地域貢献が最大の目的という「フェアフィールド・バイ・マリオット」
2020年10月、栃木県宇都宮市に「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮」がオープンした。ニューオープンのホテルというと、どんなレストランがあるのか、大浴場はあるのか? そんな情報がこれから綴られると思うかもしれない。が、このホテルには、そのどちらもない。
実はこのホテル、積水ハウスとマリオット・インターナショナルが提携し、道の駅に隣接する場所にホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」を建設して、地域観光スポットの再活性化を図る計画「Trip Base 道の駅プロジェクト」の一環として造られたもの。
フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮
住所:栃木県宇都宮市新里町丙260-1
電話:028・688・8451
https://www.marriott.co.jp/hotels/travel/ibrft-fairfield-tochigi-utsunomiya/
ラウンジ横にあるミニキッチン。道の駅で購入した食材などを調理できる
25㎡のツインルーム。ベッドマットはシモンズ製!
このほかキングルームも用意。
「Trip Base 道の駅プロジェクト」とは、25道府県の自治体や36社のパートナー企業と事業連携し、2025年までに客室数を約3000室まで伸ばすという計画で、地域貢献が最大の目的というが、それとレストランや大浴場がホテルに設けていない理由は、いまいちピンとこない人も多いだろう。そこでこのプロジェクトマネジメントを担当している渡部 賢さんに話を聞いてみた。
「食事やお風呂は、隣接している〝道の駅〟の施設などを利用していただくことを前提にしています。およそ大型ホテルやリゾートですと、すべてがホテル内で完結してしまいます。しかし、それではホテルだけが利益を生み出し、周辺の地域に一切還元できません。〝素泊まり〟専用のホテルにすることで、地方観光のハブとしての役割をホテルが担えると考えているのです。道の駅にはご当地グルメや地域の特産品があります。食事は道の駅や近隣の飲食店を利用したり、地域のお店で購入したものをホテルのラウンジやテラスで食べたりすることで、ホテル以外での消費を促せるのです」(渡部さん)
写真の朝食は予約制。隣接する道の駅「ろまんちっく村」がホテル専用につくった
日本は旅の目的地として世界から注目を集めている。当初は、都市部や有名な有名観光地ばかりが盛り上がりを見せていたが、それだけでは満足できず、地方にも目が向き始めている。もっとも2020年は新型コロナウイルスの影響もあってインバウンド需要の計画は大きくそれてしまったが、感染拡大防止を考えてマイクロツーリズムが注目されるように。奇しくも日本人が国内や地元の魅力を見つめ直す機会となった。
「しかし、地方には旅行者の受け皿が十分ではありませんでした。その受け皿となるホテルを造ることで、地域への貢献になると考えました。そういった意味で全国に1180か所(2020年7月現在)ある『道の駅』はそれぞれ地域色が濃く、地元から愛されている魅力的な存在。そこに隣接したホテルを造り、それを利用してもらうスタイルにすれば、これまでただの〝通過点〟であった施設が〝旅の拠点〟になるのです。この道の駅と隣接するホテルを旅の拠点として地域の知られざる魅力を渡り歩く新しい旅のスタイルがTRIP BASE STYLEだ。」(渡部さん)
編集部員が「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮」を拠点にした旅をしてみた!
ここでは「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮」を紹介したが、11月には「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木もてぎ」もオープンさせている。比較的近いエリアに複数のホテルを開業したのも、道の駅のあるエリアを宿泊しながら移動するスタイルを提案する狙いがある。この2つのホテルは、クルマで約1時間程度の位置関係。少しずつ移動しながら各地の食や文化に触れることで「地域の知られざる魅力を渡り歩く旅」を実現できるのだ。
欧米では、そうした地域を渡り歩く旅のスタイルは一般的だが、日本人の旅は「このホテルならこうしたサービスが受けられる」「周囲にはこんな観光地がある」「こんな名物がある」と〝あらかじめ答えがわかった〟旅をしてきた。しかし「未知なるニッポンをクエストしよう」のコンセプトのとおり、行かなければわからない、旅本来のおもしろさを体験できるのだ。
そんな新しい旅のスタイル「TRIP BASE STYLE」が結果として、地域の魅力の発掘や道の駅発のアクティビティ開発、地方への人の流れ、雇用の創出を生み出すのであれば、この新しいホテルのビジネススタイルの成功を祈らずにはいられない。
撮影/土橋位広