伏兵のお通しからして感涙!
するとお店を一人で回してるご主人が、
「お客さん、ラーメンは食べますか?」
って聞いてきた。申し訳ないんだけど、
「すいません、ラーメンは食べないかなァ〜」
っていうと、ラーメン食べない呑みの客にはお通し代がかかるとのこと。そんなのぜんぜんOKですよっつうと、出てきたお通しが“生海苔”! 佃煮みたいなヤツじゃないよ、本当の生のヤツ。
これに別添えでポン酢が付いてきたんだけど、いや〜これでいきなり脳味噌射抜かれた! シャレ抜きで今まで人生で喰った海苔で一番旨かった。コリコリかつサクサクした歯ごたえがあって、一噛みするごとに磯の香りが口から鼻に抜けつつ、押し寄せるグルタミン酸的旨味! 白子がくる前から、コイツを箸でちょっとつまんだだけで、バイスがガンガン進む!
そしてついに、トラフグの白子登場!! 大きさ的には相撲取りの親指一本分くらいですかね。その白い表面にうっすらと茶色い焦げ目がついてかすかに湯気が立っている。
三連皿みたいなので届いたんだけど、白子がその真ん中に置かれ、その左横にはポン酢、右横にはピンク岩塩が調味料として添えられている。
すでに四等分くらいに包丁が入れられていたその白子の端っこのヤツを、まずは岩塩をちょっとつけて口に入れる。ソフトな触感を口中の全神経で感じながら、一気に前歯で噛む! 瞬時にドロリ〜ンと舌の上に広がる濃厚な最上魚介系クリームといいましょうか、もうなんか説明できない、次元を超えた旨さのマグマ!!
この旨さだけで、あとなんも喰わずに30分呑めるくらいなんだが、まだ白子は3切れあるし、生海苔も残ってる!
とにかくオレがこれから焼く1時間、心より幸せに酒を呑めることがこの時確定いたしました!
ただ一個だけこの店の弱点があって、メニュー上には日本酒がないんですよ。どうやら宴会とかやると、用意してくれるようなことがメニューには書いてあったんだけど、通常メニューにも載せて欲しいなぁ〜。やっぱこの手の肴には日本酒呑みたくなっちゃうんもんな〜。
しかし日本酒なくても充分以上の幸福オンパレード!! バイス用に焼酎のナカ(350円)を2杯追加し、最後にウーロン割(400円)を呑んで、ちょうど小一時間だったんで、このご時世、深酒せずに帰りました。
で御勘定が、お店の人、間違ってんじゃないか? と思ったんだけど、2000円いかなかったんですよね。オレも間違ってたら悪いと思って二度聞きしたの。それでもその価格だったんで……すいません、まだ幸福感続いております。
2020年の年末にとんでもない店を見つけちまったなぁ…。終わりよければ全て良しか!!
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。
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