
コロナ禍で企業の業績が悪化すれば、社内で吹き荒れる可能性が高くなるリストラの嵐。会社を守るためには誰かが犠牲にならければいけないが……その誰かは、自分であってほしくはない!
リストラの恐怖に打ち勝つためには、解雇の仕組みを知っておく必要がある。
もし、あなたに労働に関する知識がないと不当解雇を受け入れざるをえないかもしれない。そこで、労働契約に詳しい社会保険労務士の萩原京二氏に話を伺った。
解雇は大きく分けて3種類
そもそも解雇とは、会社側から一方的に労働契約を解除されることをいい、大きくわけて3種類ある。
1つ目は「普通解雇」と呼ばれるもので、おもに明らかな能力不足などを理由に解雇される場合がこれにあたる。
2つ目は「懲戒解雇」。こちらは会社のルールである就業規則(服務規律)に違反した場合に行なわれる懲戒処分で、最も重い処分として解雇されるケースだ。
そして3つ目が、「整理解雇」。普通解雇、懲戒解雇は主に労働者側に原因があるのに対して、整理解雇は会社側の都合によって解雇される点が大きく違う。今回のコロナ不況を業績低下の理由に挙げた場合、これに当てはまるだろう。
整理解雇の際の4要件
多数の社労士ネットワークを持つ萩原氏に、整理解雇について細かく説明してもらおう。
「会社が整理解雇を行なう場合、厳しい制約があります。整理解雇をする際には4つの要件をすべて満たした状態でなければいけません。①人員削減の必要性、②解雇回避の努力義務、③選定の合理性、④手続きの妥当性です」
要件を満たしていない場合とは、どのような状況なのだろうか?
「①人員削減の必要性では、人員を減らさなければいけないはずなのに、採用人事を例年通りしていたらおかしいですよね。矛盾します。他にも、②解雇回避の努力義務では、経費削減、賞与削減、時間外労働の短縮など、解雇以外の方法を検討したかが問われます。
例えば、整理解雇をするのに、社長が高級車 を乗り回していたり、高額な役員報酬を取り 続けていたりしたら、経費削減の努力をしているとは思えませんよね。この場合は、整理解雇に合理性がないと判断される可能性が高くなります。
このように、会社と言うのは労働者を急に辞めさせることはできません。労働者は様々な法律で守られているのです」
コロナによる緊急事態宣言が発令された2020年の春先、整理解雇の不当性を訴える、ある事件が起きた。
タクシー事業を展開するロイヤルリムジングループが業績不振を理由に、運転手約600人を突然の解雇を発表した。その後、運転手側から訴訟が起きる事態に発展。最終的には和解して、解雇は撤廃。無事に業務復帰を果たすことができた。
このように会社側からの突然の解雇申告は他人事ではないのかもしれない。
リストラを避けるにはどうすれば?
「4要件が揃わなければ整理解雇は難しいのですが、逆に言えば、それらが揃えば整理解雇に合理性があると判断される可能性が高いということです。労働者は日頃から、会社の現状をよく見ておくことが大事になります。
そして、整理解雇を言い渡されるまでには、会社は必ず段階を踏まなければいけません。(手続の妥当性が問われます)
例えば、「労働者に対する誠実な説明や協議」「余剰人員の配置転換(出向・転籍)」「一時休業」「希望退職の募集」などです。あなたの会社でこのようなサインを察知したら、早い段階で危機感を持って対処してください」
もし、ワンマン社長が経営するブラック企業に勤めていた場合、先ほどの4要件が揃っていない常態での不当解雇もあり得るだろう。
その場合は、解雇を言い渡されるまでの経緯について、きちんと記録(メモ)に残しておくと、のちに役立つかもしれない。さらに言えば、社長に浪費癖があった場合は要チェックだ。
もちろんこれらの行動というのは、自分が解雇要員に選ばれないように、仕事上の努力をした上での話ではあるのだが……
【萩原氏プロフィール】 萩原京二(社会保険労務士) 1963年東京都新宿区(神楽坂)生まれ。1998年社会保険労務士として開業。2010年(株)全就連(人事関連のサービス会社)を設立。現在は、「社労士事務所の経営コンサルタント」として、全国約150事務所に対して顧客開拓・売上アップなどの指導を行う。2020年に小学館から発売された書籍『マンガでわかる 知らないと絶対損をする!これからの働き方 キミの生涯賃金“2億円”を守る!労働契約の方法』の原作者でもある。詳細はHP『ワークリテラシーの教科書』にてhttps://workliteracy.biz/
文/佐々木 翔
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