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これからのサービスの起点になるポイントは「リアルとデジタルの垣根が無く、最適なサービスをどうやって提供するか」

2020.12.31

2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」の実現を目指して住宅関連事業者やメーカー、流通・小売りに携わる企業が集い、まずは、ユーザーに心地良いスマートホームを段階的に進めていこうとしています。

2020年10月29日にはカンファレンス「LIVING TECH Conference 2020」を開催。全13セッションの中から、keynoteの内容を3回にわたって紹介します。

左から、桑原豊さん(株式会社日経BP社 日経クロステック 日経アーキテクチュア 編集委員)、山下智弘さん(リノベる株式会社 代表取締役 一般社団法人LIVING TECH協会 代表理事)、古屋美佐子さん(アマゾンジャパン合同会社Amazonデバイス事業本部 オフライン営業本部 営業本部長/一般社団法人LIVING TECH協会 代表理事)、藤井保文さん(株式会社ビービット 東アジア営業責任者)、坂根工博さん(前国土交通省国土政策局長 キャリアコンサルタント)、ビデオメッセージ出演:世耕弘成さん(参議院自由民主党幹事長 参議院議員)


※keynote 後編※ 「LIVING TECH協会発足の意義。未来の日本のために今、企業がすべきこと」

【前編】未来のために今、企業がすべきこと 本当の「ユーザー目線」とは何か?
【中編】未来のために今、企業がすべきこと コロナ後の人々の意識、行動変容は社会に何をもたらすか

デジタルとリアルの融合

藤井:みなさんにお聞きたいしたいんですが、今って民側にものすごく力が与えられる時代だと実は捉えていて。デジタルとリアルが融合している時代であると。

(著書の)『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』の中でも言っているんですが、AIスピーカーなどの話で言ったらリアルかデジタルか、ユーザー側はどっちでもいいと思っているというか。デジタルにも繋がっているし、リアルでもある。今まではリアルのアーキテクチャ、つまり「行動を規定する環境を作る」ことは行政がやることでした。一方で、デジタルやオンラインで何が民にとって魅力だったかというと、民側で全ての環境設計ができて、ジャーニーともいわれるように道筋や行動をデザインできること。これが非常に魅力的でした。

デジタルとリアルが融合してくると、今度は民側が今まで行政が普通に作っていたはずの「歩道と車道を分ける」とか、私はアーキテクチャーと呼んでいますけれど、そういうものを民間で作ることができるようになって、リアルとデジタル両方を混ぜると、その力がすごく強くなる。

例えば、今まで三日坊主でダイエットができなかった人たちが、「人も支えてくれるし、場所も支えてくれるし、アプリも支えてくれるし、食事も支えてくれる」ってなると、何とか自己実現できるじゃないですか。それってまさに、ユーザーが本当に求めているような自己実現を、いかにしっかりUX側でサポートしてあげるか、それは今できる力を最大限使って「リアルとデジタル全部を合わせて世界を作ってあげること」をやるべきだと思うんですよね。

桑原:そこはリアルとデジタルの垣根が無くて、ユーザーの方に最適なサービスをどうやって提供するか、ということを優先して考えていくという。

藤井:その人の置かれている状況となし得たいことっていうものをいかに支援するか、もはや「行動支援」みたいな状態になっているのかなと。

桑原:そこがサービスの起点になっているということですね。

藤井:そうですね。本当にみなさんが連携していかないとなし得ないことになっていく。我々側でかける願いと、ユーザー側が本当になし得たいことをいかにクリアにするか。それが一番重要なんだろうなという気がしますね。

坂根:そうですね、元々政府の役割って何なのかなっていうことを基本に立ち戻って考えると、三つあると思うんです。

一つは「国民の生命・身体・財産を守ること」。二つ目は「所得再分配をすること」。これは競争が激しくなればなるほど、競争の舞台からこぼれ落ちる人がいますから、税や生活保護等で支えていくということです。それから三つ目は「公共財(public goods) を供給すること」。これは多くの社会資本のように誰かが供給するとただ乗りが生じて、結局民間市場では供給されなくなるといった財があるので、それを供給すること。

戦後、特に2000年代初め頃までの拡大成長の時代は「希少な資源をどう効率的に配分するか」という観点から規制を組み立て、政府主導で資源配分を行ってきた経緯があるんですけど、そういったものはどんどん無くなっていく。しかも、その規制についても法律で一律に人の行動を縛るというやり方では効率の面で無駄が生じますから、例えば情報を提供したり、経済的なインセンティブを与えたりすることによって人の行動を変えたりといった手法に変わってきています。

自動車の自動走行なんかを見てみても、これまではいろんな規制でなかなか社会実装ができなかった。ところが、民間のテクノロジー開発によって「人が運転するよりも安全じゃないか」いうことになると、いろんな規制が変わってくる。一般論ですけれども、そういう新しい発想、新しい人の動きに応じた規制なり、お金の使い方になっていくのかなという風に見ています。

藤井:世論としてよく出てくるのは、結局「国どうしたいんだ」みたいな意見です。今のお話を伺うと、やはりその願いみたいなものはユーザー側からというか民側から出てきて、それを整備したり緩和したり支えていくっていう役割を持っていただく構造なんだとすると、「今日僕らが頑張んなきゃいけないですね」みたいな話に結局なるんですけど(笑)。

坂根:人材面でも金銭面でも国の政策資源は限られているし、硬直した規制などがまだまだ残っていたりするので、そこを打破していくのも、民間事業者の創意工夫だと思っています。

桑原:そういう意味では民間の側で、一般の方や利用者の方に対してどういうサービスを提供するかを考えながら、そのサービスがやりやすいルール作りを官にお願いする、というような形になっていくのですね。

山下: この後のセッション(Opening Session)で、暮らし方冒険家という方が出てきますが、事前の打ち合わせの時に「便利だからって本当に広がるの?」という意見をいただいたんです。僕は割とユーザーの目線を持っているつもりでいたのですが、「便利だったら使うでしょ」と考えていたので、今までそういう視点はまったく持てていなかったのですが、「いや、そうじゃない」っていう意見が、まったく違う角度からあったんです。これは本当に、意見聞くまで想像もつかなかったんですよね。そういう目線を民側が集めて官に「こうしましょうよ」と提言しながら進めていくということが正解なんだろうなと思ってきました。

古屋:そうですね。どうしても企業の立場だとプロダクトアウトで「こういうサービスを売りたい、こういうものを売りたい、自分たちの会社の物を売りたい」っていうところが先行してしまいがちですけども。

でもやっぱり、こうやって複数の分野横断で話すことで「実際にお客様は何を考えているのか」とか「お客様のどういう問題を解決しなくちゃいけないのか」っていう視点で連携して「だからこういうことをしたい」っていうような形で働きかけができたらいいなとすごく思います。

藤井:企業の目的、一社の目的になってしまうと、どうしてもプロダクトアウト的になってしまうけど、こうやってみんなで集まって話すことで「本当に良いもの」が生まれるかも、ということですよね。

古屋:最終的には、それが企業にとってもやっぱり受け入れられるサービスが提供できるので、良いことだと思うんですよね。

山下:アマゾンさんはユーザーの目線をかなり意識されていますよね。一企業として「そこまでこだわるんだ」と、よく感じます。

古屋:企画書はすべて「お客様が何に困っていて、何を解決したいからこれをやります」とプレスリリースを書かないといけないルールになっています。本当に解決したい問題は何なのかというところから始めるのは、すごくこだわりを持っていますね。

藤井:「プレスリリースに価値が書けなかったら終わり」ってことですね。

古屋:そうですね。「お客様がこれに困っていて、これをしたらこう解決したんだよ」っていう感想をもらえる前提ですべて始めるので。そこがこだわりですね。

あとは「失敗したらすぐに学べばいいよね」というところが一つ面白いと思います。お客様の仮説は立てるんですけど、実際立ててみたらお客様はそういう使い方しなかった、そしたらそこからすぐに学ぼうよっていう。トライ&エラーのスピードは速いですね。失敗を良しとします。

藤井:街とか生活環境で言うと、トライ&エラーを回していくところも難しそうな印象がありますね。

山下:例えば、住まいを作る時、構造物を変えるのってコストと時間もがかかるんですけど「プレーンなもの」を作っておけば、後から可変的に動かせる部分てたくさんあるんですよね。スマートデバイスがまさにそうだと思うのですが、やっぱり自分にとって使いやすいかどうかは、やってみないとわからないので、体験できる環境を作っていくことが、普及するには一番早いのかなと。見ただけではわかんないよねっていう。

坂根:政府では、特に菅総理が「自助・共助・公助」という言い方をしています。それに対して批判もあるのは承知の上で申し上げますと、その考え方って、この場でも当てはまると思うんですよね。

失敗しても最後にはセーフティネットがあるという姿、そして失敗してもいろんな選択肢があるという姿。そうした姿を具体的に見せられるような政府の取り組みがなされていくと、人々のマインドも変わっていくのかなと思います。「最後は共助そして公助があるよ」っていうことを前提にしながら、新しいチャレンジがなされていくのかなと思います。

今”最先端”を学びたい人は日本から深圳へ

古屋:少し前だと日本にイノベーションを学びにいろんな国の方が来ていたと思うんですよね。最先端を知りたいからって。実は今、みんな(中国の)深圳に行ってしまっているんです。今まで一部の方が知っていたけど、「そうなんだ、日本て進んでいると思ってたのに」っていうのが気付かれた年になったと思うので、すごくいいタイミングかなと思います。

藤井:そうですね。中国は「特殊なエコシステムを自ら作った」という構造だとは思います。前に深圳のアーティストの方の話を聞いたときに「深圳は産業だけでとにかく盛り上がってきたが、世界一級の都市、それこそニューヨークとか東京みたいになるには文化がないといけない」と言っていて。「そこにいかに文化を根付かせて世界一級の都市にするのかが、僕たちアーティストの持っている使命だ」と言っていて、すごいなと思ったんですけど(笑)。

その意味だと、まさに街づくりとか都市づくりになってくると文化的な意味合いがその街の価値を決めたりしますし。中国で見ていると、スマートシティをやっていく時にどうしてもテンプレート化してくるんですね、技術だけで考えていくと。やっぱり街の文化や色みたいなものがしっかり出てこないと、テンプレート化してしまう。それをいかに掘り出すかっていうことを真剣に考えられていて。

逆に言うと僕らって多分、そういう文化的なものを醸成していくのは得意で、中国にまだ頼られていたりするような状況だったりするので、そこも観点として持っていけると良いのかなと思いますね。

民と官をつなげる存在へ

いろいろな議論が出てきましたけれども、そろそろまとめに入っていきたいと思います。坂根さんと藤井さんにLIVING TECH協会に対する期待みたいなお話を一言ずついただければと思います。まず坂根さんからスライドがあるので。

坂根:一言で言うと、新しい技術と発想で人の豊かな暮らしを作るような、そんな仕事をしてほしいなと思っています。デジタル化、AIITの活用は当然として、これからはオフィスとかホテルとか住宅とか福祉施設などの境界が解消し、融合していくと考えています。これまでともすれば固定観念に囚われていたような物の使い方、施設の使い方がどんどん変わっていくんだろうと思います。そこに新しい技術を入れて欲しい。

それからスマートシティなど新しいまちづくり。これは政府全体で大きな課題になっていますけれども、いろんな可能性があると考えています。ハードだけじゃなくってヘルスケアとか文化教養といったソフトも含めた形で、新しいまちづくりが今後進んでいくだろう。それに力を貸していただければと思っています。

そしてあと二つはよりソフトな部門です。コミュニティデザインや関係人口、居場所づくりといったソフトの話は政府が苦手としているところです。新しいビジネスの創出、フリーエージェント・多業の活用ということで、新しい仕事や働き方についてもLIVING TECH協会には大きな可能性があるのかなということで非常に期待をしております。

藤井: ユーザー視点が欠けていたり、データをとにかく取りたいって形に仮になっていたりしてしまうと、ユーザーに入力負荷をかけたりしがちじゃないですか。日本あるあるだと思うんですけど。中国にはそれがなくて、だからバリバリ使われるんだみたいなことあるんですよね。とにかく使われてなんぼであると。

僕は今日、安心したところがあって、とにかくユーザー視点で使われることや喜ばれることを第一義に置く、みたいなところはぜひしていただきたいですし、何かしていただけるんじゃないかなという期待感をすごく持ちました。

もう一点、全員に一律で同じ支援を施す、という配給的な構造から、テクノロジーの進化をしっかり使って、行動データをベースにして一人一人に合わせたサービス提供へアップグレードされる、というのも期待したいところですね。

桑原:最後に、これからどういう協会にしていきたいか、理事のお二人に伺えればと思います。

古屋:私はユーザーと企業と公の国だったり地方行政だったり、つなげる場にできたらなって強く思います。

山下:今日は面白かったです。面白かったですが、やんなくちゃいけないし、そういうことなんだなっていうのがわかってきたんで、汗をかきました()

僕たち官と民の話でいくと、民がやるべきことの裁量が増えたという風に思う方がいいと思っています。官に対して「どんどんこんな風にやるべき」と、ユーザーの代表として提案・提言を持っていくことが、LIVING TECH協会の役割なのかなという風にして締めくくらせていただければと思います。

桑原:みなさん、どうもありがとうございました。

取材・文/久我裕紀

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