであろう「ブロックチェーン」。まるで腫れ物のように横目でチラチラと見るのはやめて、仕組みを基本からしっかり理解しておきたい。
マンガ+イラストでゼロからわかる!ブロックチェーンを学ぶ第一歩にはコレ
『マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ』(小学館)
著/森 一弥 (アステリア、Blockchain Solution R&Dグループ ディレクター)
作画/佐倉 イサミ
本体1300円+税
ぜひお近くの書店でお買い求めください。
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こんな人におすすめ!
・最近、仕事で「ブロックチェーン」という言葉をよく耳にするが説明できる自信がない
・新しいビジネス、日常をアップデートするヒントを探している方
・ITに苦手意識のある方
取材・文/久我吉史
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