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トヨタ・モビリティ基金のオープンコンテスト「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」にモビリティー社会の未来を見た

2020.12.12

すでに自動車メーカーの枠を超えて、総合的なモビリティ・カンパニーへと脱皮しつつあるトヨタ自動車株式会社。地味ながら、その変革を象徴する取り組みが、外部のパートナーと共に、国内外を問わず、社会のさまざまな問題を「移動」の視点から解決していこうとする「トヨタ・モビリティ基金」だ。同基金は、大学やNPOへの寄付や自主活動を通じて「より多くの人々が、より多くの場所へと移動できることの実現」を目指し、現実の社会実装やオープンなイノベーションを通じて、グローバルな貢献を行っている。中でも、過去3年間に渡り、特に注力してきたのが、「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」(MUC)と呼ばれるオープンコンテストである。

トヨタ・モビリティ基金はトヨタ自動車が持つノウハウや経験を活用しつつ、モビリティ分野に特化して、誰もが、より自由に移動できる環境を整える活動を行なっている。

優勝チームは100万ドルの資金を獲得

このチャレンジは、下肢麻痺者の多様なニーズに対応できる補装具に関するアイデアを具現化するためのサポートや、開発支援を行うというもので、世界中から革新的な発想を募集して現実化する支援費用は、総額400万ドル(約4億4千万円)にも上る。また、チャレンジの実施にあたっては、イギリスのNESTA(ネスタ)と呼ばれるチャリティ団体がパートナーとなっている。NESTAは、世界の多様な社会問題の解決に貢献できるイノベーションの促進を目的としたNPOだ。

MCUのイノベーションの対象が下肢麻痺者なのは、障碍者の半数を肢体不自由者が占め、さらにその4割以上が下肢麻痺者であるという現状を踏まえてのこと。そして、補装具は、車椅子や義足だけでなく、これまでにない形状や革新的なバッテリー技術を持つ装置、AIやセンサーを用いた自動学習機能、あるいはクラウドとの連動能力などを用いて実現される、新たなパーソナルモビリティも視野に入れている。

23ヵ国から80件に上ったエントリーを審査する11人の審査員の中には、映画「スーパーマン」の主演男優として脚光を浴びながら落馬事故によって首から下が麻痺し、その後は身体麻痺者の自立支援に尽力して2004年に亡くなったクリストファ・リーヴ氏の子息であるマシュー・リーヴ氏も含まれ、今年の1月に選出されたファイナリスト5チームにはプロトタイプ制作のために50万ドルが提供された。そして、12月中に発表される優勝チームは、100万ドルの資金を得て、補装具の完成と市販に向けてプロジェクトを進めることになっている。

日本から参加した筑波大学Qoloに注目!

最終発表を前に、ファイナリストの中で個人的に注目しているのは、日本から参加している筑波大学のシステム情報系・サイバニクス研究センター(人工知能研究室)及び医学医療系・附属病院リハビリテーション科からなるチームの、Qoloである。

"Quality of Life with Locomotion”を意味するQoloは、電動車椅子として下肢麻痺者の移動をサポートするだけでなく、座位と立位の遷移がスムーズに行えることによって利用者の日常生活における自由度を高め、健康維持にも役立つように考えられている。しかも、座位と立位の遷移にはモーターなどの動力は使われず、ガススプリングを利用した巧妙なリンク機構によって、重心を移動するだけで済むようになっているのだ。

人工知能研究室が関係した提案であるのに、核となる部分にAIも電子回路も使われていない点が奇異に感じられるかもしれないが、チームリーダーの鈴木健嗣教授は「人工知能の実現には人の知能を理解することが必要不可欠だが、それは人を支援するために人を理解することにも通じる」と説明する。遷移を電動化すれば、その分、移動のためのバッテリー容量が減り、故障する確率も高まるので、メカニカルな仕組みで実現している点に共感を覚えた。

筑波大学のチームが提案したQoloは、座位で生活・移動することの多い下肢麻痺者に対して、自然な立位への遷移や、立位での行動の自由と健康寿命の延伸を目指している。

最新プロトタイプのQolo 3.0は電動車椅子の駆動システムを活用しているが、座位と立位の遷移は、モーターなどの動力を使わず、ガススプリングの反力と利用者の重心移動のみで実現されている。

チームに参加している下肢麻痺者を含め、性別や年齢の異なる様々な被験者からのフィードバックを元に開発された巧妙なメカニズムが、スムーズな座位⇄立位の遷移を可能とした。

そのほかのファイナリストの提案にも注目!

他のファイナリストの提案も興味深いので、簡単に紹介しておくと、まず、イタリアのカロッツエリアItaldesignのチームは本業のカーデザインにも通じるWheem-iを構想している。手動の車椅子のユーザーが街中でレンタサイクル感覚で借りることができ、車椅子ごと乗り込んで移動できることを想定したシステムだ。

カーデザイン分野でも著名なイタリアのItaldesignのチームは、レンタサイクルのように専用アプリでシェアでき、車椅子ユーザーのモビリティを拡張する電動プラットフォーム、Wheem-iを提案している。
Designed by Simon Mckeown with Craig McMullen

アメリカのEvolution Devicesのチームは、軽度の下肢麻痺者の運動能力に着目した。ある程度の歩行力が残っていれば、それを適切な電気刺激によってサポートすることで、自立した移動を、より安全かつ迅速に行えるという考えから生まれたのが、ふくらはぎのあたりに装着するEvowalkである。

アメリカのEvolution Devicesチームが手がけるEvowalkは、軽度の下肢麻痺者の歩行を助ける、ふくらはぎ装着型のデバイスを提唱。AIを活用して利用者の歩行の動きを予測し、適切な刺激を筋肉に与えて楽に歩けるようにする。
Designed by Simon Mckeown with Craig McMullen

同様にアメリカから参加したIHMC & MYOLYNチームは、Quixと呼ばれる外骨格システムを提案している。これは、下半身に装着することによって、安定した自立を実現し、素早い歩行を実現するというものだ。こうした製品が安価に供給できるようになれば、下肢障害者の行動パターンも大きく変化するだろう。

同じくアメリカのIHMC & MYOLYNチームのQuixは、身体に装着する動力付きの外骨格システムで、下肢麻痺者に対して立位での素早く安定した移動手段を提供する。
Designed by Simon Mckeown with Craig McMullen

最後のPhoenix Aは一見するとスタイリッシュな車椅子だが、提案者のPhoenix Instinctチームは構造的に利用者が座った際の重心位置を工夫したり、セルフバランシング機構を採り入れることで、段差などを容易に乗り越えられ不快な振動を抑えるなどのメリットを打ち出している。

イギリスのPhoenix Instinctのチームが取り組むPhoenix Aiは、重く操作しにくいイメージを払拭するインテリジェントな車椅子で、超軽量設計と重心位置の工夫により快適でスムーズな移動を実現する。
Designed by Simon Mckeown with Craig McMullen

実際に、どのチームが最優秀賞に輝くかはわからないが、最小限のコストで最大限の効果が得られるという観点からは、やはり日本チームのQoloが有望ではないかと考える。このようなチャレンジを通して、下肢障害者がより楽に移動でき、生活を楽しめるようになることを願いつつ、最終発表を楽しみに待ちたいと思う。

トヨタ・モビリティ基金「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」公式Webサイト(英文)
https://mobilityunlimited.org/

ファイナリスト紹介ビデオ(英語)

取材・文/大谷和利

 

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