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教育や医療の不安、通勤費はどうなる?多拠点生活を実現するための問題点と解決策

2020.12.31

2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」の実現を目指して住宅関連事業者やメーカー、流通・小売りに携わる企業が集い、まずは、ユーザーに心地良いスマートホームを段階的に進めていこうとしています。

2020年10月29日にはカンファレンス「LIVING TECH Conference 2020」を開催。全13セッションの中から、セッション1の内容を3回にわたって紹介します。

左から、池本洋一さん(株式会社リクルート住まいカンパニー 『SUUMO』編集長 兼『SUUMO』リサーチセンター長)、井上高志さん(株式会社LIFULL 代表取締役社長)、佐別當隆志さん(株式会社アドレス 代表取締役社長)、竹中貢さん(北海道上士幌町町長)


※Session1 後編※ 「「職住融合」「職住近接」という新しい暮らし方にテクノロジーはどう寄り添うべきなのか」

コロナ禍で進む多拠点生活と地方創生【前編】在宅ワーク急増で広がる地方移住の可能性
コロナ禍で進む多拠点生活と地方創生【中編】上士幌町の成功のカギはICT活用

地方が抱える教育や医療の不安をICTで解決

井上:竹中さんが考える理想とする完成形があるとして、まだやり残している上士幌町の理想で足りてないピースは何ですか? この質問の背景は、多分アドレスもそうだと思うし、LivingAnywhere Commonsもそうですけど、多拠点で暮らすというときに、子供がいる家庭の場合、医療や教育というのは、地方はやっぱり整備されてないイメージなので、なかなか一歩目が踏み出せないっていうのがあるんですね。

それもこれだけコロナ禍でICTが進んできたので、遠隔教育とか遠隔医療とかが当たり前になればいいなと常々思っているんです。その辺の教育や医療を含めて、竹中さんの理想とするところに足りていないところはありますか?

竹中:人に住んでもらうためには、いろんな要素がありますけど、中でも子供の教育をどうするかは非常に大きなポイントになってくる。ですから単に物理的な面と経済的な面での負担軽減だけではなくて、質の問題が非常に大事だと思っています。例えば、こども園にしても外国人2人を配置しています。「子育て少子化対策夢基金」という条例を作って、「ふるさと納税」から子育てに徹底してお金を使えるような基金を作っています。あとは保育園は完全無料で給食無料です。それから市街地からちょっと離れているところの通園費として、親に対してガソリン代を負担して、ほとんどかからないようになっています。

池本:余談ですけど、うちの次男が島根県で3年間移住していましたけど、中間テストと期末テストの勉強だけはちゃんとやって、それ以外はほとんど地域の活動に従事して、AO入試で第一志望の大学に入学が決まりました。大学側もAOで学ぶ意欲や活動意欲がある学生を取ろうとなってきています。企業側もそういう人を採用したいという話があって、変わってきているのかなっていう感じはします。いろんな実績が出ている気はしますが、やっぱり地方においては高校や大学の進学はみんな不安ですよね。

竹中:そうですね。大学は他に出ていくことになりますけど、そこのところに大きな課題で高校という問題が出てきますね。少なくとも中学校までは全然心配なく預けてもらっても構わないと思いますが、そのあたりからいろいろな選択肢が出てくるっていうのがあります。教育と地方のリアルな生活体験や自然体験は、やっぱり社会で活きてくる。これは地方の特性として、しっかりその辺は活用して伸ばしてあげるっていうのは大事だと思っています。

それと医療の問題がありますけど、医療も意外とそんな心配はないです。例えば2次医療や3次医療が4050分で受けられるということ。心配を少しでも軽減するために、消防署の職員の車での救急があっても、病院に着くまでの間の手当だとか、こういったところにちゃんと相当する研修をしっかりする。

移住定住の関係で来た人から、街中でお腹を痛くして救急病院に搬送されるまで1時間半以上もかかるような話を聞くと、4050分で地方の病院なら行ける。最近では遠隔治療が大事なポイントになってくるんです。特に若い親は、子供が夜に熱を出したりしますからね。東京なら夜間診療してくれる医療機関がありますが、そういったところがなくても、安心して診てもらえるということですから。これもICTの関係や今回のコロナ後の活用などで、一気にその辺の不安は解消されていきます。

池本:素晴らしいですよね。このセッションは地方自治体のまちづくりの話だけではなくて、多拠点居住の話もありますので、こちらの議題に入っていきたいと思います。複数拠点の拠点居住やこれからのニューノーマル(*1)、そして移住定住。そういった拠点移住でいくつか、交通の課題という話もありましたけど、井上さんと佐別當さんから、さらに進めていく上で今も見えてきている課題、それをどういうふうに解決していけそうなのか、あるいはそのためにみんながやってかなきゃいけないこと、少なくとも新型コロナで少し動きが変わってきたのかとか、そのあたりをちょっとお聞かせいただけたらと思います。

*1 社会的に大きな影響を与える出来事により、新しい常識や常態が生まれること。新常態。

佐別當:コロナ禍で会員数が伸びているっていう話と、(アドレスの会員に)20代、30代の若者が増えているという話をしましたが、面白いのが20代の新卒でアドレスを使っている人が出始めたことです。自分の家の家賃に加えて月4万円を新卒が払えるのかといえば普通は年収的に考えて無理じゃないですか。どういうことかというと、だいたい女性が多いですけど、実家暮らしの方が結構増えていて、実家暮らしかつアドレスで月4万円払って多拠点生活しているっていう方が増えてきています。

ひとり暮らしをすると礼金・敷金がかかるし、結局リモートワーク中心の生活ですが、実家をベースに多拠点生活をすれば、テレワークしつつ必要であれば出社もできます。多拠点生活をして、いろんなところで家族以外のいろんな人と出会いたいという方々が出始めています。さっきの教育の話になりますが、僕らは立命館大学から出資をしていただいた背景もあり、大学生の会員も増えています。今年、大学がオンライン化されていったり、ゼミだけオンラインという形になってきたりしているので、大学生が家の中に閉じこもっている状況になってしまっていて。彼らはせっかく時間もあるので、一部の方々がバックパッカーではなくて「ウーバーパッカー」だと自称していて、ウーバーイーツの箱を持って、学生生活しながらいろんな地域でウーバーイーツで稼ぎながら生活しているっていうんですね。「ウーバーパッカー」の学生が出始めたり、20代前半の若者たちの多拠点生活のあり方みたいものがコロナ禍以降でちょっと変わってきた感じです。

池本:井上さんのところもコロナで変わってきた感じはありますか。

井上:一番大きかったのは働き方が劇的に変わったので、我々の会社もそうですけど社会的にも在宅ワークだとか「ワーケーション」だとかっていうものがノーマルになってきましたよね。実際に地方の拠点に行って、緑の見えるところや海に近いところで働いていると、みんなすごく嬉しそうなんですよね。「Well- beinng」度が高まっているんです。それは非常によかったなと思っていて。うちの会社では社員が僕らのLivingAnywhere Commonsの拠点を使う分には在宅ワークとみなしています。

自社の話だと在宅で働くときにも机とか椅子とかやっぱりちゃんとしたものを買いたいじゃないですか。ただ若い子が自腹で出すのは躊躇してためらうみたいなものがあったので、2020101日から全社員の給料を10パーセントほどベースアップして、この中で好きに在宅でもいいしLivingAnywhere Commonsでやってもいいし、多拠点生活をやってもいいし、とにかく働いているんであれば、どこでやってもいいよって。その環境整備はベースアップ分のお金の中で自由にやってねっていう形にしました。

池本:動きが早いですね。

井上:そういう意味では、これから5000校もあると言われている廃校が使われないまま放置されているので、それをちゃんと拠点にして、それこそ全国1000ヶ所ぐらい拠点があれば、みんないつでも好きなところに行けるわけですよね。僕の夢があって、桜の開花時期に桜前線とともにずっと日本を北上していって、2か月半、満開の桜の中で仕事をして、その土地の美味しいものを食べて、お酒を飲むっていう生活を満喫したいなと思っているんですよ。多分そういう人たちが増えてきますよね。

池本:私もそういう生活したいです。ちなみに余談ですけど、眼鏡屋のJINSさんがThink Labって新しいビジネスで、眼鏡でどれだけ集中しているかを測定するデバイスを作ったんですよ。その実証実験の結果が面白くて、オフィスの集中度が43パーセントしかなくて、新幹線の中が70パーセントで公園になると90パーセント以上になるんですね。つまり人はいつもいる環境の中で仕事してたり、話しかけられると集中力が上がらない。

そうじゃない環境の方が生産性が上がるってなれば、いろんな場所で仕事するっていうのは、なんか贅沢だな。「遊んじゃうんじゃないの?」みたいな見方が経営層はまだあると思うけど、そういったものをちゃんとデジタルで測って立証していけば、だいぶ変わってくるんじゃないかなっていうふうに思います。ぜひ井上さんの会社も生産性を図っていただいて。

井上:すでに採算システムを入れているので、僕らの従業員も10分単位でどのぐらい業務をやったかって全部「見える化」しているんです。なので、どこで働いてもらってもわかるんで。

池本:そうですよね。ぜひ楽しげな場所で仕事した人間がちゃんと生産性よく働いているっていうのを出していただければ。

井上:働き方で言うと労働基準法そのものをちょっと見直して欲しいなと思っています。時間だけ管理するという概念もこれから変わっていくんじゃないですか? その辺も見直すタイミングが来ているなと思っています。

池本:わかりました。多拠点居住の課題について、まだ話が聞けてないので、佐別當さんにマイクを戻しまして、課題の中でいわゆるテクノロジーで解決できるものとテクノロジーでは解決できないものがあると思うんですけど、その課題の提起とテクノロジーの解決策、そうでない解決策についてコメントをいただけますか。

佐別當:課題としては、やはりテレワークの概念では在宅ワークはいいけど、その他の場所や家以外の場所で仕事するなというのはかなり多いですね。あいつは家で仕事していないぞと。それが会社にバレて退会してしまった会員がいるぐらい。生産性も上がっているし成果も出しているし、何も会社に迷惑かけてないのに、ただ家以外の場所で仕事してたっていうことで怒られる。会社のテレワークのあり方とか働く場所に対する考え方とか、さっきの時間管理をするっていうのはやっぱりちょっとおかしな話だと思うので。アドレスの会員さんでも生産性の高い方は、移動中に仕事を終わらせて現地では目一杯遊ぶっていう方もいらっしゃるんですよ。その方が絶対にお互いにとっていいはずなので、働き方に対する会社の理解というところは何とかしてほしいなとは思います。

リモートワークによって関東近郊の人気エリアも変化

井上:ちなみに『SUUMO』の調査では、地方に住んだり郊外に住み替える人は、増えていますか?

池本:ログデータでは間違いなく増えています。

井上:どのぐらい増えているんですか?

池本:切り方によるんですけど、だいたい東京のど真ん中を1としたときに、1.5ぐらいですかね。平均すると1.3ぐらい。ただすごく優劣があるんですよ。全部の町が平均的に上がっているということはなくて、2倍になっているところもあれば、下手したら0.8になっちゃっているところもあるっていう状態なので、何か魅力的な郊外とそうでない郊外で、今回はかなり差がついちゃったなっていうデータの出方です。

井上:僕らの『LIFULL HOME'S』で行なった「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」の結果では、問い合わせが伸びた人気の町が千葉県八街です。

池本:『SUMMO』でも八街はすごく伸びていて4位ぐらいです。

井上:首都圏の賃貸だと神奈川の本厚木が1位。今までありえないような結果になってくるわけです。だからそれだけ皆さん郊外や地方に目が向いているし、複数拠点やノマドみたいな無拠点居住というのも、だんだん若い人中心に増えてきている。さっき言った教育の話と医療が遠隔である程度クリアされると、あと最後に唯一残るのは移動のところで、佐別當さんのところでサブスクで飛行機とかJRが使えるようにしてますけど、(自動車の自動運転が)早くレベル5(*1)で完全に自動走行できるようなものになれば、その間にお風呂に入ってご飯を食べてテレビ見て、いつの間にか目的地に到着できるようになる。

*1車の自動運転の段階はレベル0からレベル5まであり、レベル5は走行場所を一切問わず、システム側が完全に運転操作を担う。

そういう未来が実現できると非常にいいなと思っていて、そこも実験をしたいんですけど、やはり規制がある。そこはとっぱらっていかないと。イーロン・マスクが今年中にレベル5が実現するって言っていますから、技術はもうできているんですけど。あとは道路交通法あたりの見直しを期待したいですね。

池本:そろそろ時間ですが、上士幌町では他の自治体と何か一緒に取り組んでいるとか、今後の予定もあれば教えてください。

竹中:先ほど申し上げたように東京と向き合いたいというのがそもそもの発想でありますので、そういった機会があったら、ぜひやりたいなと思います。

池本:二つ目の質問は、もし官民・民民連携でこれからこんな動きができたらいいなとかあれば教えてください。

井上:僕個人は官民という意味でいうと新経済連盟で経済団体の理事もやっていますので、この辺についてはスーパーシティ構想(*2)ですね。

*2 地域の課題を最先端のテック技術で世界に先駆けて解決するための「まるごと未来都市」の実現を、地域と事業者と国が一体となって目指す取り組み。

池本:インフラ面の課題を鑑みていけば解決できるかということに関しては?

井上:拠点化して、教育や交通整備とかインフラの課題があって官民・民民でどんなことできますかでいくと、経済団体の理事としては政策提言を政府に出したり、各省庁の大臣と対話を重ねて規制改革をすると。総理大臣が菅さんになったので、規制改革の鬼と思われる首相ですから、そこは進みが早いと思います。民民のところは、先ほど「LivingAnywhere WORK」という話でやっていますけど、そこはテクノロジーを導入して、どっかのエリアでスーパーシティを実際に作って実証実験したいっていうことも含めてますので、今後は連携が進んでいくと考えています。

池本:最後に竹中さん、一言お願いします。

竹中:ご縁ができるといいなと、そんなふうに思っております。現地に来ないと、なかなかわからないということがありますから、いろんなことを試していただきたいなと。

池本:はい。ありがとうございます。ご登壇いただいた皆さん、改めてありがとうございました。

 

取材・文/久村竜二

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