今年1年の振り返りをして、来年に備えるシーズン。家計については、コロナ禍でその内訳に大きな変化が起こったことだろう。そもそも家計が圧迫されているケースも少なくない。
そのようなコロナ禍家計を助けるマネー術を、ファイナンシャルプランナーの解説のもと、紹介する。
コロナ禍家計の見直し術
先日、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」主催で、ファイナンシャルプランナーによるセミナーが開催された。そこでは、コロナ禍で多かれ少なかれ影響を受けた家計の助けとなる、コロナ禍の今だからこそ知っておきたい「お金が貯まる家計見直し術」が、日本FP協会認定ファイナンシャルプランナーの飯村久美さんによって紹介された。
その中から役立つ情報をピックアップして紹介する。
【取材協力】
飯村 久美さん
日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー
金融機関勤務後、FPとして独立。2006年、FP事務所アイプランニング開業。これまでの家計診断は1,000世帯。ファミリー世帯や女性の幸せなマネーライフをサポートしている。
「日経WOMAN」、NHK「あさイチ」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」などメディア出演多数。著書に「子どもを持ったら知っておきたいお金の話」(中経出版)、「ズボラでもお金がみるみる貯まる37の方法」(アスコム)がある。
https://www.fp-iimura.jp/
1.電気代の節約術
飯村さんの自宅でも、電気代は前年と比べて4月から10月までの電気代が増えたという。子どものオンライン授業化、夫のテレワーク化が要因だったようだ。そこで電気代の見直し術が紹介された。
(1)電気契約の見直し
●契約アンペアを変更する
契約アンペアが40Aだと基本料金は月1,100円くらいだが、50Aだと1,400円に上がる。また電気料金は一度に使う電気の量で決まるため、契約アンペアと一度に使う電気を照らし合わせて、最も良いプランに変更する。
●電力会社を変更する
電力の自由化が2016年から、ガスの自由化が2017年から始まったことから、自分のライフスタイルに合ったお得な電力会社に変えることができる。
比較サイト「エネチェンジ」で、どの会社がお得になるかをシミュレーションしてみると良い。今よりも安くなる可能性が出てくるため、これを比較しよう。
飯村さんが見直しをして電力会社を変更したところ、年間1.2万円の電気料金削減につながったそうだ。
(2)日常の電気代の節約
●エアコンの節約術
・エアコンのスイッチのこまめなオン・オフは逆効果。温度調整機能に任せる。
・風向きは下向きに設定する。すると、暖かい空気が床から天井に流れて部屋全体が暖かくなる
・扇風機があれば壁側に置いてエアコンと併用する。
・エアコンの室外機の前に物を置かない。
・フィルターを2週間に1度水洗い、ホコリを掃除機で吸い取る。
●その他の電気代節約術
・電気カーペットは「強」から「中」へ。
・冷蔵庫の設定温度を「強」から「中」へ。
・食器洗いの給湯器は低温に。
・電気ポットでは保温せずに沸騰後はプラグを抜く。
・温水洗浄便座のフタは閉めておく。
2.スマホ代の節約術
現代は、月に3万~4万円ほどのスマホ代が一般的。家計に占める割合が高い今、どう削減すればいいか。
(1)通信費の削減
通話、通信をどの程度使っているか把握し、使い方に合ったプランを選ぶ。
思い切って、格安SIMに切り替えてもよい。おすすめはUQモバイルやワイモバイル、マイネオといった大手のキャリアのサブブランド。
・家族で通信会社を同じにして、家族で通信料を分け合えるサービスを利用する。
・サブスク(月額定額サービス)の見直し
動画のサブスクやAmazonプライムなどの月額定額サービスを契約し、使わないのに契約し続けているといったケースもある。しっかり見直しをすると良い。
(2)アプリの活用で節約
・外食店利用時には覆面調査員のサイトでアンケート協力する。 例「ファンくる」
・美容院に行くときは、格安で美容院を利用できるアプリで予約する。 例「minimo」
・食品や日用品は安く買えるサイトで調達する。 例「Otameshi」
・レンタルやシェアリングを賢く利用する。 例「サスティナ」
3.食費の節約術
家族が家に集まると、どうしてもかかってくる食事。どのように食費を減らすといいのかが紹介された。
(1)1週間ごとの予算を決める
例えば、食費が月5万円の予算だとしたら、一週間に1万円となる。そして一週間ごとに、封筒などの袋にお金を入れておく。その袋の中のお金だけで、一週間、工夫してやりくりすると、余計な無駄遣いや予算オーバーということもなくなる。
(2)レシートを見て買い物の振り返りをする
支出を見える化する「レシートアンダーライン作戦」をする。
これは、1日の終わりにレシートをチェックする方法。チェックするときに蛍光ペンなどでマーカーを塗る。
・ダブり買いやイマイチだった買い物=ピンクのマーカー
・衝動的に買ったもの=黄色のマーカー
など色分けして振り返ると良い。
(3)買う前にひと手間かける
例)価格コムで値段のチェック、チケットショップでチェックして安く買う。
(4)夢の貯金箱を作る
何かしたいこと、したいものなど、自分にとって価値の高いものに優先順位を高くおく。すると、例えば目の前のコンビニのスイーツを見て買おうか迷ったときに、スイーツを買わずにそのスイーツ代のお金を貯金箱に入れる。すると、どんどん夢への貯金が貯まっていく。
(5)MBD(ムバイデー)の設定
週に2、3日、「ムバイデー」という買い物をしない日を作り、手帳に書いておく。
(6)国の制度を上手に活用
●「ふるさと納税」の活用
自分が納めている住民税の一部を、好きな自治体に振り分けられる制度。翌年に確定申告をすると(ワンストップ特例制度を利用する場合は確定申告が不要)、所得税や住民税が安くなり、寄付額のうち2,000円を超えた部分は全額(限度額あり)戻ってくる。寄付をした先から地域の特産品などが贈られることもあり、実質2,000円の負担でお礼の品を受け取れるのが人気だそうだ。
現在、農林水産省が「元気いただきますプロジェクト」として、コロナ禍で被害を受けた生産者を支援する補助事業を実施しているため、通常よりも寄付金額が少なくお礼の品がもらえるなどのお得さが得られる。例えば、通常だと「黒毛和牛切り落としスライス」1kgの寄付金額が2.2万円だったとすると、今年は半額の1.1万円の寄付金額でお礼の品をもらえるというケースもある。
●マイナポイントをもらう
マイナンバーカードとキャッシュレス決済の普及の一環として、「マイナポイント」というポイントをもらえるキャンペーンがある。マイナンバーカードを持っている人が、キャッシュレス決済を1つ選んでオンライン登録をすると、チャージや買い物した金額の25%のポイント還元(最大5,000円)が受けられる。2021年3月末までにカードの申請を行えば、9月まで利用可能になるそうだ。
今から見直すことで老後の赤字を補填できる
飯村さんは最後に、家計を今から見直すべき理由を述べた。
現在は40歳だとして、通常、現役でいられるのは65歳までの残り25年。この期間にしかマネーの対策は立てられない。
現役のときに、例えば、次の項目を見直して、930万円の効果が出たとする。
・通信費 ▲ 5千円 × 2 人
・水光熱費 ▲ 1千円
・食費 ▲ 2万円
→見直し効果は 3.1万円 × 12 か月 × 25 年= 930万円
一方で、総務省「家計調査」では、夫婦2人以上の世帯は年金収入は約22万円に対し、支出は約26万で、4万円が赤字となっているデータが出ている。
4万円 × 12 か月 × 20 年= 960万円
つまり、先ほど現役時代に見直しして得られた930万円は、老後20年の赤字分と同じくらいに匹敵する。このことから、できるだけ早めに見直して、無駄を削減し、貯蓄を増やしていくことが重要だという。
ふるさと納税テクニック
セミナーでは、有楽町にあるふるさとチョイスカフェ店長兼、セミナー講師の伊藤健作さんから、ふるさと納税を賢く利用するテクニックが3つ紹介された。この年末に“駆け込みふるさと納税”をする予定の人は、ぜひチェックしておこう。
●テクニック1 駆け込み納税の“冷蔵庫パンパン問題”の対策
ふるさと納税は12月31日まで行えるが、年末に駆け込みでまとめて寄付することで、お礼の品を複数受け取るケースが多いという。しかし、お礼の品の量が多すぎて、肉や魚などの冷蔵・冷凍食品は冷蔵庫に入らないといった“冷蔵庫パンパン問題”がよく起きるという。その対策が次の2つだ。
対策その1:ポイント制自治体を選んで年明けにゆっくりお礼の品を選択
ポイント制を採用している自治体では、ポイントを積み立てることができ、ポイントの期限内に自分の好きなタイミングでお礼の品の交換ができる。そこで年末に寄付をしてポイント付与を受けておき、年明けにゆっくりお礼の品を選ぶという方法だ。これなら一度にまとめてお礼の品を受け取らなくて済む。
対策その2:定期便を利用して分散して受け取る
毎月、隔月で届く定期便として受け取れるお礼の品もあるため、それを選んでお礼の品を分散して受け取るといったことも一つの方法だ。
●テクニック2 コロナ禍によるワケありの品を利用する
今年はコロナ禍で特に多い、生産者応援につながる“ワケあり”の品を利用するというのも一つのテクニック。通常では廃棄される、いわゆる“ワケあり品”、つまり規格外であるだけで品質には問題がないお礼の品もある。そうしたものをお礼品に選ぶことで、生産者を支援することにつながる。
●テクニック3:生産者応援プロジェクト「ニコニコエール品」を利用する
「ふるさとチョイス」の新型コロナウイルスに関する支援プロジェクトを利用するというのも一つの方法だ。先ほど飯村さんから紹介された農林水産省の補助事業「元気いただきますプロジェクト」を活用した「ニコニコエール品」を利用する方法だ。
通常よりも半額の寄付金額でお礼の品が受け取れるなど、お得が得られる。
どの家計も、何かしらコロナ禍により影響を受けていると思われる。同時に、我が家の家計の弱点を知り得たのは貴重な機会といえる。家計を見直すチャンスとしてとらえ、日々の家計のやりくりはもちろん、老後まで見据えた対策が重要となりそうだ。
【参考】
ふるさとチョイス「ニコニコエール品」について
https://www.furusato-tax.jp/feature/a/niconico-yell
取材・文/石原亜香利