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芸術文化発信施設「WHAT」が話題!コレクターの美術資産を公開し現代アートの魅力を発信する寺田倉庫のユニークな挑戦

2020.12.21

美術展で作品を鑑賞し、作品名の表記の下に書いてある所蔵元が美術館などの団体名ではなく、「個人蔵」と書いてあるものを見かけたことありませんか? そんな作品を所有するコレクターの方たちは、自宅に飾っている方もいますが、たくさん所有されている場合、美術品専門の貸倉庫に保管しています。そんな業務を請け負っている企業のひとつが、湾岸エリアにある寺田倉庫です。

寺田倉庫は美術品保管を主軸に、 美術品修復・輸配送・展示といった分野に加え、 画材ラボ「PIGMENT TOKYO」・日本最大のギャラリーコンプレックス「TERRADA ART COMPLEX」などの芸術文化発信施設の運営を通じて天王洲をアートの一大拠点にするための街づくりを行ってきました。

そして新たなる一歩として展開するのが寺田倉庫がコレクターから預かり、 保管するアート資産を公開する芸術文化発信施設「WHAT」です。

「WHAT」のエントランス。

寺田倉庫では2016年から「WHAT」の先駆けとして位置づけられる建築模型を保管・展示する「建築倉庫ミュージアム」を運営。 倉庫会社ならではの視点で 「美術施設の在り方」 を模索し、 たどりついたのは倉庫に眠る作品を開放し、 日本を代表するコレクターが自らの価値基準で収集した作品との出会いを創出するアート展示施設を作る。 「WHAT(WAREHOUSE OF ART TERRADA)」という施設名称には、 「倉庫を開放、 普段見られないアートを覗き見する」 というコンセプトが込められています。

日本のコレクターの実像を通して現代アートの一面に触れる

そのこけら落としとなる展示第一弾は、「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション」展。2名のコレクターが所蔵するコレクションをまさにWHATという場に解き放って展示。一部描きおろしを含む、贅沢な展示となっています。

1人は、日本を代表する現代アートコレクターとしてはまず名前が挙がる高橋龍太郎氏。「高橋コレクション」としてこれまでにも展示が行われている著名コレクターで、今回は「描き初め(かきぞめ)」をテーマに、 約30点を展示しています。

このテーマを選んだ理由に、医師である高橋氏はコロナ禍のなか病院と自宅を行き来するのみの生活の中で、心底美術館に作品を観に行くこと、映画館に足を運ぶことに心底飢えていたといいます。その渇望感を込め、これまでのコレクションから重要なものを選ぶのではなく、これまでに展示されてこなかった若い、ストロークの強度を感じさせる作家の作品と、先行する作家たちの冒険に満ちた試みを中心に選んでいます。

高橋龍太郎氏のコレクションは、1階と2階の一部で展示。大型の作品や立体物も所有されています。

近藤亜樹 「ウータン山」

なかには、作家に直接依頼して制作された作品も。2018年の東美アートフェアで出会った野澤聖氏の肖像画をきっかけに、自身の肖像画を依頼。高橋氏が会場でも展示している草間彌生氏の作品をコレクションした際に「自分の人生に一条の光が射し込んだ」と思ったエピソードをテーマに、1年以上かけて完成に至っています。

高橋氏との対話を通して描かれた野澤聖の「Obsession -蒐集家の肖像-」(一部)
- Inside the Collector’s Vault, vol.1- 解き放たれたコレクション展: © Keizo KIOKU

日本の一般的な住環境では展示が難しいサイズの作品が並ぶなかで、ひときわ小品ではあるものの高橋氏にとってのコレションのスタートとなったのがこの女優グレタ・ガルボを描いた合田佐和子の油彩画。医者になったばかりの1979年、毎月1万円ずつの分割払いで購入。この作品ののち、20年近く絵を購入しようとは思わなかったそうです。そういう方がいまコレクターになっているのだから、不思議ですよね。

合田佐和子 「グレタ・ガルボ」

一方、A氏は奈良美智さんの作品を中心に集めているコレクター。A氏コレクションは、1987年から2004年までに制作された約40点を展示しています。

A氏が奈良氏の作品を集めはじめたきっかけは、2001年に横浜美術館で開催されていた「奈良美智展 I DON’T MIND,IF YOU FORGET ME.」でサイン会をしていた奈良氏を偶然見かけ、その素朴な人柄に惹かれたことから。その2日後に行った美容室で奈良作品を保有する画商を紹介され、2点購入したことからコレクションが始まったといいます。

そのうちの1つが、この「Slash with a knife」。

奈良美智 「Slash with a knife」

玄関に飾っていて、毎日何度も目に入るたびに、小さな女の子が覚悟を持って戦っている姿に「お前は本気なのか?」と毎日、何度も挑発されている気に。それに対して「こんな子どもに気合や覚悟で負けている場合じゃない。俺は負けていないか?」と家を出るとき、帰宅するときに自問自答していたといいます。

美術館で見るのではなく、コレクターとなって毎日向き合うことで、A氏の人生が変わったそうです。

奈良美智「Rock and Roll(アートカー)」。チャリティーオークション用に奈良氏が描いたものを落札。メンテナンスのために、20年近く実際に乗っているそうです。

奈良美智 「貝ガラKID」

本展では、展示の解説や音声ガイドはQRコードからサイトにアクセスして楽しむようになっています。

美術展というのは、作者の想いや、キュレーターの意図を知ることはできても、「それを所有する人が惹かれた」個人的理由を知るのは稀ではないでしょうか。作品そのものの魅力に加え、アートが人を魅了する力について触れられる新しい展示スタイルは、今後のどんなコレクターが秘蔵の作品を出してくれるのか。注目したいですね。

-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション展
会期:2020年12月12日(土)~2021年5月30日(日)
会場:東京都品川区東品川 2-6-10 WHAT 展示室 1階、 2階
開館時間:火~日 (最終入場18時)月曜休館(祝日の場合、 翌火曜休館)
入場料 :一般¥1200、 大学生/専門学校生 ¥700、 中高校生 ¥500、 小学生以下 無料
※同時開催 建築倉庫プロジェクト「謳う建築」の入館料を含む
建築模型倉庫見学(オプション)500円
※オンラインチケット制
※障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。
https://what.warehouseofart.org

建築から感じたものを詩人や劇作家が「謳う」ことで表現した建築展

同じ「WHAT」内では、同じく12月11日により「謳う建築」展もスタート。

この展示のきっかけとなっているのは詩人であり建築家の立原道造が「住宅・エッセイ」(1936年)にて述べた「住宅する精神は、 ボールの表面を包み、 エッセイする精神は、 中空のボールの内部の凹状空間の表面を包まうとする」という言葉。立原の身体を通して建築と文学を同時に作動させながら生きた精神の様にインスピレーションを受け、 住まいと向き合い続けた建築家が生み出した住宅に宿る空気感や、 五感を揺さぶる空間の本質を詩人や作詞家、劇作家らが「謳う」作品を通して浮かび上がらせるという展示です。

展示会場には作家たちが実際に建物を訪れたときの映像とその建物の建築模型やスケッチとともに、制作された作品をさまざまな形で提示しています。

詩人であり、建築家であった立原道造が設計した家「ヒアシンスハウス」のスケッチと模型、壁には彼が詠んだ詩を展示。

三科 尚也・明日香 「しのいえ」の建築模型と、詩人 四元康祐の詩

能作文徳・常山未央 「西大井のあな」の建築模型。奥に劇作家・長塚圭史によって作られたせりふ「奥」が展示されています。

篠原 一男(建築家)「谷川さんの住宅」1974年 × 谷川 俊太郎(詩人)
吉村 順三(建築家)「湘南茅ヶ崎の家」1967年 × 蜂飼 耳(詩人)
東 孝光(建築家)「塔の家」1966年 × 暁方 ミセイ(詩人)
益子 義弘(建築家)「南が丘の山荘」2007年 × 峯澤 典子(詩人)
永田 昌民 (建築家)「東久留米の家」 2003年 × 中村 月子(作詞家・作曲家・シンガー)
田中 敏溥(建築家)「玉川学園の家」1998年 × 岡本 啓(詩人)
中村 好文(建築家)「クリフハウス」2003年、 「クリフハット」2017年 × 小池 昌代(詩人・作家)
伊藤 寛(建築家)「黒水晶の家」2004年 × 覚 和歌子(作詞家・詩人・音楽家)
高野 保光(建築家)「縦露地の家」2012年 × 高貝 弘也(詩人)
堀部 安嗣(建築家)「我孫子の家」2011年 × 杉本 真維子(詩人)
能作 文徳・常山 未央(建築家)「西大井のあな」2018年 × 長塚 圭史(劇作家・演出家・俳優)
篠原 明理(建築家)「昭島の住宅」2020年 × カニエ・ナハ(詩人)
三科 尚也・明日香(建築家)「しのいえ」2020年 × 四元 康祐(詩人)
佐藤 研吾(建築家)「シャンティニケタンの家」2018年 × Nilanjan Bandyopadhyay(詩人)
(※建築物名の後ろは竣工年)

本展は、「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション展」と共通入場券で鑑賞できます。

謳う建築
会期:2020年12月12日(土)~2021年5月30日(日)
会場: 東京都品川区東品川 2-6-10 WHAT 展示室1階開館時間:火~日 11時~19時(最終入場18時)月曜休館(祝日の場合、 翌火曜休館)
※毎週火曜日16時よりギャラリーツアーを開催。
入場料 :一般¥1200、 大学生/専門学校生 ¥700、 中高校生 ¥500、 小学生以下 無料
*「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション」展の観覧料を含む
*オンラインチケット制

取材・文/北本祐子

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