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まさにリアル孤独のグルメ!久住昌之の“ジャケ食い”の原点に迫る

2020.12.27

コミックやドラマが日本は言うに及ばず海外でも愛されている『孤独のグルメ』。その原作者である久住昌之さんの新刊エッセイ『面食い』が12月23日に発売された。「面食い」と書いて、「ジャケ食い」と読む。「ジャケ食い」とは久住さんの造語で、「腹が減った!」ときに、己の勘だけを頼りに飲食店に入ること。美味しいかマズイか、いい店かハズレの店かは、店内に入ってみるまでわからない。ドキドキハラハラの真剣勝負を挑んだ合計45軒の店では、毎回、悲喜こもごものドラマが静かに巻き起こっている。そんな「ジャケ食い」の醍醐味や貴重なエピソードを久住さんに伺った。

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久住昌之の「ジャケ食い」はリアル孤独のグルメだった!

長年にわたり「食」に関する漫画やエッセイを書きながら、決して「上から目線」「権威」にならず、常にクスッと笑えるエピソードを描き続ける東海林さだおさんの姿勢を尊敬しているそう。

「ひとり飯」の時代だからこそ、“ジャケ食い”の精神が大切

本書では、北海道から九州にいたるまで、それぞれの土地に根づいている様々な飲食店が紹介されているが、決して星取表をつくって、ひたすら美味を追求、といったスタンスで、久住さんは臨んでいるわけではない。万人にとって美味しい店、いい店を見つけるのではなく、あくまで、久住さんにとっていい店、心地よい店を探し出す一本勝負。それが“ジャケ食い”なのだ。

「つまり、『孤独のグルメ』の井之頭五郎と同じなんですね。五郎がいいと思った店に入って、その店をどう見たか、その店の料理をどう感じたかが、この作品のすべてですから。実は、ドラマで五郎を演じてくださっている松重豊さんも、僕とまったく同じ感覚の持ち主なんですよ。『シーズン1』を撮影した9年前に初めてお会いしたときに、知らない街で店を探して食べに行くのが好きだと話しておられました。有名グルメサイトには何度もだまされたから(笑)、決して信用しない。見知らぬ街の中を自分の足でグルグル歩き回って、(やっぱり、あそこしかないだろうな)という店に、意を決して入るんだそうです。こういう人なら『孤独のグルメ』の面白さがわかってくれるはずだから、五郎役は、ぜひ松重さんにと思ったんですよ」

ドラマの大ヒットと比例するかのように、今やすっかり「ひとり飯」の時代。コロナ禍の影響もあって、大人数での宴会はNGとなり、ひとりで静かに食事をするスタイルが世間でも推奨されている。

「『孤独のグルメ』の連載を始めた頃は、女性がひとりで立ち食いソバ屋や牛丼屋で食事をしているところなんて見たこともなかったけれど、今ではすっかり当たり前の光景ですよね。ひとりで食事をする文化のなかった中国や韓国でも最近では“ひとり飯”が日常的な光景になってきたそうです。そんな時代だからこそ、なおさら他人の評価に踊らされるのではなく、自分にとっての“いい店”を見つけることができたら、もっと楽しいんじゃないのかな」

“ひとり飯”の楽しさを久住さんが知ったのは、高校を卒業後、神保町にある『美学校』に通うようになったとき。

「毎回、夜の授業の前の、夕方6時から7時の間に1時間休みがあって、その時間に夕食をとっていました。でも、東京の西側で育った僕は、神保町の店なんてどこも知らなくて、最初は辛かった。でも、、恐る恐る知らない店に入ってみたら、ひとりで美味そうに食べている人が思いのほか大勢いてね。ああ、こういう世界があったのかと。安くて美味しい店もたくさんあって、今度はあのラーメン屋に入ってみようとか、楽しくなっていきました。その当時の体験が、僕の“ジャケ食い”の原点になっているのかもしれません」

知らない店は面白い、知らない世界は楽しい――それが“ジャケ食い”の醍醐味であり、久住さんの創作活動のエネルギーにもなっているのかもしれない。

「50歳になったとき、もはや自分の中にあるものを出し尽くしてしまった、という感じがしたことがあった。そのときに、これからは自分が行ったことがないところに、意識的に行ってみようと決めました。それで、某雑誌で、東京から大阪まで、事前に何も調べずに、自分の思いに任せてただ『散歩する』というとんでもない連載をしたんです。初回は、東京からブラブラ歩いて横浜まで行き、その日は電車で帰ってくる。で、次の回は横浜まで電車に乗っていき、そこからまた散歩を続けるというスタイル。それで25カ月かけて、なんとか大阪までたどり着いたんですけど(笑)、そのときの経験が自分にとっては大きな糧になりました。すべて出し尽くしたと思ったけれど、まだまだ新しいものを受け入れられる白いページが自分には残っているんだなって。そういう意味では、“ジャケ食い”も、新しい引き出しを増やしていくことにつながっているのかも。勝負して、たとえ失敗しても負けても得るものはある。むしろ、負けた話のほうがみなさんが笑ってくれますからね。どんな負け戦になったとしても、僕のような仕事をしている人間にとっては決して無駄ではないんです(笑)」

久住さんの漫画やエッセイが私たちを常に楽しませてくれるのは、そんな「ジャケ食い」の精神をいつまでも失っていないからに違いない。

デビューエッセイ以来、タッグを組む漫画家・イラストレーターの和泉晴紀さんによる劇画タッチのカバーは迫力満点。キングクリムゾンのデビューアルバムを想起させる正方形の絵にも久住さんの遊び心があふれている。

『面食い』(ジャケぐい)12月23日発売
1500円+税(光文社・刊)

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くすみ・まさゆき 1958年、東京都生まれ。1981年、原作を担当し「泉昌之」名義でマンガ家デビュー。その後、数多くの作品を発表。近年では、人気ドラマにもなった『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』『食の軍師』などの原作も手がける。マンガ関連の仕事に加え、エッセイスト、ミュージシャン、切り絵師など、幅広いジャンルで活動している。2021年1月8日20:00~、目黒「蔦屋書店」でオンラインイベントも決定!(詳しくは光文社書籍サイト「本がすき。」にて)

取材/内山靖子 撮影/角田慎太郎(Gran)

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